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昨季、2年ぶりの大学選手権は早稲田に敗れベスト8
宿敵ワセダに敗れ、惜しくも大学選手権をベスト8で終えた昨年。この結果を超えるべく、さらなる躍進を誓った2021年は波乱の幕開けとなった。新型コロナウイルスの蔓延による部でのクラスター発生。これにより選手たちは個人での活動を余儀なくされた。
しかし、この難局も彼らはポジティブに捉えた。昨年度から引き継いだ「ストイックに取り組む姿勢」に加え、今シーズン新たに「規律」を強化し、個々がハードワークを行った。今年で就任3年目を迎えた栗原徹監督もチームの状態を「クラスター前に比べると非常にいい状態」と高く評価している。
この言葉を裏付けるかのように、菅平での帝京大学との練習試合では26-43で敗れたものの、1本目は19-5とリードして折り返した。春季大会を経験せず、かつ全体練習再開がつい1か月半前であったことを考慮すれば、かなり充実した内容である。
新チームの主将、副将はそれぞれ、HO(フッカー)原田衛(総4・桐蔭学園)とLO(ロック)山本凱(経4・慶應)が務める。ともに1年時から第一線で活躍し、間近でチームの辛酸を舐め、喜びを分かち合ってきたメンバーだ。
原田主将も「競争意識の重要性を常に呼びかけながら伝えている」とするなど、今までの経験を余すことなく伝えようという気概が感じられる。そんな彼らだからこそ、チームにもたらす影響は計り知れないものとなる。
今年のチームの特徴の1つとして、どこからでもトライを取れる「決定力」が挙げられるだろう。昨年、大ブレイクを果たしたCTB(センター)鬼木崇(法3・修猷館)をはじめ、抜群の決定力と安定したディフェンスを誇るWTB(ウィング)佐々木隼(総3・桐蔭学園)を擁するBK(バックス)はもちろん。
リーダー陣2人に加え、力強さと器用さを併せ持つNO8(ナンバーエイト)福澤慎太郎(環2・本郷)や、爆発的な運動量でチームに貢献するLO今野勇久(総3・桐蔭学園)らの存在が光るFW(フォワード)も攻撃力のある選手たちが揃う。指揮官も「アタックは時間を割いて、練習の中で一貫してチャレンジさせてきた」とし、その攻撃力に自信をのぞかせる。
2年目のシーズン、山田は新たなポジションに挑戦
アタックに関しては、昨年の反省として挙げられた「単調さ」を受け、今年はバリエーションのあるアタックを目指す。「守りの慶應」から「攻守の慶應」へ。そのカギとなるのはFB(フルバック)としても活躍するSO(スタンドオフ)中楠一期(総3・國學院久我山)と、FB(フルバック)から吃驚仰天のコンバートを果たしたSHの山田響(総2・報徳学園)の2人ではないか。
エリアマネージメントに大きな影響をもたらす新ルールの「50:22キック」は高いキック技術が要求されるものであるが、中楠はプレッシャー下でも息をのむほどの正確なキックを長短使いこなしながらうまく活用する。また、キックだけでなく、滞空時間の短い正確なロングパスやキックカウンターで突破を図り、あらゆる面で隙を見せない。
山田も持ち前の俊足を活かし、8月の帝京戦では堅実なサポートから得点を重ねた。また、その左足から繰り出されるキックは飛距離・正確性ともに申し分なく、こちらも攻撃的なSHとしてSO中村大地(環4・桐蔭学園)とのHB団で試合を作る。
今年は昨年と異なり、学生に考えさせる余白を多く渡しているという栗原監督。原田主将も「オフザフィールドの場面でも選手たちが自ら率先して動いていけるように」と選手に主体性を求める。
昨年と違い、主体性という新たな武器を纏った慶大ラグビーは歴史に新しい風を吹かせることができるのか。タレントは揃った。ワセダに勝利し、冬の大学選手権優勝へ。初戦の日本体育大学戦で弾みをつけ、不足する実践力をつけたいところだ。慶應蹴球部にとっての実りの秋がやってくる。
文:黒川心平(慶應スポーツ新聞会)
慶應スポーツ新聞会
慶應義塾大学文化団体連盟所属の公認サークル。通称ケイスポ。全40ある体育会の取材から記事の執筆、年7回の新聞製作まで全て学生の手で行う塾内唯一のスポーツ新聞サークル。部員数約50名、35年の歴史を持つ。»慶應スポーツWebサイト
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