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大黒柱のCTB福山竜斗キャプテンをはじめ、学生屈指のPR紙森陽太、ハードワーカーのFL宮本学武、トライゲッターの1年生WTB植田和磨……。
多士済々のメンバーで9季ぶりに大学選手権へ乗り込んだが、立ちはだかったのは慶應義塾大学だった。
12月18日(土)、第58回全国大学ラグビー選手権大会の4回戦。
関西Aリーグを2位通過(6勝1敗)した近大と、関東大学対抗戦Aで4位通過(3勝4敗)だった慶大が、東京・秩父宮ラグビー場で相まみえた。
慶大は対抗戦Aで負けた4試合の平均失点が「46」と高く、2週間前の帝京大戦では64失点。しかしこの日はラインアウトを含めて見事なディフェンスを披露した。
近大の武器のひとつは強力スクラム。しかし先発FWの平均体重でほぼ互角の慶大はしっかりと対抗し、ファーストスクラムから逆にPK(ペナルティキック)を奪った。
序盤の近大はノックオンや相手のカウンターラックでたびたび自陣でボールを失っていたが、前半10分、相手の反則でようやく敵陣へ。
近大はLO松永正喜のキックチェイスから相手ゴール前スクラムの大チャンスを得て、ここで強烈なスクラムパワーで相手をめくり、強制PK(ペナルティキック)を奪取。
しかしその後も徹底的にスクラムにこだわった結果、前半15分、ヒットから優位となった慶大が逆にペナルティを獲得。こだわりが裏目に出てしまい、さらに前半23分にはスクラムでのPKから慶大に3点を先取された。
近大は直後に敵陣左のラインアウトを迎えるが、慶大のジャンパーがスティール。近大のこの日のラインアウト成功率は70パーセント。強みの展開力を発揮するチャンスが少なくなってしまった。
慶大はCTBイサコ・エノサがボールキャリー、リンクプレー、粘り強いディフェンスまで、一人で何役もこなす獅子奮迅の活躍。
近大もHO金子隼の懸命なタックル、FL宮本がジャッカルを決めるなどして対抗。前半は一進一退のまま、慶大リードの3-0で後半へ向かった。
後半最初のトライは後半3分、慶大の目の覚めるようなサインプレーからだった。
ラインアウトからの2次攻撃目で、キャリーもできるFL今野勇久がラック最内のディフェンダーへ向かう。ここで内返しのパスを走り込んできたFB山田響へ通した。
PR岡広将のポジショニングもひと役買い、兵庫・報徳学園時代からスターだったFB山田が独走してインゴールへ。
鮮やかなサインプレーでリードを10点とした慶大。追いかける近大は、前半に引き続きラインアウトの精度に苦しみながらも、CTB福山キャプテンがボールキャリアー、タックラーとして奮闘を続ける。
するとコンテストキックでの混戦から敵陣に入った近大が後半26分、相手の一瞬の隙を突く。
ペナルティキックの段になり、油断してエリアの片側に寄っていた慶大の陣形を見ていたSO半田裕己。ここでオープンのインゴールへ大きなキック。
そこに待っていたのはルーキーWTB植田。倒れ込みながら見事に捕球し、そのままグラウンディング成功。大舞台で見事に奇襲を成功させた近大が5点差(10-15)に迫った。
しかし試合巧者の慶大は、敵陣に入ったPKで確実にショットを成功させ、後半23分に3点追加でリードを8点(5-13)に広げる。
着実にポイントを上積みして心理的プレッシャーをかけていく慶大。しかし近大にも底力があった。
後半26分、この日大車輪だったFL宮本のロングゲインを見せれば、武器のひとつである展開力でCTB福山キャプテンがトライラインへ。
最後は途中出場の辻村翔平が力強く押し込み、今季の勢いを象徴するような連続トライ。しかしコンバージョンは2連続で失敗となり、スコアは3点のビハインド(10-13)に。
直後にはSO半田が相手を背走させる特大キック、チェイスで敵陣チャンスを得る。ここは慶大が守備で粘るが、近大も途中出場のPR辻村らを交えたスクラムで、後半32分に相手をめくる会心のスクラム・ターンオーバー。
ラグビー 全国大学選手権 21/22 4回戦
【ハイライト】近畿大学 vs. 慶應義塾大学
手に汗握る攻防戦は3点差のまま最終局面へ。終了間際、ハーフウェイライン手前でPKを得た近大は、CTB福山キャプテンが50m超の位置から同点PGを狙った。
同点となって試合が終われば、大会規定によりトライ数の多い近大が準々決勝進出。しかしキャプテンのロケットキックは、Hポールの右に反れた。
近大は最後、8フェーズのラストアタックを続けたが、80分を知らせるホーンの直後にスローフォワード。三井健太レフリーが長い笛が響き、ノーサイド。
慶大はセットプレーの安定感で上回り、PGを積み上げてリードを奪う試合巧者ぶりを発揮。大舞台で一発のサインプレーを決める勝負強さもあった。
近大は19季ぶりの大会1勝は挙げられず、今年度のチャレンジは終わった。しかしCTB福山キャプテンをはじめ、歴史を創ったメンバーの努力は次世代へ受け継がれるだろう。近大の新たなストーリーを生み出し、また関西を盛り上げてくれるに違いない。
勝利した慶大は次なる戦いへ向かう。
12月26日(日)、埼玉・熊谷ラグビー場がその舞台だ。準々決勝で待ち受けるのは、関東大学リーグ戦王者・東海大学。ベスト4進出を懸けた闘いが始まる。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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