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FW陣はモールにスクラムに濃い1時間を過ごした
5月30日、大分・別府で合宿しているラグビー日本代表がいよいよ本格的にグラウンドでの練習をスタートさせた。
NO8(ナンバーエイト)姫野和樹(ハイランダーズ)、WTB(ウィング)/FB(フルバック)松島幸太朗(ASMクレルモン・オーベルニュ)を除いた日本代表34名が集合、コーチ陣によるセッションが行われた。
ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)、トニー・ブラウン コーチ、さらにトップリーグ決勝戦に出場していたパナソニック ワイルドナイツと、サントリーサンゴリアスの選手は前日の29日から合宿に合流した。
26日から合宿入りした選手たちは、すでにフィットネスやトレーニングの数値などを測っていたが、パナソニックとサントリーの選手も同様に前日にフィットネスなどのテストを行った。ジョセフHCらは見学しつつ、ミーティングなどを実施したという。
前日大分入りしたジョセフHC
29日、久しぶりに選手と直接対面した後、会見を開いたジョセフHCは「すごくワクワクしている気持ちです。その半面、悪い意味ではなく、ナーバスにもなりました。ただ、明日の朝7時に練習が始まって、夜9時までラグビー漬けになれば、それもなくなるでしょう」と切り出した。
そして、「ワールドカップの前もそのような感じで練習していましたし、慣れ親しんだ別府で合宿ができることがうれしく思います。(2018年2月に)サンウルブズでもここでトレーニングし、(自衛隊での)アーミーキャンプをしたことも思い出深い」。
また、「(一部の選手たちと)1対1のミーティングを行い、日本代表として何を成し遂げるべきかという話をして、フィットネステストでも多くの選手が参加し、いい結果も出ており、明日からいい練習がスタートできそうです」とコメントした。
さらに「ラグビーできることがうれしいですし、選手みんなは行動もアチチュードもやる気満ちているので、楽しみにしています。チームとしては70%の状態なので、ライオンズ戦に向けてチームとしてもっと仕上げていくつもりです」と正直に今の気持ちを吐露していた。
トニー・ブラウン コーチ
BK(バックス)では、秋に日本代表資格を得る予定のCTB(センター)ディラン・ライリー(パナソニック)も練習に加わり、今年、ハイランダーズ(ニュージーランド)を指揮していたトニー・ブラウン コーチらが、ステップやランから始まり、タックル&ジャッカル、オフロードパス&ブレイクダウン、さらに4対4,7対7などの練習を行った。
また、FW(フォワード)はジョセフHC自らがライオンズ戦、アイルランド代表戦においてキーとなるラインアウトやモールを細かく丁寧に指導していた。さらに長谷川慎スクラムコーチがスクラムを熱血指導。
スクラム練習、右は代表に復帰した垣永真之介(サントリー)
コーチから「(お腹の下の)丹田に力を入れて」「丹田プッシュ」という言葉が時折飛ぶ中、スクラムマシーンで組んだ後、さらに合宿初日から実際に8対8で組んで汗を流した。
トップリーグでパナソニックを優勝に導いたSO(スタンドオフ)松田力也は「ジェイミー(ジョセフHC)も久しぶりの日本代表で気合いが入っていて、それをひしひしと感じています。(個人としても)久しぶりの代表活動でモチベーションは高い状態ですし、しんどい練習をしていて、すごく充実感があります」と振り返った。
中村(左)と稲垣
また、スクラム練習で新たに代表入りしたHO(フッカー)中村駿太(サントリー)と積極的にコミュニケーションを取る姿が印象的だったPR(プロップ)稲垣啓太(パナソニック)は「4年前、初めて集まったキャンプでは100%でスクラムを組むことができなかったが、今日は新しい選手も含めてスクラムを組めた。スクラムのスタンダードは4年間で確実に上げてきたかなと思います」と語った。
そして、「(2023年ワールドカップに向けて)世界一のスクラム目指します。前回のワールドカップで、世界一のスクラムを持った南アフリカに、スクラムとセットピースをコントロールされて負けた。そこを超えないと次のステップにいけない。世界一の相手に通用する、世界一のスクラムを作っていきたい」と意気込んだ。
その後の練習はメディアには非公開だったが、FWとBK一体となった戦術の確認などを行ったという。テーマは「クラリティー」(clarity=明快さ)だったという。SH(スクラムハーフ)茂野海人(トヨタ自動車)は「9番はゲームのスピードをコントロールするので、そのスピードが遅くならないようにしていた」などと話した。
長谷川コーチ(左)の話を聞くFW陣
PR稲垣は「(非公開練習は)アタックとディフェンスの理解度を上げていくことにフォーカスするトレーニング。最初の予定では、スピードはそこまで上がらない予定だったが、スピードもコンタクトもほぼ100%に近い状態になっていた。みんないい緊張感を持っていました。スタンダードが高く保たれていて、初日の練習で、いいスタートだったと思います」と満足げに話した。
コーチ陣も選手も待ちに待った実戦練習ということで1時間ながら、見ていても気持ちが伝わってくるトレーニングだった。ジョセフ体制が継続しているため、ワールドカップメンバーを中心としたリーダー陣とコーチ陣が、上手くコミュニケーションが取れていることも功を奏しているはずだ。
日本代表は、6月12日にサンウルブズとの初戦を控えているが、今夏のターゲットはもちろん26日のブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦、そして7月3日のアイルランド戦の2試合である。
ジョセフHC、ブラウンコーチ、長谷川コーチという2019年ワールドカップで日本代表をベスト8に導いたコーチ陣とリーダーたちを中心に、これから急ピッチでチームを仕上げていく。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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