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関西学院大学 魚谷勇波主将
負ければ転落。勝てば来季は最高峰の舞台で戦う権利を手にする。白星と黒星で天と地ほどの隔たりがある大一番。それゆえに、グラウンドにはキックオフ前から「決戦」の雰囲気が立ちのぼった。
昨年度は入替戦が実施されなかったため、挑む側にすれば2年越しにたどり着いたチャレンジの舞台だ。受けて立つほうにとっても、今季ここまでの歩みの意義を示し、思うようにはいかなかったシーズンを笑って終える最後のチャンスである。決意。覚悟。意地。誇り。さまざまな感情が交錯する戦いは、そこに重なる思いのぶん、熱を帯びた。
11時45分キックオフの第1試合で対峙したのは、A8位の関西学院大学とB1位の大阪体育大学だ。ゲームは序盤から朱と紺のジャージーの関西学院大学が主導権を握った。
厳しいディフェンスで相手の勢いを受け切って攻撃権を奪い返すと、開始6分、ゴール前のラインアウトからFWで近場を押し込んでLO藤井崇弘が先制トライを挙げる。さらに12分にもラインアウト起点の攻撃でWTB加藤匠朗が抜け出し、巧みなフットワークでタックラーを抜き去ってポスト下へ。狙い澄ました先制パンチで14-0と先行する。
大阪体育大学も16分にNO8マウ シオネがラックサイドをねじ込んで5点を返したが、関西学院大学は浮き足立つことなくきっちり体を当てて反撃。そして24分、またもゴール前のマイボールラインアウトからLO藤井がインゴールに押さえ、スコアを広げる。そのまま19-5でハーフタイムへ。
後半も先に得点を挙げたのは関西学院大学だった。大阪体育大学の強いヒットに苦しみながらも10分にFB奥谷友規がPGを決めて22-5とすると、15分には左右に大きくボールを動かして相手防御をゆさぶり、SH橋詰学がラックサイドを突いてゴールラインを越える。これで3トライ3ゴールでも追いつけない点差に広がったことで、流れは大きく傾いた。
ラグビー 関西大学リーグ2021 入替戦
【ハイライト】関西学院大学 vs. 大阪体育大学
以降、関西学院大学は持ち味の展開力を生かしてスピーディーにボールを動かし続け、22分にLO入江元気、33分にはLO野矢健太郎がトライを追加。41-5とリードを広げて勝利を決定づける。大阪体育大学もここから開き直って攻め、途中出場のHO清水頼仁が2トライを返したが、追撃もそこまで。48-17の最終スコアで、関西学院大学がA残留を決めた。
続いて行われたA7位摂南大学とB2位龍谷大学の第2試合は、立ち上がりからあわただしく得点版が動く点の取り合いとなった。
ラグビー 関西大学リーグ2021 入替戦
【ハイライト】摂南大学 vs. 龍谷大学
東将吾(11/28 摂南大学vs.立命館大学)
まずは開始1分、BKのあざやかなサインプレーで摂南大学のCTB東将吾が先制トライをあげると、9分には相手の隙を突いたクイックスローからFBヴィリアミ・ツイドラキが約80mを走り切る。さらに24分にもCTB東がギャップを抜け出して中央に飛び込み、21-0と引き離した。
龍谷大学も29分にリズムのいい連続攻撃からWTB森岡宏文がゴールラインを越えるが、摂南大学はNO8ヴィリアミ・ルトゥア・アホフォノが見事な個人技で一気に切り返す圧巻のトライを挙げ、すかさず流れを引き寄せる。40分には敵陣でのマイボールラインアウトの好機にWTBテビタ・タイ→FBツイドラキと自慢のランナーで仕留め切って追加点。ロスタイムに龍谷大学のWTB森岡に2本目のトライを許したものの、31-12で前半を終えた。
後半、龍谷大学がキックオフから集中力高く攻め込み、HO大畑龍平がラインアウトモールの脇を抜け出して14点差に詰め寄ったが、摂南大学も続くキックオフからたたみかけてLO徳永リオ吉平がトライを返す。11分、龍谷大学が長い連続攻撃を攻め切ってNO8高山直暉のトライでふたたび14点差とし、なおも鋭く前に出るディフェンスで敵陣へ攻め入った場面では、あわや…の空気も漂った。しかしペナルティから前進を狙ったキックがタッチインゴールを割る痛恨のエラーでチャンスを逃すと、直後のスクラムから摂南大学のWTBタイが右外のスペースを駆け抜けて大きなトライを刻む。
この一撃で落ち着きを取り戻した摂南大学は、さらにWTBタイ、FBツイドラキが圧巻の走りでトライを重ねて相手を突き放す。龍谷大学も最後まで気持ちを切らさず、42分にFB嶋大輝が意地のトライを返したものの、最終的には69-29のスコアでフルタイムを迎えた。
結果としては関西学院大学、摂南大学がAリーグの地力を示す格好となったが、2試合とも通常のリーグ戦とは違う緊迫感に満ちた80分間で、最後まで見応えある戦いが展開された。この崖っぷちの状況を乗り切った経験は、A残留を決めた両校が新年度に躍進を果たす上での貴重な糧になるだろう。残念ながら昇格はならなかった大阪体育大学、龍谷大学にとっても、今季のチームのすべてをぶつけて上位リーグの力を体感できたことは、かけがえのない財産になるはずだ。
この機会があって本当によかった。4校の来シーズンの戦いぶりが楽しみだ。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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