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花園ラグビー場
その結果が花園本大会の覇権争いにも影響を及ぼす大一番として、毎年全国から多くの注目を浴びる高校ラグビー京都府予選決勝。7年連続で京都成章と京都工学院の顔合わせとなった今回も、期待に違わぬ見応えある熱戦が展開された。
先にスコアボードを動かしたのは、過去5年この決勝を制している京都成章だった。前半6分、相手のオフサイドでペナルティを獲得すると、キャプテンのSO大島泰真が正面約30mのPGを成功させて先制。続く9分には敵陣ゴール前のマイボールラインアウトからFWで近場を攻め、FL辻桜児がラックサイドをねじ込む。難しい角度のコンバージョンをSO大島が成功させ、10-0と先行した。
しかしここからゲームは拮抗した。京都工学院の闘志みなぎるタックルに差し込まれ、成章はアタックでボールを失うシーンが頻発。工学院がLO宮前翔斗主将、高校日本代表候補のPR板野春来らを軸にスクラムやモールなどFW戦で圧力をかけ、前半20分以降は成章陣ゴール前でたびたびインゴールに迫る場面もあった。
しかし成章も身上のハードタックルを連発して相手を押し戻し、ゴールラインを死守する。結果的には10-0のまま、前半の30分を終了した。
後半に入ってからもしばらくは一進一退の攻防が続く。5人の高校日本代表候補を擁し地力に優る成章に対して、工学院は的を絞った果敢なアタックと懸命のディフェンスで激しく抗戦。ボール奪取からの鋭い切り返しでスタンドを沸かせる局面も、数多く作り出した。
しかし、そんな緊迫した展開にも、成章の集中力と自信は揺るがなかった。ついに均衡が破れたのは、後半19分だ。成章がFWのパワープレーで工学院を相手陣ゴール前に釘付けにし、ラインアウトモールを押し込んでHO長島幸汰が左コーナーに飛び込む。これで15-0に。
残り10分あまりで2トライ2ゴールでは届かない点差まで広がったことで、工学院には焦りが生まれ、成章は余裕を持って本来のプレーを遂行できるようになった。22分には工学院がハイボール処理でエラーしたところにすかさずたたみかけ、スピードランナーが並ぶBK陣が右のオープンスペースへ的確にボールを運ぶ。最後は大外でパスを受けたWTB小林修市がインゴールへ滑り込み、20-0とした。
さらに成章は攻めの姿勢を維持し、27分には敵陣22m線付近のラインアウトからモールを形成。BKも加わって一気に突っ走り、勝利を決定づけるトライを加えた。
60分間の中で思うようにプレーを組み立てられない時間帯もある中、最終的には4トライを奪う一方で工学院をノートライに抑え、25-0の完封勝利で6連覇を果たした京都成章。相手の気迫にも受けることなくきっちりと体を当て続け、工学院の足が止まり始めた終盤にもう一段ギアを上げて突き放すことができた。長年に渡ってしのぎを削り、お互いを高め合ってきたライバルとの決戦を乗り越えたことで、チームはここからさらに成長を遂げるだろう。
昨冬の花園で圧巻の突破力を見せた現帝京大のLO本橋拓馬のような膠着局面をひとりで打開できるペネトレーターこそいないものの、各ポジションに高いレベルでバランスのとれたメンバーがそろっており、花園で初の決勝進出を果たした昨季のチームと比較しても、総合力はひけをとらない。FW、BKのどこからでもトライを狙える得点力を有し、鋭い出足で食い込む伝統のハードタックルも健在。リザーブにも実力者が控え、さまざまな組み合わせで高いパフォーマンスを発揮できる選手層の厚さも、ここから先の戦いでは貴重な武器になる。
大きな階段を上り、栄えあるファイナルの舞台に立った経験を携えてスタートした、2021シーズン。ひとつ壁を乗り越えれば、そこには次なる地平が広がる。いざ、悲願である日本一のタイトル獲得へ。12月27日に開幕する花園本大会でも、ブルーとイエローのジャージーの戦いぶりに注目したい。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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