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引退会見を行った五郎丸
6月14日(月)、静岡・浜松にあるアクトシティで、今シーズン限りで引退した元日本代表、ヤマハ発動機ジュビロのFB(フルバック)五郎丸歩(35歳)が改めて引退会見を行った。
冒頭、今シーズンが始まる前の12月、引退表明会見も行っていた五郎丸だが、「ヤマハ発動機ジュビロとして(トップリーグ)最終戦が終わって引退会見ができなかったのは、進退について正式な発表ができなかったので、1ヶ月半という時間をいただきました」と説明した。
まず、五郎丸は32年間のラグビーキャリアを振り返って「32年間という長い日々、ラグビーを通じて、多くの人々と出会い、多くの仲間とともにプレーしてこられたことを本当に幸せに思っております。ファン、関係者、スポンサー、家族、友人、多くの人に支えられて、ここまでやってこられたことに感謝しています」。
「最終戦に立てず、自分のプレーを見せず引退となりましたが、これも自分の人生ですし、プロの厳しさかなと思っています。(最終戦に)出られなかった悔しさは、次のステージの最大の活力としてやっていきたい」と清々しい表情で話した。
自身のベストプレーを聞かれて「(2015年ワールドカップ)スコットランド代表戦、(前半終了間際に)コーナーでタックル入ってタッチに出したのは一番、責任を果たせたプレーだったと思います」と振り返った。
「引退して、寂しさはないのか?」と聞かれても五郎丸は、「本当にすっきりした気持ちです。寂しさはありません。後悔も1つもない 次のステージに向けて、力をためようという感じです」と前を向いた。また、「ラグビーとは?」という質問に対しては「3歳からラグビーをやってきたので、人生そのものだなと思います」としみじみと語った。
ファンが気にしていた引退後の進退については、2022年1月に開幕する新リーグで「ヤマハ発動機株式会社が新設するプロクラブの一員としてやっていきたい」と話した。
次の進路はクラブスタッフ
新クラブに関しては、6月23日に改めて記者会見が行われるが、五郎丸は7月1日にから新クラブにおいて、マネジメントスタッフのひとりとして働く予定だという。
基本的にトップチームのコーチなどではなく、今後も指導の道には戻らない予定だ。五郎丸は「現場でいくのか、マネジメントサイドで行くか悩んだので、これは指導者としては戻らない決意を持っていま。トップのチームを指導することはなくても、子どもたちへの普及などはやっていきたい」と話した。
なぜ、現場でコーチや指導者になるのではなく、ヤマハ発動機が新設するプロクラブでマネジメントサイドを選んだのか。
「静岡が好きだったことも理由の1つ」だったという五郎丸は、「今まで(日本のラグビーは)企業色が強かったので、プロクラブを作る発想がなかった。ヤマハ発動機が、先陣を切ってやる」。
「(指導と)どちらがワクワクするかと天秤にかけたとき、マネジメントの方が個人的にワクワクしたので、その感情を信じてその道を選んだ。静岡に住んで、クラブのスタッフとしてクラブに関わっていく」と前を向いた
日本代表として海外で試合をするだけでなく、オーストラリア、フランスでもプレーした五郎丸は、「現役時代からマネジメントに関心がありました。海外のクラブも経験し、日本との差を肌で感じていた。ヤマハ発動機が新たに会社を作って、ラグビー界に新たな風を吹かせる、そこに自分の人生を乗せて人生を成長させたいと思った」とも話した。
五郎丸は新たなチャレンジに際して、「プロクラブの新社長(山谷拓志氏)から、まずはチケットの企画などベースの部分からスタートしようというお話はいただいています。飾りだけのアンバサダーの立ち位置ではなく、しっかり実力を積んで、クラブ経営を学んでほしいという話も受けました」。
「チケット(販売)からやって、最終的には、球団の社長になれるほどの実力をつけていきたい。クラブとしては様々なことにチャレンジして、静岡の中から全国、世界に発信できるクラブになれればと思います」と意気込みを語った。
花束を贈られた五郎丸
最後にヤマハ発動機のキャプテン大戸裕矢から、五郎丸に花束が贈られた。大戸キャプテンは「五郎丸さん、ヤマハ発動機の勝利のために、日本ラグビーのために全力でプレーしていただいてありがとうございます。五郎丸さんの力強いプレーと、ラグビーに対する情熱は後輩の僕たちが受け継いできたい。現役生活、お疲れさまでした」と挨拶した。
最後に五郎丸はファンに向けて「32年間という長いラグビー人生を多くの方々に支えていただいたことを心から感謝したいと思います。ありがとうございます」。
「次は選手の立場ではなく マネジメントの立場からラグビー界にしっかり貢献していきたい。これからもご支援のほどよろしくお願いします。そして、今まで、本当にありがとうございました」という挨拶と笑顔で締めくくった。
新リーグがはじまるにあたって、ヤマハ発動機が新たに静岡の地にプロクラブを創設し、それに呼応するかのように五郎丸選手はセカンドキャリアとしてクラブのマネジメントスタッフとして働く。新クラブも五郎丸も日本のラグビー界にとって新たな道を切り拓いていく。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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