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【ハイライト動画あり】トゥールーズが11季ぶりにハイネケン・チャンピオンカップの頂点へ!ラ・ロシェルは惜しくも初タイトルに届かず。
ラグビーレポート by 直江 光信トゥールーズ
50分以上を14人で戦いながら勝利にあと一歩まで迫ったラ・ロシェルの鬼気迫る奮闘は胸を打った。その強烈なプレッシャーにたびたび食い込まれながらも逃げのプレーに走らず、ここという場面で集中力を発揮して勝ち切ったトゥールーズの気迫もすさまじかった。ゴールラインを超えたのはそれぞれ一度ずつ。フランス勢同士の激突となったハイネケン・チャンピオンズカップの決勝は、これぞファイナルという死闘をトゥールーズが22-17で制し、2020-2021シーズンのヨーロッパ最強クラブの称号を手にした。
ともにワールドクラスの実力者をずらりと並べ、国内リーグのフランスTOP14でも首位を争う強豪同士の激突だけに、試合はキックオフ直後から拮抗した展開となった。まずは開始4分、SOロマン・ヌタマックが正面約45メートルのPGを決めトゥールーズが先制。しかしラ・ロシェルも7分にSOイハイア・ウエストが左中間のロングPGを成功させ、すかさずイーブンに戻す。その後も互いにコンタクト局面で激しくバトルし、圧力をかけ合う状況が続いた。
10分にヌタマックがPGを追加しトゥールーズがふたたび先行するも、ラ・ロシェルも26分にウエストがPGを返して6-6に追いつく。試合が大きく動いたのはその直後だった。密集脇の狭いスペースをすり抜けようとしたトゥールーズのFBマクシム・メダールに対し、ラ・ロシェルのCTBレヴァニ・ボティアが肩で激しくヒット。リプレー検証の結果、危険なタックルでボティアがレッドカードとなり、ラ・ロシェルは残り50分あまりを14人で戦うこととなった。
それでもクラブ史上初のタイトル獲得に燃えるラ・ロシェルの気力はまったく衰えなかった。数的不利をカバーすべく残る14人がそれまで以上に攻守に体を張り、32分、40分とウエストが2本のPGを成功。12-9とリードして前半を折り返す。
後半も先にスコアチャンスをつかんだのはラ・ロシェルだったが、2分にウエストが左中間30メートル付近から狙ったPGは左ポストに当たって外れ、追加点はならず。一方のトゥールーズは4分、SHアントワーヌ・デュポンの防御裏へのキックをチェイスしたWTBチェスリン・コルビが右コーナーへ飛び込んだシーンは、ラ・ロシェルCTBジョフレー・ドゥメローの渾身のタックルに阻まれノートライになったものの、直後の6分にヌタマックがゴール正面のPGを決め、12-12に追いつく。
【ハイライト】ラ・ロシェル vs. トゥールーズ|ハイネケン・チャンピオンズカップ2020/21 決勝
この日最初のトライが生まれたのは、その13分後だった。トゥールーズが中盤で左右に振って攻撃し、中央のラックからSOヌタマックが右へ移動しながら球を受けると、絶妙の間合いで外のスペースへカットパス。走り込んだNO8セレヴァシオ・トロフアが抜け出し、内へのリターンパスを受けたCTBフアン・クルス・マリアが鮮やかな走りでインゴールへ飛び込んだ。
トゥールーズはさらに29分にもヌタマックが約30メートルのPGを落ち着いて決め、22-12と引き離しにかかる。しかし14人で戦うラ・ロシェルは、残り10分で10点差という厳しい状況にもギブアップせず、72分にSHタウェラ・カーバーローがラックサイドのわずかな隙を突いてトライ。5点差に詰め寄って望みをつなぐ。
その後もラ・ロシェルは気迫を前面に押し出して猛攻を仕掛け、敵陣に攻め込んだが、トゥールーズの集中力も途切れない。迎えたラストプレー、ゴールラインまで35メートルほどの位置でのトゥールーズボールのスクラムでラ・ロシェルのSHカーバーローが鋭くプレッシャーをかけ、ボールを奪いかけたが、トゥールーズFWも懸命に戻ってキープ。最後は自陣ゴール前まで戻されながらもSHデュポンがボールを蹴り出し、熱戦に終止符を打った。
トゥールーズはこれで5度目のハイネケン・チャンピオンズカップ制覇となり、通算優勝回数で単独トップに立った。決勝のスター・オブ・ザ・マッチには5回のボールキャリーで45メートルゲイン、両チーム最多タイの17タックルを決めたトゥールーズFLフランソワ・クロスが選ばれ、試合直後に発表されたヨーロピアン・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー2021は、大会を通して出色のパフォーマンスを見せたSHアントワーヌ・デュポンが文句なしの受賞。初優勝を果たした1996年のチームの一員でもあったウーゴ・モラ監督は、選手と監督の両方で欧州制覇を成し遂げ、成功率100パーセントで1G5PGの17点を挙げ勝利に貢献したSOロマン・ヌタマックは、初優勝時のキャプテンである父、エミール・ヌタマックとともに親子でのビッグタイトル獲得となった。
クラブ史上初のビッグタイトルには届かなかったラ・ロシェルも、持てる力を振り絞っての堂々たる敗戦だった。前半27分でのCTBボティアのレッドカード退場とともに惜しまれるのは、SOウエストの3本のキック(1G2PG)がポストに当たり不成功に終わったこと。それでも最後まで勝利をあきらめず、一人ひとりが役割を遂行して逆転圏内に迫った内容は、十分称賛に値するものだった。驚異的な仕事量でチームを前へと押し進めたFLグレゴリー・アルドリットを筆頭に、苦境に追い込まれながらも闘志を失わず、すべてを出し尽くした選手たちの姿に、クラブへの強い誇りと責任感がにじんだ。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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