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優勝候補筆頭の呼び声高い東海大学
昨季はコロナ禍の影響で、最終戦の日本大学戦こそ不戦敗となってしまったが、それ以外の6試合は危なげなく全勝。3連覇を達成したのが「リーグ戦の雄」東海大学である。ラグビー関東大学リーグ戦の中では、過去14年で10度の優勝と頭一つ抜けた存在であり、今季も優勝候補筆頭だ。
1998年以来指揮を執る木村季由監督は、武器の1つであるFW(フォワード)のスクラム、モールといったセットプレーはもちろんのこと、展開力、ディフェンスと磨きをかけている。
リチャード キャプテン。父親がウェールズ人
キャプテンにはハードタックラーのFL(フランカー)ジョーンズ リチャード剛、副キャプテンにはWTB(ウィング)林隆広(ともに4年)が選ばれた。今季のスローガンは「全員が同じ方向・成長する方向を向く。一度決めた判断に対して後戻りしない」という意味が込められた「ONE WAY」を掲げる。
春季大会は基盤となる個々のフィジカル強化に注力しつつ、早稲田大学にはスクラムで圧倒し、48-26で快勝。明治大学には26-28と接戦で敗れたが、今季も実力があることを証明して見せた。
ただ、7月に新型コロナウィルスの陽性者が出てしまい、3週間ほど活動が止まってしまった。8月には練習を再開したものの、菅平には行かず、校内で腰を据えて強化を進め、慶應義塾大学との練習試合には快勝するなど、徐々に調子を上げている。
モールが大きな武器
スクラム、モールは大学随一の強さを誇り、木村監督は「強みにしたいのはFWの圧力ですが、例年になくメンバーの大半を最上級生が占めています。FW、BK(バックス)のバランスの良いチームです」と話すように、今季はFWに力があるが、BKにも能力の高い選手がおり、トライが取り切れる総合力の高いチームだ。
FWはFWリーダーでU20代表歴のあるPR(プロップ)前田翔、昨季から伸びているというPR木村星南や、田草川恵、徳田悠人、星野克之、HO(フッカー)土一海人、LO(ロック)河野晶大、LO/FL小池隆成、NO8(ナンバーエイト)ノア・トビオ(いずれも4年)と4年生が中心。LOワイサケ・ララトゥブア、FLレキマ・ナサミラ(ともに3年)、NO8(ナンバーエイト)アフ・オフィナ(2年)も力がある。
司令塔として1年から活躍するSO武藤
BKはSO(スタンドオフ)武藤ゆらぎ(2年)、インサイドCTB(センター)丸山凜太朗(4年)がダブル司令塔の形でゲームをコントロールし、チームを引っ張っていく。
「丸山も落ち着きが出てきて成長した。より広く見られるようにインサイドCTBで起用している。武藤も自分1人で背負うより、(12番に)丸山がいることで選択肢が広がる。攻撃のオプションを整理して、シーズン通してこの形を軸にして戦う」(木村監督)。他にもSH(スクラムハーフ)竹村嶺(4年)、CTB伊藤峻祐(3年)、FB(フルバック)谷口宜顕(2年)と、個々にスキルの高い選手も揃う。
スキルに長けた丸山は12番からゲームをコントロール
新人は今季、リーグ戦最多の55名が入部し、部員数は180人近い大所帯となった。スピードと思い切りがあるランナーのWTB(ウィング)森山翔斗(佐賀工業)が、春季大会ですでにファーストジャージーを着た。
他にも「花園」こと、全国高校ラグビー大会の優秀選手(30人)に選ばれた機動力に長けたHO本田啓(東福岡)と、キャプテンとして東海大大阪仰星を引っ張ったSO/CTB近藤翔耶の2人が存在感を示し、タックラーのFL汐月佑心(九州学院)もコーチ陣の評価が高い。
他にもPR前川直哉(東海大大阪仰星)、中学時代は北海道で陸上の投てき王者だった経歴を持つPR竹内賢人(深谷)、LO川瀬悠河(東海大相模)、FL小池隆仁(桐蔭学園)、SH辻時羽(常翔学園)、CTBオトゥホウマ・シアレ(東海大福岡)、フィジカルと走力を兼ね備えたWTB岡村優太(東海大大阪仰星)、花園でトライ王に輝いたWTB中川湧眞(京都成章)ら、実力のある選手も加入しており、ルーキーイヤーからの出場機会をうかがっている。
木村監督が現在、チームに求めているものは4年生のリーダーシップだ。指揮官は「今季の4年生は1年のうちから公式戦を経験していて経験値があり、個々には力はある。だが、1つにまとまるのは得意じゃない」。
モールを押し込みトライを挙げる
「そのあたりをキャプテン中心に、新しい力を加えながらシーズンを戦ってほしい」と話した。ジョーンズ キャプテンはそういった意見を踏まえ、4年生が中心となって選手たちだけのミーティングを重ねて、戦術理解などを含めてコロナ禍の影響による実戦経験の少なさを補っている。
モール、スクラムという軸があり、FW、BKともに上級生が多く、ポジションごとにタレントも揃っている。そして外国人も高校時代から日本でプレーする選手が多く、ひたむきな選手が多い。昨季はベスト8で敗退した大学選手権に向けて、まずはリーグ戦で1試合ずつ積み上げながら勝利を重ねて4連覇を果たしたい。
そしてリチャード キャプテンが「自分たちの代で優勝して歴史を作りたい」と意気込むように、今季こそ東海大学ラグビー部が悲願の初の大学王者に輝けるか。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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