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ライオンズとライオンズの対戦
4年に1度のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのツアーがいよいよ始まった。
7月3日(土)、南アフリカのヨハネスブルクで、「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」(B&Iライオンズ)と、ヨハネスブルクを本拠とする「ライオンズ」の「ライオンズ」同士の対戦が行われた。
B&Iライオンズにとっては、この試合が南アフリカ代表(スプリングボクス)とのテストマッチ3試合を含む、計8試合の南アフリカツアーの初戦となった。
3度目の指揮となったウォーレン・ガットランドHC(ヘッドコーチ)は、先週スコットランドで行われた日本代表戦から、WTB(ウィング)ジョシュ・アダムズ(ウェールズ)以外14人の先発を変更した。
ゲームキャプテンはスコットランド代表主将のFB(フルバック)スチュアート・ホッグが務め、イングランド代表主将のCTB(センター)オーウェン・ファレルら、6人のイングランド代表が先発。
また、20歳の最年少、WTB(ウィング)ルイス・リースザミット(ウェールズ)ら、出場メンバー23名のうち、8選手がB&Iライオンズでのデビュー戦となった。
一方、ホームのライオンズは、スプリングボクスで4キャップのベテランPR(プロップ)ルアン・ドゥレヤー、22歳のゲームキャプテンのNO8(ナンバーエイト)フランク・ホーン。
クボタでもプレー経験のあるCTBバーガー・オーデンダールなど、スプリングボクスや、7人制代表経験のあるWTBジャンバ・ウレンゴら若手とベテランを融合させたチームでB&Iライオンズに挑んだ。
エミレイツ・エアラインパーク(エリスパーク)は約6万人が収容できるが、南アフリカのコロナウィルス感染拡大のため残念ながら無観客となった。試合は現地時間の夜6:00にキックオクされた。
早々にチャンスを掴んだのは、やはり格上のB&Iライオンズだった。前半4分、テンポよくボールを展開し、CTBクリス・ハリス(スコットランド)が突破、再びボールを持ったハリスがチップキックで転がしたボールを、WTBリースザミットが拾い上げてトライ。CTBファレルのゴールも決まり、B&Iライオンズが7点を先制した。
B&Iライオンズはさらに6分、NO8タウルペ・ファレタウ(ウェールズ)がラックの後方からボールを拾い上げ、FL(フランカー)ハミッシュ・ワトソンにパスし、そのままグラウンディング。ゴールも決まって14-0とリードを広げる。
このまま一気にB&Iライオンズのペースで試合が進むかと思われたが、ホームのライオンズも積極的にアタックを仕掛ける。だが、B&Iライオンズのディフェンスに阻まれなかなかトライを奪うことができない。20分には、ライオンズがラインアウトを起点にピックアンドゴーでゴールラインに詰め寄るが、ペナルティでチャンスを逃す。
33分、今度はB&Iライオンズがラインアウトから展開し、CTBファレルのオフロードパスを受けたSH(スクラムハーフ)アリ・プライス(スコットランド)が左サイドを走り、回り込んで中央にトライ。ファレルのコンバージョンも加えて、21-0とさらに点差を広げた。
しかし、ライオンズも諦めず、35分、ボールをパスでつなぎ、最後はFL(フランカー)ヴィンセント・ティツカがトライ。SO(スタンドオフ)ジョーダン・ヘンドリクスのゴールも決まって7点を返した。
前半21-7はB&Iライオンズのリードで試合を折り返した。ボールポゼッションもキャリーの回数もほほ変わらなかったが、ゲインメーターがB&Iライオンズの255mに対し、ライオンズは120m。ディフェンスを突破した回数が16回と4回と、B&Iライオンズが大きく上回ったのが点差に反映した形となった。
後半も最初に点を取ったのはB&Iライオンズだった。1分、ラインアウトからFLワトソン、SHプライスとボールをつなぎ、最後はWTBアダムズが走り込んで中央にトライ。ゴールも決まって28-7とする。
しかし、その直後の4分、ライオンズはキャプテンのNO8ホーンがタックルを交わしながら突破し、オフロードパスを受けたWTBラブズ・マックスウェインが走り切ってトライ。SOヘンドリクスのコンバージョンも決まり、14-28と巻き返した。
だが、ここから一気にB&Iライオンズのリズムで試合は進む。14分、SOフィン・ラッセル(スコットランド)のクロスキックをキャッチしたWTBアダムズがトライ。35-14突き放す。
さらに26分に途中出場のSHガレス・デーヴィス(ウェールズ)、29分、32分のWTBアダムズのトライで、結局8トライを積み重ねたB&Iライオンズが56-14で快勝した。
ファンが選ぶこの試合のMVPには、4トライを挙げてハットトリックを達成したWTBアダムズ、テレビ投票によるMVPにはFLワトソンが選出された。
FLワトソンは、「(初めてのB&Iライオンズとして)試合に出られて嬉しい。しかし、まだまだ課題はある。今日の試合でもいくつか雑になった部分があった。前半はフォジカルを試された」と語った。
WTBアダムズは「1人や2人のディフェンスならそれを引きずって進む。4トライも勝つこともできて嬉しい。まだ改善しないといけない点もあるが、チームとしての質も見せることができたと思う」と振り返った。
南アフリカツアーの初戦を白星で飾ったB&IライオンズのガットランドHCは「まだ取り組むべきことがあるが、勝ったことはポジティブなことだ。チームとして時間を重ねるにつれ、どんどんよくなっている。まだまだ100%にはいかないが、徐々にそこに到達できると感じている」と評価した。
さらに指揮官は「明日(日曜)はトレーニングを休み、そして次の試合のメンバー発表がある。そして火曜日にはキャプテンズランと、非常に短い間隔で試合をしていかねばならない。最初の3試合で全ての選手を先発させるつもりだ」と次の試合を見据えた。
また、ジョージア代表に40-9で快勝した南アフリカ代表の試合を見た感想について「長い間テストマッチを行っていなかったせいか、明らかに精度が低く、ラインアウトと個のランで勝った印象だが、それは驚くべきことではない」。
「彼らも我々と同じように時間を重ねるにつれてチームとしてコンビネーションも上がり、レベルアップしていくだろう」と分析した。
ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ2021南アフリカ遠征
【ハイライト】ライオンズvs.ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ
ゲームキャプテンのFBホッグは「多くの選手がB&Iライオンズとして初めての試合だった。まだ完璧ではないが、テストマッチまであと4試合あるので仕上げていけると思う」と自信をうかがわせた。
一方、敗れたライオンズのイヴァン・ファンルーエンHCは、「彼らのスピードが、私たちをオフサイドに追いやった。B&Iライオンズのディフェンスは日本代表戦の時と少しイメージが違った」。
「ラインスピードがあって、ラックでの意思決定がよく、スペースをみつけていた。より良いチームが勝ったということだが、スコアボードほど力の差があったとも思えない」と前を向いた。
B&Iライオンズは、7月7日(水)現地時間の夜7:00(日本時間深夜2:00)に、再びヨハネスブルクのエミレーツエアラインパークで、遠征2戦目として、スーパーラグビーのシャークスと相対する。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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