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左から大六野学長、神鳥新監督、田中前監督
6月1日(火)付けで、5月までリコーブラックラムズで、8年間指揮官を務めていた神鳥裕之氏が、明治大学ラグビー部の新監督に就任した。
それを受けて、6月4日(金)に東京・駿河台にある明治大学で、新監督就任会見が行われた。就任会見には大六野耕作学長、神鳥新監督、そして田中澄憲前監督が出席した。
まず、大六野学長が「最初の1年はヘッドコーチ、残りの3年は監督として、田中監督が日常生活やゲームの勝ち負け双方から学ぶ、いい文化のチームを作ってくれました」。
「今度は、そのバトンが神鳥監督に渡ります。私としては田中監督からのいい文化を神鳥監督に継承し、さらにこれを伸ばしていただくことを祈っています。期待しています。(神鳥監督の方を向いて)絶対に早稲田には勝つ!」と挨拶とともにエールを送った。
田中前監督
田中前監督は「明治大学ラグビー部がどうあるべきか、プライドみたいのものを取り戻してほしいと取り組んできた。毎年、優勝したかったが、日本一奪還もでき、優勝争いにいることもできた。自分としては最低限の仕事を達成できたかなと思います」と4年間を振り返った。
神鳥監督を後任として強く推したのは、明治大学では1つ下の後輩で、同じ部屋で過ごしたこともある田中前監督だった。その理由を前指揮官は「トップリーグの監督をしていて、その経験値も高いというのと、話していく中で価値観、大事な部分が一致した。スポーツ選手の前に1人の人間としてということを大事にしているし、安心して任せられると思った」と説明した。
神鳥裕之新監督はまず「近年、田中監督の下、素晴らしい成績を収めてきた明治大学を引き継ぐ、重責をひしひし感じながら、自分なりのチャレンジをしたいという覚悟でいます」。
「OBとして(田中前監督が指導していた明治大学は)勝利する、勝つ文化を作り上げると同時に、選手1人1人の取り組む姿勢を感じていました。私としては、そこをしっかり継承することが一番大きな役割だと思っています」。
そして、「競争社会の中で勝利は最も重要だが、そこに向かうプロセスも努力も人間性も磨き上げながら、結果として優勝に導くというチームをこれからも作っていきたい」と挨拶した。
神鳥監督は、田中前監督からは1年前に話をもらったという。迷いもあったというが、神鳥監督は「明治大学ラグビー部のこの仕事は、チャンスを誰もがいただけるものではないだろうし、諸先輩方が築き上げてきた明治大学の監督は北島(忠治)先生のポジションで、自分がやれるかもしれない。ここで断って、後々、やっておけばよかったという人生にしたくないと思った。そこが一番決め手だった」と監督を引き受けた経緯について語った。
明治大学ラグビー部としては吉田義人監督、丹羽雅彦監督、田中監督とBK(バックス)出身の監督が続いたが、神鳥監督は久しぶりのFW(フォワード)出身の監督となった。
意気込みを語る新監督
NO8(ナンバーエイト)として大学選手権で優勝も経験している監督は「明治のチームカラーはFWが前に出て、というスタイルは当然、作ってきたい。きっと明治のラグビーはこんなもんだろうと言語化しなくても、何となく共有できていると個人的に思っています」。
「みなさんが思っている、期待されている、我々が実際経験して、プレーしてきている明治のラグビーのイメージは、しっかり継承して、その中で今のラグビーを取り入れていきたい」と意気込んだ。
また、ライバルの早稲田大学にも元ヤマハ発動機ジュビロの大田尾竜彦監督が就任した。神鳥監督はほとんど面識がなかったというが、「プレーするのは学生ですが、やっぱり、早稲田という相手は、数ある大学の対戦相手の1つと思おうと思っても無理です。早明戦の朝に強く、本気で思えるような準備をしたいし、我々は学生たちにできることをしっかりやっていきたい」と語気を強めた。
どんなラグビーをしたいかという問いには、まだ指導して4日目という神鳥監督は「パッとグラウンドに出てみると、明治の学生は身体が大きいし、190cmの選手もいる」。
「大きい選手が力強く動き回れるようなチームになれば、明治らしい戦い方が必然的に出てくると思います。サイズの大きい選手たちが勤勉に動き続けられるような、80分間通して、そういったチームを作って、ワクワクするようなラグビーを見せたい」と話した。
改めて、今季の目標をたずねると「常に優勝争いに参加するチームになる。優勝はそのときのコンディションや状況、運もあるかもしれないが、やるからには当然そこ(優勝)を目指していく」。
「チームとして期待され、応援されるように見ていて明治のラグビーはさすがだなと思ってもらえるような準備をしていくことが重要で、その先には大学選手権の優勝がある。そういったプロセスの部分ですね、どんな人にどんな期待をされているか、自分たちがどうあるべきかを突き詰めていきたい」と静かに闘志を燃やした。
神鳥監督はリコーからの出向で、田中前監督同様にフルタイムで指導にあたる。契約は1年で、毎年見直していく方針だが、明治大学側としては複数年、神鳥監督に指導してもらう意向のようだ。早速、6月6日(日)の春季大会の東海大学戦が、神鳥新監督の初陣となる。
神鳥監督は「在任期間中に必ず優勝する。そういった強い気持ちを持って日々学生たちと努力していきたい」と腕を撫した。2018年度に22年ぶりに優勝した明治大学だが、ここ2シーズンは準優勝、ベスト4と優勝できなかった。トップリーグでの豊富な監督経験を活かして、神鳥新監督が1年目から大学王者を目指す。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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