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NDSに選ばれた5選手
ラグビー日本代表が、秋のテストマッチシリーズに向け宮崎に集合し、合宿をスタートさせた。今回の合宿には代表スコッド39名に加えて、NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド=将来日本代表に選出される可能性のある高いポテンシャルを持った人材)5名も参加している。その5名がオンラインでメディアに対応した。
ラグビー日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)やコーチ数名とオンラインで会見を行い、練習からのアピール次第で、代表スコッドに昇格したり、11月の欧州ツアーのメンバーに選ばれたりする可能性があると伝えられていた。
5人のうち4名は昨季のトップリーグで高いパフォーマンスを見せた選手が選ばれた。1人目はHO(フッカー)武井日向(リコーブラックラムズ東京)だ。ルーキイヤーから活躍を見せて、新リーグに向けて今季、新たにリコーのキャプテンにも就任した伸び盛りの選手だ。
HO武井日向
NDSに選ばれて武井は「やっと(日本)代表で練習できるので、(日本代表の)スタートラインに立てて素直に嬉しい。誇りに思います」と破顔した。
また、5名は練習着、食事、練習といった待遇は代表スコッドと同じで、数人ごとに分かれるミニチームにも39名の代表スコッド同様に参加しているという。
練習初日はフィットネスなどで本格的に練習はしていないが、すでにスクラム担当の長谷川慎コーチと話す機会があり、武井は「慎さんにどんなスクラムを組むという話をされましたが、これからやっていく中で、課題やわからないところが増えていくと思うので、コミュニケーション取りながら成長していきたい。合宿の後半にはジャパンのスクラム組めるようにやっていきたい」と話した。
今後、代表スコッドに昇格し、試合に出るために必要なことを聞かれて武井は「自分の持ち味のフィールドプレーを伸ばしていかないといけない。特にジャッカルのところ。あとワークレイト」。
「きつくても走ったりするなどのアクションをしっかり見せていきたい。1つ1つ積み上げていって、信頼される選手になることがまず大事。1日1日無駄にせず、持ち味を発揮することが、これから先につながっていくので大切に過ごしていきたい」と先を見据えた。
WTB中野将伍
2人目は、昨季準優勝だったサントリーサンゴリアスで主にWTB(ウィング)として出場し、4トライを上げた中野将伍だ。春も代表合宿に招集される可能性もあったが、トップリーグの決勝で脳しんとうを起こしてしまい、招集されることはなかった。
大学時代まで主にアウトサイドCTB(センター)としてプレーしていたが、昨季はサントリーでWTBとしても存在感を示した。中野は「WTBもやって(CTBと)2つポジションできるのは引き出しにもなりますし、いいパフォーマンスを出せばプラスにつながります」。
「フィジカルを活かした突破力や、オフロードパスといった自分の強みで勝負していきたい。世界で通用する選手になるには、スピードも重要だし、ディフェンス力も重要なので、もっとレベルアップしていきたい」と話した。
初めて参加する日本代表合宿では「早く試合に出たい気持ちがありますし(欧州)遠征メンバーに選ばれるように頑張りたい。そのためには毎回の練習で波がないように、いいパフォーマンスをして、毎回の練習で力を出し切ることが大事だと思っています。(2023年ワールドカップという)目標に向かってやっています。チャンスがあるときから、どんどんチャレンジしたい」と先を見据えた。
淺岡俊亮(写真:日本ラグビー協会提供)
3人目も昨季のトップリーグでトヨタ自動車の右PR(プロップ)として、セットプレーの安定に貢献した25歳の淺岡俊亮だ。「昨季のトップリーグでは多くの試合に出場し、スクラムとフィールドプレーの大切さを感じ、夏はフィットネスの強化をしてきました。合宿に呼ばれたことは嬉しいですし、先輩のPR選手から色々と教わっていきたい」と目を輝かせた。
夏にトレーニングを開始する前の体重は129kgあったが、2セット食べていた定食を1セットにするなど食事の制限をして、体重を122、123kgまで落としたという。「(フィットネステストでは)ベストが出ました。代表選手は120kg以下でやっている。体重を落としても走れる体力をつけたい。ゲームフィットネスをあげていきたい」。
FWの第1列には京都成章、帝京大学の先輩であるPR森川由起乙、HO坂手淳史がおり、淺岡は「(高校、大学の先輩2人がいるので)安心感あります。(2人と)スクラムが組めるのは、チャンスでもあり楽しみでもあります」。
また、初の日本代表合宿で長谷川コーチのスクラム指導も初めて受ける。「課題はスクラムだと思っているので、日本代表選手のような低いタックルを組めるようになっていきたい。自分の成長につながると思うので楽しみです」と語気を強めた。
FL福井翔大
4・5人目は高校卒業後、大学に進学せずプロ選手となった2人だ。その1人目は東福岡からパナソニックに入り、9月28日に22歳になったばかりのFL(フランカー)福井翔大だ。昨季、パナソニックでも主に控えからの出場だったものの、存在感を示していた。
NDSに呼ばれて、福井は「ラグビーやり始めて漠然と日本代表でワールドカップに出ることをずっと目標にやってきたが、今、やっとスタートラインに立てたかなと思います。リーチ(マイケル)さん、姫野(和樹)さんとか目標にしていた選手が目の前に現れて、胃がキリキリする、萎縮しているかなと思いますが、ラグビーになったら関係なくやっていきたい」と声を弾ませた。
同期の中では初の代表合宿の参加となり、パナソニックで優勝した時よりも連絡が来たという。「どちらが正解とかそんなことじゃないですが、僕ら世代で(日本代表の)候補として初めて呼んでもらったのは、こっちの戦略のおかげかなと思います。差をつけたいなという気持ちはありましたが、まだここからです」。
練習からのアピール次第では、当然、欧州ツアーに参加して初キャップの可能性も出てくる。ただ福井は「その日やらないといけないことを練習でやっていく感じです。とりあえず、100%で、当たり前ですが、やれるところまでやり続ける、頑張るしかない」と気を引き締めた。
ワーナー・ディアンズ(写真:日本ラグビー協会)
最後は3月に流通経済大柏を卒業し、東芝ブレイブルーパス入りした19歳のLO(ロック)/FLワーナー・ディアンズだ。NECのS&Cコーチだった父親と一緒に中学校2年時にニュージーランドから来日し、高校卒業後も日本でのプレーを選択した。
「ニュージーランドに戻ってアカデミーとか、クラブチームとか入って、プロまで行くのが難しいと思っていた。日本にいれば、東芝に入れるチャンスがあったのが(日本でプレーを選んだ)一番の理由です。東芝に入ったのはリーチさん(の存在)が大きかった。その時、日本のためにプレーをしたいと思いました」。
東芝に入ってからすでに体重は8kg増えて122kgとなり、身長は1cm増えて202cmになった。ディアンズは「まず、自分の身体を世界で戦えるように大きく強くなっていった。ちょっとずつ(手応えを)つかめていると思います。今回の合宿に参加してツアーに行けるように頑張っていきたい」と話した。
日本人選手とは日本語で、外国出身選手とは英語でコミュニケーションを取っている。憧れの選手は神戸製鋼でもプレーしたオールブラックスのLOブロディー・レタリックだ。
「2011年、2015年のワールドカップのニュージーランド代表のLOを見て格好いいなと思い、中学、高校のときから世界で一番のLOになりたいと思っています。ラインアウトだったり、フィジカル、タックルだったり、負けないようにできるだけアピールしたい」と腕を撫した。
2019年ワールドカップで日本代表の主力として戦い、今も中軸の1人であるCTB中村亮土も、もともとはNDSのメンバーとして選ばれ、少しずつ自分の力をチームに示してワールドカップの出場をつかんだ。
2023年まであと2年ある。5人のNDSの選手たちは、まず合宿でジョセフHCらコーチ陣にアピールして日本代表スコッドに昇格し、欧州ツアーに参加したいところだ。
文:斉藤健仁
◆日本代表 スケジュール
・ 9月29日(水)~10月16日(土)宮崎合宿
・10月16日(土)~10月27日(水)別府合宿
・10月23日(土)日本 vs. オーストラリア(大分)
・11月 6日(土)アイルランド vs. 日本(ダブリン)
・11月13日(土)ポルトガル vs. 日本(リスボン)
・11月20日(土)スコットランド vs. 日本(エディンバラ)
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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