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ラグビー コラム 2021年6月11日

ラグビー日本代表が手にした新たな力。新生JAPANに名を連ねた3人のFW

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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大分合宿での日本代表FW陣

6月12日(土)静岡・エコパスタジアムで、ラグビー日本代表(JAPAN XV)vs.サンウルブズが行われる。今年のトップリーグでパナソニック ワイルドナイツの5度目の優勝に大きく貢献し、3年居住の条件をクリアし、新生日本代表に名を連ねた3人の外国出身のFW(フォワード)が出場する。

まず、パナソニックだけでなく、サンウルブズでもプレーしたニュージーランド出身のPR(プロップ)クレイグ・ミラー(32歳)だ。オタゴ大学を卒業後、11ヶ月、会計士として働いた経歴もあるミラーは、ハイランダーズ時代、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)、トニー・ブラウン コーチの薫陶を受けた。

昨年のコロナ禍においても自ら計算し、ニュージーランドへの帰国は2ヶ月以内に抑えて、今春、3年居住の条件をクリアして日本代表入りを果たした。

再び、2人の世界的コーチの下、日本代表としてプレーしていることに本人は「何年か前は、日本代表で一緒に仕事し、同じ環境にいることができるとは考えていなかった。人生もラグビーも同じで、様々な出会い、様々なことが起きることにワクワクしています。リスペクトしているコーチ陣と一緒にできることはうれしい」と感慨深そうに話した。

ハイランダーズの後、2018年からサンウルブズに加入したことで、日本との縁が生まれて、2018年からはパナソニックでもプレーを続けている。日本代表になりたいという気持ちが芽生えたのは、「サンウルブズの環境でプレーして、素晴らしい選手たちと話をした経験から気持ちが高ぶって、日本代表の選手と一緒にプレーしたいと思った」ことがきっかけだったという。

オンラインで会見に出席したミラー

日本代表合宿に初めて参加して、ミラーは「みんなが最初の2~3日でも同じ画を見て、団結していると感じました」。また、スクラムを担当する長谷川慎コーチの指導を受けて、ベテランPRは「慎さんは素晴らしいコーチで、ディテールにこだわります。僕にとってはスクラムドクターです。ラインアウトも言われたことを信じて遂行していくことは、団結するためには重要だと思っています」と語気を強めた。

日本代表は国同士の真剣勝負を戦うという意味で、ミラーは「スーパーラグビーのように3~4ヶ月かけて戦っていく大会ではなく、セカンドチャンスはない。テストマッチに向けてチームを作り上げていくことが、私にとってのチャレンジです」と初の国際舞台に向けて気持ちを高ぶらせた。

パナソニックではゲームキャプテンも努めたコーネルセン

2人目は今年、パナソニックで接点での激しいプレーだけでなく、ゲームキャプテンを務めるなどチームのリーダーの1人としても躍動したオーストラリア出身のFL(フランカー)ジャック・コーネルセン(26歳)である。

父のグレッグはオーストラリア代表25キャップを誇り、オールブラックス相手に1試合4トライを挙げたこともある名FLだった。11歳からラグビーを始めたコーネルセンだが、オーストラリアではスーパーラグビーチームと契約できず、練習生としてパナソニックに入団。2017年からトップリーグでプレーし、今春、3年居住の条件をクリアし、日本代表入りを果たした。

コーネルセンは「日本に長くいればいるほど、日本での生活を楽しんで愛するようになった。パナソニックの選手たちと友情も築くことができた。お互いを尊重し合う日本の文化も気に入りました。日本に来るまでは自分がどうなっていくか具体的に見えなかったが、自然と日本代表になりたい気持ちが芽生えてきた」と振り返った。

日本代表合宿に初めて参加し、コーネルセンは「日本代表には温かく受け入れられて、みんなと仲良くやっています。パナソニックでプレーしているときは、リーダーとして行動で示そうと思っていた。日本代表にはたくさんのリーダーがいるので、自分の役割をしっかり確認し、自分の行動で周りにいい影響を与えるように過ごしている」と話した。

身長195cmでラインアウトのキャッチャーとしても活躍できるコーネルセンは、パナソニックではNO8(ナンバーエイト)としてプレーしたが、日本代表では第3列だけでなく、LOとしてのプレーも期待されている。コーネルセンは学生時代やパナソニックでもLO経験があるようで、あまり不安に思っていないようだ。

コーネルセンは「チームのためにできるなら、どこでもやるという気持ちです。LOをプレーするにあたって、フィジカルをしっかり出して、フィールドの真ん中で仕事をすることが期待されています。ワークレイト、フィジカルを活かして戦っていきたい」と静かに闘志を燃やした。

18歳からパナソニックでプレーするガンター(右)

最後は6月12日(土)の試合では、サンウルブズ側の選手として出場するオーストラリア出身のFLベン・ガンター(23歳)だ。2016年からパナソニックでプレーし、19歳6日という当時のトップリーグ最年少出場記録も樹立した。

2019年はサンウルブズでプレーし、2019年ワールドカップ出場も期待されたが、3年居住の条件をクリアできず涙を呑んだ。それでもガンターは「自分が常にいい選手になれば、コーチが選んでくれる。自分がいい選手としてよくなると周りがよくなり、チームがよくなる」ことをモチベーションにして、ラグビーに真摯に向き合ってきた。

そのため、ガンターにとって日本代表に選出されることは悲願だった。それが成就し、初めて日本代表に合宿に参加して、「右を向いても左を向いてもどこを見てもスーパースターがいて信じられなかったが、自分の力を試すことができることは楽しみでなりません」と興奮を隠さなかった。

特に尊敬してやまないキャプテンFLリーチ マイケル(東芝)と日本代表で一緒にプレーし大きな感銘を受けている。「リーチはオンもオフも素晴らしい行動で示してくれるし、コーチ陣の関係も素晴らしい。日本語と英語の両方を話して、(チームの)間に立ってくれるし、リーダーとして学ぶことがたくさんある。すぐに彼みたいになれないが、経験は素晴らしいし尊敬しています」。

また、ガンターは「オーストラリアにいたら、今の自分のレベルにはいない。週末、クラブラグビーをして友人と楽しい話をしていたかもしれない。日本に来て自分をプッシュして、(プロフェッショナルな)ラグビーの環境に入ったから、今の自分が成り立っている。今、ラグビーがやれているのは日本に来たからだと思います」と正直に吐露した。

そんなガンターにとって、やはり自分を見いだしてくれたパナソニックのロビー・ディーンズの監督は大きい。「パナソニックにも、すごくたくさんのことをしていただきましたし、自分が日本代表にいる、今の形を作ってくれたのはロビーのおかげです。彼がいなければ、彼のコーチングやガイドがなければ、日本代表にいることはなかった。日本代表としてできることを一生懸命がんばりたい」と感謝の言葉を述べた。

ガンターはテストマッチでプレーすることは「国を背負って、(桜の)ジャージーを着て、国のため、日本代表のために試合に出ることは名誉あることです」とキッパリ言い切った。突破力のあるランとジャッカルで、サンルウブズのメンバーとして存在感を示して、欧州遠征で日本代表初キャップを狙う。

この3人だけでなく、さらに秋に日本代表資格を取得する予定で、日本代表合宿に帯同し、今回の試合ではサンルウブズの一員として出場するCTB(センター)ディラン・ライリーもいる。パナソニックの優勝に大きく貢献した選手たちが、2023年のワールドカップで「ベスト4以上」を目指す日本代表の大きな戦力になる。

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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