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ラグビー コラム 2021年5月10日

【ハイライト動画あり】クボタが歴史創った!50分間を14人でしのぎチーム初の4強到達

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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クボタスピアーズ

クボタの立川理道キャプテンが、ボールを外に蹴り出す。戸田京介レフリーがノーサイドの笛を吹く。満身創痍だったが、全員で拳を突き上げ、抱き合い、歓喜を分かち合った。

トップリーグ2021のプレーオフ準々決勝、5月9日(日)に静岡・エコパスタジアムで行われた「クボタスピアーズ×神戸製鋼コベルコスティーラーズ」。

過去最高順位が6位のクボタだが、今季はリーグ戦で開幕5連勝を記録するなど快進撃。ノックアウト制のトーナメントで、2連覇をめざす18年度王者の神戸製鋼に立ち向かった。

この日は両軍の日本代表候補が全員出場。

クボタからはPR北川賢吾、FLピーター・ラピース・ラブスカフニ、WTBゲラード・ファンデンヒーファーの3選手。

神戸製鋼からはPR中島イシレリ、NO8ナエアタルイ、CTBラファエレティモシー、FB山中亮平の4選手が先発、アタアタ・モエアキオラも途中出場を果たした。

機先を制したのは、序盤で2連続トライを挙げたクボタだ。

前半3分に38歳のNO8バツベイシオネ、同9分に花園大卒のタウモハパイホネティがトライ。どちらもスローテンポの状態からSOバーナード・フォーリーがファーストレシーバーとなり、突破を演出した。

神戸製鋼はディフェンスを揃えて攻撃に備えていたが、「ノミネートの部分でトラブルがあった」(神戸製鋼・SH日和佐篤共同主将)。先制パンチを食らってしまった。

神戸製鋼も前半20分頃にはクボタの連続攻撃を食い止め、さすがの守備力で切り抜ける。しかし同22分には獅子奮迅だったバツベイシオネがジャッカル成功。クボタはPG成功でリードを17点に拡大した。

しかし前半29分にそれは起きた。

神戸製鋼NO8ナエアタに対して、クボタのSOフォーリーが危険なタックル。右肩がダイレクトに相手頭部に強くヒットし、レッドカード。クボタは残りの約50分間を14人で戦うことになった。

するとここから神戸製鋼が猛攻――とはならなかった。クボタのCTB立川キャプテンが語った。

【ハイライト】クボタ vs. 神戸製鋼|トップリーグ 2021 プレーオフ準々決勝

「14人でも上手く戦えました。フォワードが頑張ってくれました。基本的にやることは変わりませんでした。ハードワークする必要があるとはみんな分かっていました」

ここから攻勢に転じたい神戸製鋼だったが、攻撃で精彩を欠いた。

連携ミス、キックミスなどが相次ぎ、クボタの上半身に絡みつくチョークタックルもあり、得意のオフロードパスもなりをひそめた。

モメンタム(勢い)を生み出せないまま時間が過ぎていったが、前半39分にようやく初得点。

ラインアウトから順目にフェーズを重ね、FLトム・フランクリン共同主将の細かいパスから突破が生まれ、サポートしたSOヘイデン・パーカーがトライ(ゴール)。10点差(7-17)に詰め寄って後半へ向かった。

ハーフタイムで、クボタの指揮官であるフラン・ルディケHC(ヘッドコーチ)は手短に要点を伝えたという。

「(14人になったが)大ごとではありませんでした。ボールコントロール、ワークレートの部分だけを伝えて、あとは立川たちがコントロールしてくれました」(クボタ・ルディケHC)

クボタは粘り強くボールを保持した。LOルアン・ボタは愚直にボールを運び、HOマルコム・マークスは力強くゲイン。FLトゥパフィナウもエリア外側で再三突破を見せた。

谷口和洋(クボタ)

この日先発スクラムハーフとして難しいゲームコントロールに挑んだのは谷口和洋。試合2日前までメンバー外だったが、先発予定だった井上大介の体調不良により(新型コロナのPCR検査は陰性)、今シーズン初のスタメンを飾った。

クボタではノンメンバーを「ボルツ」と呼ぶ。ここまでリーグ公式戦ではボルツだった谷口だが、急遽やってきたチャンスに対応し、巧みにボールを運んだ。

「谷口は長いプレシーズンでしっかり準備をして、このチャンスがきました。急遽入った試合でもしっかりパフォーマンスを出していました」(クボタCTB立川キャプテン)

すると、巧みにボールを保持するクボタに対し、神戸製鋼は反則を連発。後半2、4、6分にラック周りで3連続のペナルティ。神戸製鋼の後半のペナルティは「11」を数えた(クボタは後半反則ゼロ)。

クボタは規律だけではなくスクラムでも優勢となり、後半15、18分にスクラムでペナルティを誘発。

後半21分にはラックでのPKから、WTBファンデンヒーファーが右脚一閃。PG加点で3点を奪い、14人でリードを13点(20-7)に広げてしまう。

しかし神戸製鋼もプライドに懸けて反撃を開始。

後半23分、FLフランクリンのノールックパスから、途中出場のアーロン・クルーデンがCTBラファエレの突破を演出。最後はサポートしたSH日和佐がトライを奪い、流れるような連携プレーで6点差(14-20)に迫った。

クボタもFLトゥパフィナウのビッグタックル、途中出場した岡田一平のターンオーバーなど、執念のディフェンスで対抗する。

それでも神戸製鋼は後半30分、途中出場で元東海大主将のモエアキオラが、巧みなグラバーキックを防御裏へ。この日フル出場のWTB山下楽平が身体をうまく差し入れてグラウンディング成功。ゴールキックも決まって21-20となり、ついにこの日初めてのリードを奪った。

ところが神戸製鋼は最後まで反則に苦しんだ。

ゲラード・ファンデンヒーファー(クボタ)

後半32分、神戸製鋼がモールコラプシングの反則。残り時間は約5分。クボタはショットを選択し、キッカーであるWTBファンデンヒーファーにボールが渡った。

WTBファンデンヒーファーは今季、第7節トヨタ自動車戦の後半30、40分に2連続でPGを外し、チームはその後逆転負けを喫した。

しかし21年度の日本代表候補は、信頼に応えた。

「1本目は風が左から流れていました。それ以降、風は止まっていました」(クボタWTBファンデンヒーファー)

軽く蹴り上げたボールはHポールの間を貫き、14人のクボタがついに逆転。2点のリード(23-21)を奪った。

そしてキックオフボールを確保したクボタはボールを徹底的に保持。近場のボールキープでしのぎ、フルタイムのホーンを聞いた。

連覇の夢は叶わなかった神戸製鋼。デーブ・ディロンHCは敗戦後、「精度高く戦い抜くことができませんでした。クボタさんにはおめでとうと伝えたい」と相手を讃えた。

共同キャプテンのSH日和佐は「勝ち続けることの難しさを痛感しています。いつかは負ける時がくる。それが今日になってしまったことは残念です」

「クボタさんの時間の使い方は上手かった。(神戸製鋼は)ペナルティといった部分でゲームをスローにさせてしまう要因を、自分達で作ってしまった」と冷静に振り返った。

一方、チーム史上初の4強入りを成し遂げたクボタ。ルディケHCは「パフォーマンスについてはハッピーです。立川をはじめ、リーダーがチームをひとつにしてくれた。それを80分できたことで勝利することができたと思います」と喜びを語った。

また不屈の精神でハードワークし、最後までチームを牽引したCTB立川主将は「エコパスタジアムに来て頂いたファンの皆さんの応援が、力になりました。厳しい戦いでしたが、良い試合ができました。ここで終わりじゃないので、また良い準備をしてサントリー戦に向かっていきたいです」と胸を張った。

大一番で結束力を見せたクボタ。

J SPORTS 放送情報

次戦はリーグ戦第6節で敗戦(26-33)を喫したサントリーと5月16日(日)、大阪・東大阪市花園ラグビー場で激突する。

新リーグ発足前の「ラスト・トップリーグ」で歴史の創造者となったクボタ。快進撃は一体どこまで続くのか。

文:多羅 正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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