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関西学院大学 魚谷勇波主将
伸るか反るかの決戦が帰ってきた。12月11日、関西大学AリーグとBリーグの入替戦が、宝が池球技場で開催される。昨シーズンは新型コロナウイルスの影響によりすべてのリーグで入替戦が実施されなかったため、2年ぶりに迎える大一番である。
まず11時45分キックオフの第1試合では、A8位の関西学院大学とB1位の大阪体育大学が激突する。いずれもAリーグで複数回優勝の歴史を有する名門だけに、ハイプレッシャーの緊張感に満ちた戦いになるだろう。
関西学院大学は今季全敗に終わったものの、完敗といえるのは同志社大学戦、近畿大学戦の2試合だけ。7戦中4戦は20点差前後のゲームに持ち込んでおり、細かな差で星を落とした試合が多かったという印象だ。最終戦では今季優勝を果たした京都産業大学に対し気迫を押し出して接点で激しく体を張り、前半を5-7で折り返すなど健闘した。いくつかのトライチャンスを仕留めきれず、最終スコアは5-33と開いたが、ここにきてようやく上り調子になりつつある。
東海大仰星時代に現早稲田大学の長田智希、河瀬諒介らと全国優勝を果たした168cm、85kgのファイター、FL魚谷勇波主将が獅子奮迅の攻守でFWを牽引し、BKではスピードと腰の強さを兼ね備えたWTB加藤匠朗の決定力が光る。部としては2015年以来の入替戦で、その時は今回と同じ大阪体育大学を相手に56-19で勝利してA残留を決めた。2021年度のチームの集大成として、最高のパフォーマンスを発揮して不本意な戦いが続いたシーズンを笑顔で終えたいところだ。
一方の大阪体育大学にとっては、2季ぶりのA昇格を目指す一戦となる。今年度はB1リーグで圧勝を重ねて1位通過すると、順位決定戦でも追手門学院大学を61?22、龍谷大学を48-15で破って2年連続の優勝を果たした。昨年は優勝しながらAリーグへの挑戦の機会を得られなかっただけに、今回の入替戦にかける思いは強いだろう。
キャプテンとしてチームを牽引するのは、豊富な運動量で攻守ともよくボールに絡むFL吉田海。LOツポウ マヘ、NO8マウ シオネとトンガ出身の2選手を擁するFWはパンチ力があり、ハードヒットで勢いを生み出す。力強いボールキャリーで前に出て、リズムのいい球出しからBKのスピードランナーを走らせる展開に持ち込みたい。
14時キックオフの第2試合で登場するのは、A7位の摂南大学とB2位の龍谷大学だ。両校は2016年と2019年の入替戦でも顔を合わせており、2016年は27-12、2019年は66-21で、いずれも摂南大学が勝利している。2年前のゲームを知るメンバーがそれぞれに残っており、今回の対戦がどのような展開になるのか、興味は尽きない。
摂南大学はAリーグ初戦で関西学院大学に38-27で勝っていいスタートを切ったものの、そこから白星が遠かった。天理大学との第2戦は前半38分まで0-0と食らいつくも後半に突き放され(最終スコアは0-40)、5戦目の関西大学戦は反則でリズムに乗り切れず17-19で惜敗。随所に地力を感じさせる戦いぶりを見せていただけに、悔しい結果となった。
摂南大学 ヴィリアミ・ツイドラキ
戦力面では、最終学年を迎えた副将のFBヴィリアミ・ツイドラキ、CTB/WTBテビタ・タイの留学生BKの存在感が際立つ。チャンスメークからフィニッシュまでこなす力を備えており、いかにいい形で2人にボールを持たせられるかが、勝利へのカギになるだろう。猛タックラーのFL隈元添太主将はリーグ戦終了後、「入替戦でどう摂南大学らしい試合ができるのか、2週間しっかり準備して試合に臨みたい」と決意を語っており、今季最終戦で本来のアタッキングラグビーを存分に発揮することが期待される。
対する龍谷大学は、2017年度よりチームを率いてきた藤谷徹総監督のもと、2位という成績で今季の関西Bリーグを終了した。1990年代は同志社大学、京都産業大学とAリーグの上位を争う存在だったが、2007年に入替戦で敗れ、Bに陥落。以降復帰を果たせないシーズンが続き、2014年からは6年連続で入替戦に敗れて涙を飲んできた。それだけに、「今回こそ」の意気込みは強いはずだ。
悲願の再昇格に向け、LO亀川直哉主将を筆頭に2年前の摂南大学との入替戦を経験しているメンバーが7人残っているのは、チームにとって大きいだろう。コロナ禍でチャレンジの機会を失った昨シーズンの4年生の無念を晴らしたいという気持ちも、厳しい局面で一歩を踏み出す力になる。組織的なディフェンスで摂南大学の突破力あるランナーを封じ、スコアで相手にプレッシャーを与える展開に持ち込んで、競り合いを制したい。
一発勝負で負ければ下部降格となる入替戦は、通常のリーグ戦とはまったく違った重圧がかかる中でのゲームとなる。心理面のわずかな揺らぎが試合展開を大きく左右する張りつめた空気は、見ている側も思わず拳を握りしめてしまうほど。さまざまな思いと部の歴史の重みを背負った、緊迫の戦い。激闘必至だ。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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