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ラグビー コラム 2021年8月27日

サントリー入りしたHO呉季依典の「二つの夢」。共同生活する日本代表の兄から刺激

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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呉季依典選手

三重ホンダヒートから、東京サントリーサンゴリアスへ。

高校日本代表を経験するなど将来を期待されてきた24歳が、“二つの夢”を叶えるために新たなチャレンジを始めた。

京都成章、帝京大学という名門チームを経て2019年にHonda HEAT(現三重ホンダヒート)の一員となった呉季依典(ご・きえのり)。強烈なディフェンスに加え、瞬発的な動きもできる現代型フッカーだ。

男5人兄弟の末っ子として兵庫・尼崎市で育った。三男はサントリーでチームメイトになったPR森川由起乙、四男はHondaのPR呉味和昌。長男はサッカー、次男は野球を経験しているスポーツ一家だ。

負けず嫌いを自認する呉を待ち受けるのは、日本代表招集の経験者がずらりと並ぶ、サントリーの強烈なレギュラー争い。

厳しい道にあえて飛び込んだ決意、目標とする「二つの夢」、そして2021年度日本代表の兄・PR森川との共同生活についてもたっぷりと訊ねた。

日本代表の兄との共同生活でモチベーションUP

呉季依典選手

――三重ホンダヒートの本拠地である三重から、東京サントリーサンゴリアスのある東京に移りました。新生活はいかがですか?

僕は5人兄弟の末っ子なんですが、いまは三男の兄貴(サントリー・PR森川)と同居しています。もともと兄貴が住んでいる都内の家にお邪魔させてもらっている感じです。

実家ではずっと一緒でしたし、仲が良いのでまったく不自由なく暮らしています。基本的に兄が料理担当で、僕が片付け担当です。兄貴が料理を作ってくれるので自然にそうなった感じです。

――森川選手の料理の腕前は?

めちゃめちゃ上手いです!豚キムチがおいしいですね。基本的に肉ばかり食べています(笑)。

――共同生活でご自身は他に何を担当しているんですか?

几帳面ではないのですが、掃除は好きなのでやっています。お互い大人なので、その辺りは上手くバランスを取りながらやっていますね。兄貴が作れなかったら僕も料理をしたり。

――得意料理は?

料理は全然できないんですが、そうですね…、目玉焼きの焼き加減は上手になりました(笑)。半熟が好きなので、焼きすぎず柔らかすぎず、という感じです。

――休日はどう過ごしていますか?

最近は2週間に一回くらい、兄貴と二人で鎌倉など海の方へ行っています。兄貴は地黒なんですが僕は肌が白くて、それがかっこ悪いなと思っているので、日焼けをするのがマイブームです。

ただこの間は二人で熱海に行ったんですが、土砂降りで、海にも出られませんでした(笑)。でもドライブをして息抜きはできました。

――本当に兄弟の仲が良いんですね。

そうですね。でも昔はよくケンカをしてました。男ばかりの5人兄弟なので、特に食事のときは戦争でした(笑)。

ウチは大皿や鍋でドンと料理が出てくるので、取り合いになるんです。自分の分を取られそうになったら、兄貴の手に鍋の汁をかけて、兄貴が「熱っ!」と言っている間に取ったり(笑)。行儀が悪いんですが、やられっぱなしだといつまでも食べられない(笑)。負けず嫌いはこの頃に養われたのかなと思います。

もちろん今はもうお互い大人ですし、ケンカはなくて、本当に優しいです。他の兄たちもみんな面倒見が良くて、「なにか困っていることはないか」といつも気を遣ってくれます。

兄の日本代表入りが刺激に。思い描く「二つの夢」

――そんな兄の森川選手が2021年度の日本代表に選ばれて、欧州遠征に参加しましたね。

ずっとそばにいた兄貴が日本代表に入ったことはすごく刺激になりました。(日本代表合宿は)タフだったと聞いていますし、スキルのことも聞いて学ぼうとしています。

今回サントリーを選ばせてもらった理由は、兄貴が日本代表に入ったことで「自分も勝負したい」と思ったことがキッカケのひとつです。どこまでいっても兄貴という存在は大きいなと思います。

呉季依典選手

――森川選手の日本代表入りがサントリー入りの理由のひとつだった?

そうです。僕には“二つの夢”があって、一つは現役中に日本代表に入りたいということです。現役である以上、そこを目指さないのであれば現役じゃなくていいのかなと思っています。勝負したいです。

もう一つは、将来は指導者になりたいという夢です。

その二つの夢を考えた時、サントリーというチームはすごく魅力的で、そこでプレーするチャンスがあるならチャレンジしたいということで、今回お話を頂けたので選ばせて頂きました。

呉季依典選手

――サントリーにはどんな印象を持っていましたか?

正直なところあまり対戦したくないチームでした。皆さんすごく走りますし、身体も強くてタフなチームだなと。入団してからの印象は本当に「家族」という感じですね。

練習に参加した印象は、スキルの高さ、フィジカルの強さもあるんですが、余裕があるので周囲に気を遣える選手が多いことが印象的でした。「自分がこう動いた方がこいつは楽なるんじゃないか」といった、気配りをできる選手が多いんです。

――サントリーで特に仲の良い選手は?

高校のU17(17歳以下)日本代表で一緒にプレーした祝原(涼介/PR)がいて、分からないことは優しく教えてくれます。

あと帝京OBの人たちが多いので、あまり困っていることはないですね。伸び伸びやらせてもらってます。

――入れ替わりで帝京大を卒業したSH流大選手などは「偉大な先輩」という感じですか?

僕からしたら、もう、まさにそうですね。

――指導者の夢はいつ頃芽生えたのですか?

より明確になったのは社会人になってからです。

5歳の頃からラグビーをやらせてもらって20年目になりますが、ラグビーの一線を退いた後にラグビーとまったく関わりがない仕事をするのではなく――もちろん培った協調性やコミュニケーション能力はどこでも活きると思いますが――やはり、将来はラグビーの知識・経験をフル活用したいと思うようになりました。

京都成章では湯浅監督(泰正)という素晴らしい監督に出会えましたし、帝京大学では岩出先生(雅之)に出会いました。学ぶところしかありませんでしたし、本当に得をさせてもらったと思います。

コーチの資格はHondaの時から取り始めています。目標にしている指導者像としては、スキルはもちろん大事なんですが、選手一人ひとりの「人としての価値」「ラグビー選手としての価値」を作りたいです。あとは選手にやらせるだけではなくて、自分も一緒に汗を流して共に歩めるコーチになりたいですね。

熾烈なポジション争いにチャレンジ

――サントリーでは激しい競争が待っています。3人のフッカー(北出卓也、中村駿太、堀越康介)は全員が日本代表招集を経験しています。

周囲からも同じ事を言われましたし、それはもちろん理解していました。

しかし僕の人生はこれまでずっとチャレンジで、兄貴が高校代表に入ったら自分もそこを目標にしましたし、大学を選ぶ時も、自分がどれだけ通用するのかチャレンジしたくて日本一だった帝京大学を選びました。今回もそこ(日本代表招集歴のある3人)に挑戦したいという思いがあります。

ただ、試合に出れる、出られない関係なく、自分を成長させてくれるものが絶対にサントリーにはあると思っています。

――自身のプレーの強みをどう認識していますか?

ディフェンスは強みにしています。あとはスピード、瞬発力の部分です。あと、これはスキルではないんですけども、負けず嫌いというか、タフなところでは勝負したいと思っています。

――では最後に2022年1月7日に開幕する新リーグ「リーグワン」へ向けた意気込みをお願いします。

まずは絶対に初代チャンピオンになるということは決めています。試合に出る、出ないに関係なく、グラウンドの内外でしっかりチームのために身体を張って、常にタフに動き続けることは自分の中で決めています。

また新リーグをキッカケにして、もう一度ラグビーがドカンと人気が出たらいいなと思っています。ぜひ多くの方にラグビーの魅力を肌で感じてほしいです。

今年10月に25歳になる呉だが、質問にはハキハキと淀みなく答え、その言葉には説得力があった。今回の取材はオンライン形式で行われたが、参加していたジェイ・スポーツの取材関係者も「24歳とは思えないです。良い指導者になりそう」と驚いていた。本稿筆者も同感である。

ピッチ内外で良い影響を与えそうな好プレイヤーがまた一人、東京サントリーサンゴリアスの戦列に加わった。

■呉季依典(ご・きえのり)
・生年月日:1996年10月23日
・出身地:兵庫県
・身長/体重:177cm/102kg
・ポジション:HO
・経歴:尼崎ラグビースクール-兵庫県ラグビースクール-京都成章-帝京大学-Honda HEAT(2019-2021)-東京サントリーサンゴリアス(2021~)

文:多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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