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入団会見を行った田中史朗
9月9日(木)、来年1月に開幕する「リーグワン」に所属するNECグリーンロケッツ東葛がオンラインで会見を開き、チームの現状と日本代表75キャップを誇るSH(スクラムハーフ)田中史朗の入団会見を行った。田中は日本のリーグではパナソニック、キヤノンに続き3チーム目となった。
登壇者はNECロケッツ代表・梶原健氏、そしてSH田中の2人だった。まず、梶原代表は新しいロゴマークに「我々のすべての思いが込められている」と語気を強めた。
ロケット型の新しいロゴマークは三層構造になっており、真ん中の一本は屋台骨となるNEC。その外側が選手、コーチたち含めたチームになる。一番外側はサポーター、スポンサーやファンのみなさん、地域のコミュニティを指している。「全ての応援があって、初めてロケットの形をして飛び立つことができる。そのような思いを込めて、今回ロゴマークの一新をしております」。
新しいロゴを見せる梶原健氏代表
また、梶原代表は「チームの強化はロケットのエンジン部分。エンジン部分がしっかり強固になっていないとロケットは飛び立てない、かつ魅力的なエンジンでなければ地域を巻き込めない」。
「強く愛されるチームを目指す、そういった思いをもとに日常を世界基準にということをキーワードにして、世界的に実績のあるマイケル・チェイカ氏を指導者として迎えた。選手も今10名発表しているが、基本的には15名といった全ポジションの補強を想定し、より強化して魅力的なチームを作っていきたい。本気でロケッツを日本一、世界一のチームにしていきたい」と意気込んだ。
田中史朗プロフィール
梶原代表はSH田中を獲得した背景を「1つ目は勝てるチームとして、SHは重要なポジション。これまでの経験や実績を踏まえた上でチームを勝利に導いてほしい」。
「2つ目がこの2年、チームが勝利できていない状況の中で、勝つためにはどういうマインドが必要か、そういった意味で現状のメンバーの中で強い思いを持って、リーダーシップを持って引っ張れる選手が不足していた。リーダーシップでまとめあげてほしい」。
「3つ目は愛されるキャラクターで、子どもたちにも非常に人気がある。ロケットの形をしっかりと作り上げる上で、ファンだったり地域だったりを巻き込むということで、田中の力が必要です。選手としての契約もさることながら、その後の長期的なことも踏まえて、NECグリーンロケッツを背負って立つ選手になってほしいという思いも込めてオファーさせていただいた」と説明した。
マイケル・チェイカDOR
ビデオで登場したマイケル・チェイカDOR(ディレクター・オブ・ラグビー)は、「田中がチームに加わることは個人的にも非常に光栄に感じている」とコメント。
「彼の経験、プレーの質の高さ、日本やニュージランドのハイランダーズ、そして日本代表として75キャップを持って培ってきた彼のラグビー知識、このような素晴らしいキャリアを持った特別な選手がチームに入って、彼の経験を選手たちに分かち合って学ばせてくれることに興奮を覚えるばかりです。今シーズン、そして将来のロケッツで、彼と一緒に仕事をするのを楽しみにしています」と期待を寄せた。
オンライン会見で田中は冒頭に、「新しいチームに来て、すごく刺激あるラグビーができて本当にワクワクしています。今の僕はラグビーだけじゃなくて、子どもたちにラグビーの楽しさを教えることも任務だと思っています。いろんなところで子どもたちと関わって、ラグビーの素晴らしさ、人生の素晴らしさ、楽しさを皆さんに伝えたいと思います」と真っ直ぐ前を向いた。
オファーがあったことはもちろんだが、田中がNEC東葛を移籍先に選んだのは、すでに加入が発表されていたニュージーランド出身のハイランダーズで活躍したHO(フッカー)アッシュ・ディクソンの存在が大きかったという。
「HOアッシュ・ディクソンからも一緒にやらないかという話をもらったことも大きな要因の1つだった。すごく悩みました。アッシュと、パナソニックでもハイランダーズでも一緒にやりましたけど、彼の熱い思いで一緒にNECを強くして優勝しようという話をずっとメールであったり、電話であったりしていた」。
経験を若い選手に伝える
日本代表75キャップ、そして日本人初のスーパーラグビープレイヤーでもある田中。チームに何を伝えたいかと聞かれて「努力すること、ラグビーを楽しむことですね。日本だけでみると、どのチームも勝つ可能性はすごく高いけど、NECの選手も世界に出ていく選手が増えていかないといけない」。
「僕たちは子どもたちに対して、日本が世界で戦っていくということを見せていかないといけないので、そこで努力すること。日本人は、努力はなんぼでもできる。努力は日本人の強みなので、僕が努力する姿をNECのみんなに見せて、そこを見てもらっ、てNEC全体が努力のチームになってほしい」と語気を強めた。
NECの印象を聞かれて田中は「一緒に練習しましたが、若い選手が多いのでエネルギッシュなラグビーをしている」と感じたという。また、昨年対戦して「トライを取られた後、誰も何もしゃべっていなくて、外国人も日本人もしゃべらなくて、勝ちたい意欲がすごく少なかった」と感じた。
そのため「その部分はしっかり言っていきたい。僕自身そういう文句を言ってきたが、それをいう人がいないと、勝ちたい意識がなくなってくるので、しっかりと勝つ意識、常に勝つ意識をマインドとしてチームメイトに持ってほしいですし、それを常に言い続けていきたい」と話した。
リーグワンの開幕に向けてNEC東葛を強くするために必要なことを聞かれてSH田中は「シンプルにコミュニケーションの部分ですね。能力はみんな素晴らしいものを持っているので、その中でコミュニケーションがないだけで、パスがつながらなかったり、やりたいことわからなくてそのままボールがつなげかったりということがあるので、しっかりどんなときでも話すことが大事。
外国人とのコミュニケーションも僕であったり、ロマノ(レメキ ロマノ ラヴァ)、ティム(・ベネット)だったりと日本語も外国語も両方しゃべれる選手がしっかりコミュニケーションをとって、チームを1つにまとめあげていきたい」と意気込んだ。
NECに新しい変化をもたらす
ファンへのメッセージを聞かれて田中は「僕がNECに入ったからには、まず選手自身1人1人にプロの意識を持ってもらい、勝つ集団を作っていきたい。そのためには僕たちプレイヤー、スタッフだけでなく、会社、ファンの方々のサポート、応援が必要になってきます」。
「これからは全員が一丸となってNECを強くして、みんなで喜びを分かち合いましょう。これからもNECをよろしくお願いします」という言葉で締めた。
チームはすでに開幕に向けて練習を行っており、9月16日にはヘッドコーチを含めて全員が揃い、9月末には1週間ほど合宿も敢行、急ピッチで仕上げていくという。大きな変化、進化を遂げているNECグリーンロケッツ東葛。国際経験豊富なSH田中の存在はピッチ内外で大きな力となろう。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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