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ラグビー コラム 2021年6月10日

福岡の抜けたウィングのポジションを狙う初代表の4人。ラグビー日本代表

ラグビーレポート by 斉藤 健仁
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5月末、新たに発表されたラグビー日本代表において、今季で引退した福岡堅樹(パナソニック)が務めていたWTB(ウィング)のポジションとして発表されたのは6人だった。

そのうち、フランスでプレーするWTB松島幸太朗(クレルモン)は欧州から合流予定で、キャップホルダーは2019年ワールドカップでも活躍したWTBレメキ ロマノ ラヴァ(宗像サニックス)のみだった。

初の日本代表合宿に参加し、そして初キャップを目指す4人のランナーの今の気持ちに迫りたい。

191cm大型WTBのファンデンヒーファー

1人目はサンウルブズでプレーし、クボタスピアーズの4強入りに大きく貢献した南アフリカ出身の「シャドー」こと、ゲラード・ファンデンヒーファーゲラード・ファンデンヒーファー(32歳)だ。身長191cmでハイボールに強く、突破力もあり、FB(フルバック)やCTB(センター)もこなし、ロングキッカーとしても知られる。

ファンデンヒーファーは「すごく興奮しています。光栄なことだと思うので、これからチャンスを活かしていきたい。(ジェイミー・)ジョセフHC、(トニー・)ブラウンも素晴らしいコーチで、エナジーを与えてくれて、クリエイティブなゲームを考えてくれる。一緒にできて嬉しい」と声を弾ませた。

特にBK(バックス)担当のブラウンコーチからは、プレースキックなど細かい点まで指導され、充実した日々を過ごしている。「キックを蹴るとき強く蹴りすぎて左に逸れることが多いので、そこを修正するために、真っ正面を向いて蹴る練習をしています。また、タックル、ラインブレイク、トライを挙げるなどの遂行力の点について言われています」とファンデンヒーファー。

ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ、アイルランド代表戦に向けて、アイルランドでのプレー経験もある大型WTBは「ライオンズ戦に選ばれたことに誇りに思っている。素晴らしい機会なので、その機会をもらえたことは楽しみでワクワクしています」。

そして、「アイルランド代表は前回のワールドカップで日本代表が勝ったから、死ぬ気で戦ってくるが、日本代表が勝つことが重要になってくる」と話した。

今後の実戦に向けて、ファンデンヒーファーは「クボタはFW(フォワード)で前に行く違うスタイルだったが、ジャパンはBKでトライを取るスタイルで、バックスリーとしての力を活かしていけるので楽しみです」と意気込んだ。

活躍して得意のポーズを見せたいマシレワ

2人目はサンウルブズや近鉄ライナーズで活躍し、蛇のようなステップ、そして「スネークポーズ」でお馴染みのフィジー出身のWTBセミシ・マシレワ(28歳)だ。

「S&Cコーチに事前にメニューをもらってハードワークしてきたので、日本代表に選ばれて、ここにいることにすごくワクワクしています。これからのゲームが楽しみ。(コーチ陣には)アタック能力を信じてやっていけと言われています」。

2017年に近鉄でプレーするためにオーストラリアのフォースから移籍した時に、「ゴールとして日本代表をセットした」という。そして、サンウルブズで日本代表の選手、コーチ陣と一緒に戦う中で、「自由にプレーできて自分の強みが出せた。(日本代表に向けて)自分の気持ちが高くなった」と振り返る。

福岡が引退し、チャンスでは?という問いに対して「100%、そう思います。(福岡のことは)バックスリーのスタンダードを高くしてくれたので尊重していますし(日本代表のWTBになる)、チャレンジだと思っています。日本代表のジャージーを着るのは誇りだし、ベストを尽くして最大限の力を出していきたい」と先を見据えた。

マシレワといえば、トライ後のポーズも大人気だ。スネークポーズだけでなく、SH(スクラムハーフ)田中史朗(キヤノン)が教えたという芸人「江頭2:50」(エガちゃん)を真似たパフォーマンスもある。

「サンウルブズ時代から愛されていて、日本の方々も楽しみにしているので、トライをしたら、ずっとやっているエガちゃんポーズをファンに見せたいので、やると思います」と笑顔を見せた。

天理大学を卒業したばかりのフィフィタ

3人目は、昨年度の大学選手権で天理大学の優勝に大きく貢献した、近鉄のシオサイア・フィフィタ(22歳)だ。大学時代はずっとCTBで、本人も「ベストポジションはCTBかな。でも、日本代表に来たらやるしかない」と話すが、昨年のサンウルブズ同様、日本代表ではそのスピードとパワーを活かしてWTBとしてプレーしている。

トンガ代表になるつもりは「まったくなかった」というフィフィタは、初めて日本代表合宿に参加して「絶対、きつい、タフな練習になると最初からわかっていたので、メンタルの準備とかしっかりできていた。ベストプレイヤーになるように、努力しないといけないとわかっている。もっと頑張らないといけないと思っています」と声を弾ませた。

かねてから、フィフィタはトンガ時代の憧れの存在だったCTB/WTBアタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼)と日本代表でのプレーを嘱望していたが、「アタ(アタ)がいないなと思って残念。一緒に(日本代表)入りたかったけど、まだまだ時間がるので、戻ってくることを楽しみにしています」と話した。

合宿中はトンガカレッジ・アテレの先輩でもあるNO8(ナンバーエイト)アマナキ・レレイ・マフィ(キヤノン)と常に一緒にいる。「リスペクトしている先輩。最初は怖かったが、すごく優しいです」。

フィフィタは、日本代表で自身の変化を感じているようで「(昨年は)サンウルブズの経験は自信になったし、大学生のときに比べたら、この合宿に来ていろんなこと学んで、スキルのところは成長している。ライオンズと試合をするのは、これで最後かと思っている。すごくチャンスなので、メンバーに入れるように日々の練習から努力しています」と話した。

また、メンタルコーチから、ハードな合宿を乗り越えるために「ライオンのメンタルになれ!」と要求されているようで、フィフィタは「世界一の選手になるためにメンタルの部分も大事になってくるので、ライオンのメンタルになっています!」と破顔した。

Xファクターとして期待される高橋

4人目は代表候補外から急遽、日本代表に呼ばれたトヨタ自動車ヴェルブリッツのWTB高橋汰地(24歳)だ。2年目の今年は開幕から連続MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝く活躍を見せて、プレーオフまで9トライを挙げる決定力の高さも見せた。

ジョセフHCも「Xファクターとして期待している」と名指しされた高橋は「期待されていて素直に嬉しい。こぼれてきたチャンスをいかにつなげてくか。何か一つでもいい選手だと思ってもらえるようなプレーをコーチ陣に見せられたらいいな」と腕を撫した。

好調だったトップリーグに関して、高橋は「昨年より、決定力やハイボールキャッチや細かいスキルなど、自分の強みだったり、やりたいことだったりと、すごく形に現れたシーズンだった。2年前より(スキルなどが)上がって自信になった」と振り返る。

また、自身初となる日本代表でも「まずは少しでも試合に絡むことできれば。自分の持ち味のスピードだったり、ハイボール(キャッチ)のスキルだったり、味方がラインブレイクしたら一番にサポートに寄るとか、自分の強みを常に出し続けるような選手になり、高橋がボールをもったら期待してくれるような選手になりたい」と力強く語った。

12日の試合ではWTBの中で唯一、サンウルブズからの出場となるが、日本代表のバックスリーよりも活躍すれば、ライオンズ戦、アイルランド代表戦でのキャップ獲得も見えてくる。

「自分にとって国際試合は。経験することができていない大きな舞台だと思うので、試合に出られるのであれば全力を出したい。福岡選手のかわりではないですが、そういった存在になれるように頑張ろうと思っています」。

松島、レメキもいるが、6月12日(土)、日本代表(JAPAN XV)vs.サンウルブズで、大きなアピールをしてライオンズ戦のチャンスをつかむのはいったい誰になるか。エコパスタジアムでのファンデンヒーファー、マシレワ、フィフィタ、高橋、4人のランから目が離せない。

文/写真:斉藤健仁

斉藤健仁

斉藤 健仁

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント

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