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ラグビー コラム 2021年7月19日

ストーマーズをノートライに封じB&Iライオンズが快勝。7・24第1テストに向けチームづくりはいよいよ最終段階に

ラグビーレポート by 直江 光信
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チームに再合流したキャプテン、アラン ウィン・ジョーンズ

7月24日から始まる3週連続のテストシリーズに向け、最後のウォームアップゲームとなる17日のストーマーズ戦に臨んだブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ。大一番を前に、できるだけ手の内を隠した上でチームに弾みをつける内容も求められる状況だったが、7トライを挙げる49-3の勝利できっちりと答えを示してみせた。

序盤から激しいコンタクトが続き拮抗した流れで試合が進む中、先制したのはストーマーズだった。前半19分、パワフルな縦突進を重ねて相手の反則を誘うと。SOティム・スウェイルのPGで3点を刻む。

しかしライオンズはすかさずギアを上げて反撃に転じ、27分にテンポのいい連続攻撃から密集サイドに走り込んだLOアダム・ビアードがゴールラインを越えて逆転。33分にはラインアウトモールから飛び出したHOルーク・カーワンディッキーがインゴールに滑り込み、さらに40分にも左大外でパスを受けたLOジョニー・ヒルがトライを加えて、21-3で前半を折り返した。

後半も主導権を握ったのはライオンズだった。50分、CTBエリオット・デイリーからのオフロードで裏に出たNO8ジャック・コナンが約30メートルを駆け抜けて中央にトライ。その後はしばらく得点が膠着する時間帯もあったものの、気迫みなぎるディフェンスでストーマーズのアタックを凌いでふたたび攻勢に転じ、67分にFWの真っ向勝負でPRザンダー・ファーガソンが穴をこじ開け左中間にボールを押さえる。これで35-3に。

勝負が決まった終盤も、ライオンズは貪欲にプレッシャーをかけ続ける姿勢を失わなかった。73分、自陣ゴール前のピンチを守り切った後のペナルティからSOスミスが跳ねるようなステップで裏へ抜け出し、外をサポートしたWTBルイス・リースザミットが50メートルを独走。77分にも崩れた状況でスペースへ的確にボールを運んでパスをつなぎ、NO8サム・シモンズがポスト下にフィニッシュする。最終的には49点までスコアを伸ばし、テストマッチ前の最後の実戦機会を締めくくった。

試合を通じて際立っていたのは、ここという局面でチャンスを仕留め、ピンチを耐え抜くライオンズの集中力とスキル精度の高さだ。非凡なポテンシャルを秘めた選手がそろうストーマーズに圧力を受けるシーンもあったが、押されながらもしっかりと体を当て続け、相手に隙が生まれるやすかさずたたみかけて何度も状況を打開した。激しいせめぎ合いにも動じない腰の座った試合運びに、イギリスおよびアイルランドのよりすぐりの一流プレーヤーがひしめく“ベスト・オブ・ベスト”の底力がにじんだ。

熾烈なフィジカルバトルにエキサイトする場面も幾度か見られたが、これはスプリングボクスとの激突を念頭に、このエリアで絶対に引かないという断固たる意志の表れだろう。スクラムでもストーマーズをたびたびドミネートし、力を入れて強化してきた成果がうかがえた。いよいよ一週後に迫った第1テストに向け、メンタル的にもいいコンディションに仕上がってきている印象だ。

個々の選手を見ると、ケガ人続出のSOのカバーとして急遽招集され先発に起用されたマーカス・スミスが、並外れたセンスとスキルを存分に披露した。柔らかいパスワーク、鋭角のステップに加え、コーナーからの難しい角度も含めて7本のゴールキックもすべて成功。この7月にイングランド代表としてテストマッチデビューしたばかり(2キャップ)で経験という点では不安もあるが、チャンスを創造できる卓越した能力は、世界一のディフェンス力を誇る南アフリカに対して貴重なオプションになりえる。

また6月27日の日本代表戦で負った肩のケガから奇跡の復活を遂げ、この木曜日にチームに再合流したキャプテンのLOアラン ウィン・ジョーンズも、後半53分から途中出場して元気な姿を見せた。テストマッチでは何より経験が重要な意味を持つだけに、12年前の南アフリカツアーから4回連続でライオンズ選出の大黒柱が帰ってきたことは大きなプラス材料だ。首脳陣もきっと胸をなで下ろしたことだろう。

7月7日のシャークス戦ではチーム内の検査で新型コロナウイルス感染者が確認され、キックオフ直前にメンバー23人中8人が入れ替わるという非常事態に陥ったライオンズだが、そうした状況でもできる限りの準備を進め、一丸となって困難を乗り越えることで結束を強めてきた。世界中が注目する24日の第1テストは、その真価を証明するこれ以上ない機会だ。圧倒的なサイズと推進力を武器に2019年のワールドカップを制したスプリングボクスに対しどんな布陣で臨むのか、そしてここまで温存してきたスペシャルプレーをいかに繰り出していくのかも興味深い。

「これからはすべての選手を見ながら次週のスターティングフィフティーンを決定するプロセスに入ります。同時に、誰をベンチに置いてインパクトを与えるかも重要な要素になる。モメンタムを維持するとともに、先発メンバーとは違う何かを加えられるプレーヤーを入れたい。何人かの名前が頭に浮かび始めています」(ウォーレン・ガットランド監督)

この先の国際ラグビーの潮流をも左右する、正真正銘のビッグマッチ。さまざまな想像をふくらませながら、キックオフまでの時間を楽しみたい。

文:直江 光信

直江 光信

スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

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