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キヤノンの新旧メンバーが躍動し、2016年度以来の8強入りを掴んだ。
ノックアウト方式の「トップリーグ2021」プレーオフ・トーナメント2回戦は4月25日(日)、晴天の東京・江戸川区陸上競技場で、NTTコミュニケーションズとキヤノンの一戦を行った。
キヤノンは背番号8、9、10に21年度の日本代表候補が並んだ。
チーム5年目に入ったSO田村優キャプテン、テンポを生み出せる同6年目のSH荒井康植、そして今季NTTコミュニケーションズから移籍したNO8アマナキ・レレイ・マフィだ。
4/25 NTTコミュニケーションズ vs. キヤノン
負けたらシーズン終了の大一番で、まず存在感を示したのはトンガ出身の31歳、代表27キャップを誇るNO8マフィだった。
序盤に自陣スクラムでフリーキックを得ると、タップキックでNO8マフィが突進。これを足掛かりとして、宗像サニックスから移籍3年目に入ったCTB南橋直哉が突破。最後は3年目のLOコーバス・ファンダイクが独走して先制トライを決めた。
この日NO8マフィはジャッカルを再三決めるなど攻守に活躍。新任の沢木敬介監督は「アタックでもディフェンスでもナキ(マフィの愛称)の強みが出ている」と評価。
SO田村も「チームにフィットしようと努力している。チームのワンピースとして動いてくれているので助かっている」とチームマンとしての姿勢に感謝していた。
グレイグ・レイドロー
一方のNTTコミュニケーションズは強力スクラムで対抗。前半9分にはヒットから激しかったNTTコミュニケーションズが相手ペナルティを誘発し、SHグレイグ・レイドローが3点を返した。
NTTコミュニケーションズはこの日、チームで21年度日本代表候補に選ばれた2名(SO前田土芽、CTBシェーン・ゲイツ)が揃ってスタメン。
今季スタンドオフに初挑戦しているSO前田は元センターであり、前半17分には接点での強さを発揮してジャッカル成功。ここでふたたびSHレイドローがショットを成功させ、1点差(6-7)に詰め寄った。
【ハイライト】NTTコミュニケーションズ vs. キヤノン|トップリーグ 2021 プレーオフ2回戦
ここでNTTコミュニケーションズの追撃ムードを断ち切ったのは、19年W杯南アフリカ代表だった今春3年目のCTBジェシー・クリエル。
前半23分にはWTBエスピー・マレーのトライをお膳立てし、同41分には瞬時の加速&スワーブで左サイドを突破。前半3トライ目を決めた。
CTBクリエルは試合後に勝因を3つ挙げた。ひとつはディフェンス面における「ノンメンバーの献身」、もうひとつは「『勝つ』マインドセット」、もうひとつは「テンポ」だった。
「相手がついて来られないようなテンポでプレーすることを心掛け、そこが上手くいきました。沢木監督になってから試合よりもハードなトレーニングをしており、練習ではいつも辛い状況に置かれている。そのぶん試合になると楽にプレーができ、いろんなものがよく見え、良い判断ができています」(キヤノン・CTBクリエル)
前半を13点リード(19-6)で折り返したキヤノンは、さらに後半4分にPG加点で22-6とするが、同11分にNTTコミュニケーションズも反撃。
SO前田がスクラムから相手NO8マフィのタックルを受けながらも前進し、懸命にワンハンドのトライ。前半はジャッカルでも魅せた10番がこの日チーム初トライを奪い、ゴール成功でビハインドを9点(13-22)に。
しかし後半15分には「ミスター・サンウルブズ」の一人で、2019年の右膝負傷から復活しているFLエドワード・カークがトライ。
後半26分から出場した「トンガン・ゴジラ」ことホセア・サウマキも勢いをもたらし、実弟であるLOサウマキアマナキのトライなど2トライを追加。43-13で勝利を収めた。
4/25 NTTコミュニケーションズ vs. キヤノン
試合後にはピッチ中央で、キヤノンNO8マフィとNTTコミュニケーションズのFL金正奎共同キャプテンが抱擁。2人はNTTコミュニケーションズの同期(2014年入団)で、共に日本代表で戦った経験もあるバックロー同士。熱い涙を流しながら健闘を称え合った。
試合後、NTTコミュニケーションズ指揮官のヒュー・リースエドワードHC(ヘッドコーチ)が「シャニングアークスはアタッキングチームですが、前半はキヤノンさんに攻撃をさせてもらえず、後半もエラーから相手に得点を許しました」と語った。
一方、8強進出を決めたキヤノンの沢木監督には、選手達が成長を実感している手応えがあった。
「前半はレフリングとの相性が悪くてペースに持っていけませんでしたが、しっかり我慢して(レフリーと)会話をしてゲームをコントロールして良い結果になった。全員が『試合を重ねるたびに成長できている』という感覚で一週間を過ごせていると思います」
キヤノン主将のSO田村は「最初の10、15分くらいは固くなっていたが、あとは自分達のペースで運べた。レフリングにもイライラすることなく、自分達のゲームプランを信じて戦うことができ、チームとして成長した」と振り返った。
勝ち残ったキヤノンは4強入りを目指し、5月8日(土)、埼玉・熊谷ラグビー場で、近鉄を54-7で破ったパナソニックと激突する。
キヤノンSO田村主将は、2週間後の決戦へ向けて早くも闘志を滾らせていた。
「これまで(キヤノンは)強い相手とやるときは最初から負けていた。それだけは嫌です。みんなで良い準備をして、勝負をしに行きます」
これでキヤノンはリーグ戦3連敗からの4連勝。上昇曲線はとこまで達するのか。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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