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花園では3連覇に挑む桐蔭学園
12月27日(月)から始まった「花園」こと、全国高校ラグビー大会。春の選抜大会で準優勝し、今季もAシードに選ばれたのが、3連覇を目指す「東の横綱」桐蔭学園(神奈川)である。12月30日(木)の2回戦、第1グラウンドの第1試合で昌平(埼玉)と戦う。
昨季、コロナ禍の大会だったものの桐蔭学園はNO8(ナンバーエイト)佐藤健次(早稲田大学1年)、LO(ロック)青木惠斗(帝京大学1年)、WTB(ウィング)秋濱悠太(明治大学1年)と、今季、ルーキーながら大学ラグビーで活躍した選手が多数いたこともあり、決勝戦まで盤石の試合で連覇を達成した。
ただ、新チームとなり、春の選抜大会こそ総合力の高さとディフェンス力で決勝まで駒を進めたが、東福岡(福岡)に31-46で力負けしてしまう。6月、ケガの影響でリーダーが1人しかいなかった関東大会Aブロックでは初戦で流通経済大柏(千葉)に20-36で敗戦。7月、夏の7人制ラグビーの全国大会では茗渓学園(茨城)にカップトーナメント1回戦で敗退と、1度もタイトルを手にすることができなかった。
監督就任節目の20年目を迎えている藤原監督
8月の夏合宿は長野・菅平で行うことができたが、再び練習試合で東福岡に大敗してしまう。その後はコロナ禍の影響で練習できない時期を経て、9月に全体練習ができるようになっても、完全下校まで2時間という制限があり、対外試合も行わなかった。藤原秀之監督は「いつもより練習が30分短くなり、1週間で2時間、1ヶ月で10時間減ってしまった」と話した。
県大会決勝、トライを決めた2年生エースのFB矢崎由高
それでも神奈川県初戦の決勝は、昨季、100回の記念大会のため開催された関東のオータムチャレンジ(都府県2位によるトーナメント戦)を勝ち抜き、花園に出場した東海大相模を22-9で下して20回目の花園出場を決めた。
監督就任20年目の節目を迎えた藤原秀之監督は「3連覇は至難の業。そうするような練習はしていない。神奈川県予選決勝で勝つための練習をしていた。花園で1つ勝つことがどれだけ大変か、我々スタッフはわかっている。まず、やれることをやって、1戦1戦、勝って正月を花園で迎えたい」と冷静に現状を分析していた。
県大会決勝では接点で反則を繰り返した
それでも、「1つ強みを作っておきたかった」と監督が9月以降、選手たちに課したのは体力作りだ。例年、冬の間に行うことが多い、練習の合間にグラウンドをVの字のように走るフィットネストレーニングを重ねた。その成果もあり神奈川県予選決勝では、試合勘のなさによるペナルティは多かったものの、フィットネスでは相手を圧倒していた。
また、藤原監督が「大きかった」と話すのが、夏休み中に行った「トップリーグセッション」だ。トップリーグ(1月からリーグワン)などに所属する桐蔭学園のOBが、コロナ禍のため、数人ずつグラウンドにやってきてセッションを行ったという。
東芝、ヤマハ発動機(現・静岡ブルーレヴズ)、リコー、トヨタ自動車、パナソニック、キヤノン、日野、NEC、サントリーなどの現役選手たちが日替わりでコーチングを行ったという。
例えば日本代表SH(スクラムハーフ)齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)は2度、グラウンドに来て、実際に練習に加わって直接指導したという。副キャプテンの1人、SH小山田裕悟(3年)は「試合の場面をくり抜いた練習をして、齋藤直人さんに攻め方のアドバイスをもらって、プラスになった。県大会で試したこともあります。教わったことを試合で出して花園でチームの起点になれたら」と話した。小山田は齋藤にシューズをもらい、偶然、サイズが同じだったため、そのシューズで試合に出ているという。
左からSO今野、FL中島主将、SH小山田、LO小椋
また、今季はコロナ禍などさまざまな状況に対応できるように、例年とは違い、キャプテンFL(フランカー)中島潤一郎を筆頭に、LO(ロック)小椋健介、SH小山田、SO(スタンドオフ)今野椋平(いずれも3年)と3人の副キャプテンを置き、4人のリーダーグループを形成している。
リーダーたちは、春には桐蔭横浜大学を卒業したばかりのOBや大学4年生とZOOMでミーティングを行い、大学でどのようにチームをまとめているかなど意見を聞いたという。また、リーダー4人でも日々、家に戻ってからミーティングを行っており、小山田は「コミュニケーションの量は他のチームより取れているので、その部分では自信を持ってできている」と話した。
全国高校ラグビー大会
【ハイライト】神奈川県予選 決勝 桐蔭学園 vs. 東海大相模
花園予選が終わってから1か月半ほどで、常翔学園(大阪第1)と試合を行ったり、流通経済大柏(千葉)と練習をしたり、大学生に胸を借りたりと強化を進めた。強豪相手に試合勘をつけると同時に、藤原監督は「BK(バックス)のラインの組み替えや選手層を厚くするが大事」と先を見据えた。
落ち着いてゴールを決めるSO今野
正確なキックとラインに長けており、高校に入って10kg以上体重が増えたという副キャプテンのSO今野は「予選決勝はゴール前で取り切れなかったことが課題です。オプションを増やすことをやっています。3連覇に挑戦できるのは全国で1校だけで楽しみですが、先輩が強かっただけなので、チャレンジ精神をもって1つずつやっていきたい」と冷静に話した。
取材時も判断を重視したアタック練習をしていた
最後の花園に向けて、気合いを入れるために坊主頭にしたという副キャプテンの1人、LO小椋は「選抜大会ではラインアウトの成功率の悪さや1対1の弱さが課題になりました。ラインアウトではオプションを増やし、ディフェンスではダブルタックル、アタックでは真っ直ぐに当たるのではなく、スペースに当たるということに取り組んで改善されている部分があった」とチームの成長に自信を深めていた。
春の選抜大会は直前でケガをしてしまい出場できなかったが、キャプテンシーに長けたFL中島主将は「派手なプレーではなく、地道なプレーをするように意識している。一昨年、去年の優勝はその代の3年生のものです。自分たちの代で1つでも多く勝って、それが3連覇につながればいい。肌感覚としては春、夏と東福岡に完敗だった。最終的に東福岡を倒して優勝したい」と意気込んだ。
今季は個よりもまとまりで勝負する
今季、中島主将以下3年生が決めたスローガンは、意志がしっかりして動じないという意味の毅然の「毅」だ。力強いという意味もある。花園を知り尽くした名将と中島キャプテンの下、桐蔭学園は3連覇というプレッシャーよりも、チャレンジャーとして、1つ1つ戦うメンタルで最後まで戦い抜く。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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