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森谷圭介選手
そのニュースに驚いたファンも多かったろう。
2021年7月、パナソニックに5シーズン在籍した森谷圭介のサントリー移籍が発表された。
正智深谷高校-帝京大学-パナソニックと歩んだ27歳は、精度の高いキック、スマートな判断ができるユーティリティ・バックスであり、184センチ90キロの体格を活かした突破もできる。
帝京大では1年時から主力として活躍し、名将・岩出雅之監督は「学生で最もスーパーラグビーに近い」と絶賛。同期のHO坂手淳史(パナソニック)らと共に将来を嘱望された。
大学4年時はHO坂手主将のもと7連覇達成。大学選手権決勝は左膝の前十字靱帯断裂で欠場したが、卒業後に入団したパナソニックでは1年目から公式戦に出場し、2018年には世界選抜に選出された。
2020年はサンウルブズの共同主将としてスーパーラグビーに初挑戦し、36-27で勝利した開幕節レベルズ戦では前半9分に先制トライを奪うなど、チーム初の開幕戦勝利に貢献した。
王道を歩んできた森谷が迎えた転機、その理由と決意とは。新天地での日々などプライベートまでを訊いた。
「環境を変えてもう一歩成長するために」
森谷圭介選手
――東京サントリーサンゴリアスの印象は?
だいぶ緊張していたんですけど、みんながフレンドリーに挨拶してくれたりするので助かっています。
帝京大学の先輩後輩がたくさんいて、1つ上のユタカさん(SH流大/帝京大卒)はクラブハウスで会いました。ユタカさんは入団のニュースが出た時に連絡をくれて、実際に会った時はチームウェアを「似合わないな(笑)」とイジられました(笑)。大学時代はずっと一緒にプレーしていましたし、ずっと良くしてもらっていました。
――今シーズン入団の移籍組で、HO呉季依典選手(元Honda)は帝京大出身、SH木村貴大選手(元コカ・コーラ)は同学年ですね。
(HO呉選手は)3つ下で、大学時代はそこまで一緒にプレーできていないんですが、気持ちが強くてコンタクトが強烈、という印象は大学時代からあります。
キムタカ(木村選手)はメディアに出ているそのままの感じですね。裏表がないというか、そもそも裏があるのか分かりませんけど(笑)。彼とは2020年のサンウルブズで初めて同じチームになりましたが、対戦したこともありますし昔から知っていました。
――東京サンゴリアスへの移籍を決断した理由は?
昨シーズン、パナソニックで試合に出場できませんでした。学生時代から1シーズンを通して公式戦に出られなかったことはなかったです。
昨シーズンは新型コロナウイルスの影響で2チームに分けて練習することがあり、試合に出るメンバーと出ないメンバーで分かれることがありました。そうなるとアピールすることも難しくなります。それは全員が濃厚接触者にならないようにするためでしたが、メンタル的に厳しい時期はありました。
もともと僕は地元が埼玉の深谷で、パナソニックの本拠地である熊谷のとなりです。地元も近くて居心地が良くて、愛着もあったんですが、試合に出られなかったことで「何かを変えないといけない」と思うようになりました。
ロビーさん(ディーンズ監督/パナソニック)も「居心地が悪いところの方が人として成長する」とずっと言っていたこともあり、環境を変えようと考えました。そうした動きをする中で誘ってもらったという経緯です。
サントリーでも試合に出ることはもちろん難しいと思うのですが、環境を変えて自分がもう一歩成長するために良いチームなのではと思い、選ばせてもらいました。
性格は人見知りのインドア派。信条は「自然体」。
――帝京大のグラウンドがある東京都日野市と、東京サンゴリアスのグラウンドがある府中市は隣接していますね。
そうですね、ちょっと帝京の方に行けば見慣れた道がある感じです。大学の時から行っていたラーメン屋さんがあったりします。
森谷圭介選手
――新生活にはもう慣れましたか?
ようやく生活が落ち着いたという感じです。常にバタバタしていたので、娘(1歳9か月)と公園にもあまり行けていなかったです。
――息抜きはどうしていますか?
家に帰ると娘が小走りで来てくれたりするのも癒やしなんですが、最近は一人の時間も大事だなと思っています。家でもクラブハウスでも、ずっと誰かと一緒なので。ただ趣味がないので息抜きを考えようと思っています。
――チームではゴルフやキャンプにハマっている選手もいるようですね。
僕は結構インドアですね。漫画を読んだり、ゲームをしたり。ただ最近はキャンプが好きな人に連れて行ってもらって、キャンプが好きになってきたところです。YouTubeでソロキャンプを見て、やりたいなと思っています。まだ自分でキャンプ道具を買って、というところまではいってないです。
――インドア派ということですが、自分の性格はどう分析していますか?
だいぶ人見知りなんですよね。男3兄弟の一番下ですが「末っ子っぽいね」とよく言われます。サンウルブズでもそうでしたが、サントリーでもだいぶ緊張しています。
キムタカみたいに自分からグイグイは行けないですね。喋りかけてもらって、という感じの性格なので、そういった意味ではサントリーのみんながたくさん話しかけてくれるのですごくありがたいです(笑)。
基本的な性格はそんなに変えられないと思っていて、猫を被っている時間がもったいないので、できるだけ自然体でいようとは思っています。
――話しぶりが落ち着いていて、怒っているところが想像できないのですが(笑)。
怒ります、怒ります(笑)。でも、どうですかね――、そんなに怒らないかもしれません。ただ目に見えて不機嫌になったりするので、そこは気をつけたいと思います(笑)。
ユーティリティ性は大きな武器。新天地で飛躍へ
森谷圭介選手
――パナソニックとサントリーの違いを感じたことは?
パナソニックは休むときはしっかり休もう、という感じですが、サントリーは本格的なシーズンが始まっていない時期でもハードワークをしているので、そこは凄いなと思います。サントリーはオフシーズンでもしっかり動いている印象です。
――いよいよ来年1月7日にリーグワンが開幕しますが、東京サンゴリアスから期待されていることは?
ユーティリティの部分は自分でも強みだと思っています。バックスではスクラムハーフ以外のポジション(スタンドオフ、センター、ウイング、フルバック)は全部やったことがあります。
サントリーでは複数ポジションができる選手は多くないそうで、チームから求められるポジションでしっかりプレーしたいと思っています。どのポジションでも高いレベルでプレーしたいですね。
――では最後に東京サンゴリアスでの目標を教えてください。
チームとして優勝することはもちろんですが、移籍して1年目ということもあって、まずはサントリーの文化であったり環境であったりに適応して、自分自身が成長したいです。そこにプラスしてサントリーの力になれたらいいなと思っています。
新リーグでは、サントリー加入が公表されたNZ代表のSO/FBダミアン・マッケンジーとの協演も楽しみだ。ハイレベルなユーティリティ性を備える森谷は新天地でどんなプレーを見せてくれるのだろうか。
■森谷圭介(もりや・けいすけ)
・生年月日:1994年3月4日
・出身地:埼玉県
・身長/体重:184cm/90kg
・ポジション:UBK(ユーティリティ・バックス)
・経歴:上柴中→正智深谷高校→帝京大学→パナソニック ワイルドナイツ(2016~2021)→東京サントリーサンゴリアス(2021~)
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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