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2019年ワールドカップの司令塔・田村
6月12日(土)のサンウルブズ戦、26日(土)のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦などに向け、5月末から大分・別府合宿で激しい練習を重ねている新生ラグビー日本代表。
ゲームのタクトを握る10番のポジションを争っているのは、2019年ワールドカップの5試合全てで先発し、今年はキヤノンイーグルスでキャプテンを務めたSO(スタンドオフ)田村優。そして、ワールドカップには控えとして出場し、今年のトップリーグで、パナソニック ワイルドナイツの司令塔としてチームを優勝に導いたSO松田力也の2人だ。
まず、ワールドカップ後、次回大会に向けて代表活動に参加するかの明言を避けていた田村だが、再び代表活動に戻って来た。その経緯を聞かれると、「ラグビーから離れる期間も多かったのでポジティブというか、またそう(代表に参加する)いう思いも湧いてきて、ジェイミー(・ジョセフHC/ヘッドコーチ)からまたチャンスをもらった。(コロナ禍で)大変な状況でもありましたが、上手く自分の気持ちが整理ついてきたかな」と話した。
さらに32歳となったベテランは「心が充実した状態でトップリーグに臨めたのが大きかった。(2023年ワールドカップという)そんなに先のことは見られないので、今はこの合宿、ツアーのことしか考えていない。ラグビー選手として成長したいという気持ちはあります。日本代表にコミットし、自分の持っているものを100%、チームに還元したいと思います」と続けた。
同世代のリーチ主将とともに代表を引っ張る田村
キャプテンとしてキヤノンをベスト8に導いたことは、個人にもキヤノンというチームにもプラスになったようだ。田村は今年のトップリーグで、試合をコントロールすることはもちろん、試合中にFW(フォワード)のハドルに入って鼓舞したり、ラックに頭から突っ込んでトライを挙げたりと、気持ちを前面に出してチームを引っ張った。
この1年を振り返って田村は「(キヤノンでキャプテンをやって変わったことは)あまりないです。僕が、じゃなくて、キヤノンの他の選手がいい方向に向かってくれたことが大きい」。
「みんな、今までのやっていたことが足りない、もっとやらないということを理解して、そこを一生懸命頑張って。(SH荒井)康植みたいに、気づいて頑張って日本代表に選ばれた選手もいますので、チームがいい方向に向かったと思います」と振り返った。
SO田村にトップリーグでのSO松田のプレーをどう見ていたか聞くと、田村は「もともと素晴らしい選手だし、(松田が10番を努めて)パナソニックが優勝しました。今に始まったことではなく、ずっといいプレーしている。本当に素晴らしい選手、昔からいい選手です。(ライバル心は)特にないです。一緒にチームがいい方向を向けるように頑張っていきたい」と、先輩らしく話した。
代表の10番を狙う松田
その田村を追う立場である松田は、トップリーグ1年目こそ、CTB(センター)の12番を付けてプレーしていたが、その後は10番として安定したプレーを見せてきた。
そして今年はパナソニックの10番として、5シーズンぶり5度目の優勝に導いたシーズンを振り返り「SOとして10番として、試合を重ねることで、ゲームの流れも含めて、ゆっくり落ち着いてプレーできるようになってきていると思います。日本代表でも(2019年と)同じコーチ陣の中で、コーチングを受けたこともありますし、代表でもさらに余裕を持ってプレーできるなと思います」と自信をのぞかせた。
久しぶりの日本代表活動に参加して、松田は「ジェイミーも久しぶりの代表ですごく気合いが入っていると思いますし、それをひしひしと感じます。モチベーション高く合宿に入って、今も高い状態でやっています。しんどい練習しているので、すごく充実感あります。所属チームとは違う新たな緊張感というか、懐かしいプレッシャーの中でできるなと日々過ごしています」と話した。
2023年ワールドカップに向けて、松田は「自分自身、もっともっと成長しないといけないと思っています。追う立場、追われる立場を気にせず、2023年にどうあるか、10番として試合に出られる選手になれるように、1日1日積み重ねるだけ」と先を見据えた。
松田はSOでパナソニックの優勝に貢献
ライバルの田村の存在について聞かれると、松田は「(田村)優さんの経験値や落ち着きは、自分もゲームをプレーしていく中で得ていかないといけない。トップリーグの試合で数多く10番で出られたのは、自分にとってポジティブです。今後、練習で優さんとコミュニケーション取って盗めるところは盗んでいきたい」と意気込んだ。
日本代表は6月12日(土)のサンウルブズ戦を経てから渡欧し、スコットランドで26日(土)にライオンズ戦を控える。
松田は「全員がコミュニケーションして同じ画を見て、精度の高いプレーをしないといけない。ライオンズには名の知れた選手がたくさんいて、SOに3選手が選ばれている。どの選手がきても経験値があっていい選手なので、どれだけチャレンジできるか。すべてにおいてすごく楽しみです」と語気を強めた。
田村は「個人的にもチームとしても、もう1回、ゲームプラン、スキルレベルをテストマッチするレベルに上げないといけない。ライオンズと試合するのは、ワールドカップで試合するのと同じくらいの夢というか、ラグビー選手にとってはすごく光栄なことなので、すごく楽しみ」。
「僕は日本代表が日本で一番素晴らしいチームだと思うので、今まで(ワールドカップから代表の活動)期間が空いて見られなかった人たちに、もう一度、見せるチャンスだと思っています」と静かに闘志を燃やしていた。
キックも正確でゲームコントロールに長けたSO田村、SO松田という司令塔2人の存在をジョセフHC、そして戦術やBK(バックス)を担うトニー・ブラウンコーチも心強く思っているはずだ。トップリーグでさらなる成長を遂げた2人が、切磋琢磨しながら日本代表をさらなる高みへと導いていく。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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