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勝利に喜ぶ近鉄フィフティーン
2月20日(土)に開幕したジャパンラグビートップリーグ。4月17日(土)18日(日)から20チームによるプレーオフトーナメントが始まり、18日(日)には、東京・秩父宮ラグビー場でレッドカンファレンス8位の宗像サニックスブルースに、トップチャレンジ2位の近鉄ライナーズが挑んだ。
宗像サニックスはリーグ戦は1勝6敗、勝ち点5と振るわずレッドカンファレンス最下位でプレーオフに進んだ。一方トップチャレンジに参戦していた近鉄は、グループAを全勝とするも、順位決定戦の決勝戦で豊田自動織機シャトルズに17-36で敗れ、トップチャレンジ2位でプレーオフトーナメントに進出した。
宗像サニックスはリーグ戦最終戦の東芝ブレイブルーパス戦から、FW(フォワード)3名、BK(バックス)3名の先発を変更したが、試合前にさらにメンバー変更があり、LO(ロック)寺田圭太が欠場し、リザーブに入っていた西井利宏が先発。横山隼がベンチ入りした。
FWはLOキャプテンの福坪龍一郎、2019年ワールドカップ日本代表のFL(フランカー)ジェームス・ムーアが入り、NO8(ナンバーエイト)にはサンウルブズにも在籍したダン・プライアーら先発に名を連ねた。
トップリーグ最年少のトライ記録を持つサニックスSH藤井
BKは若きSH(スクラムハーフ)藤井達哉と、SO(スタンドオフ)はケガ人などの影響でジェイソン・エメリーが務めた。CTB(センター)は元日本代表の小野晃征がケガでメンバー外となったが、WTB(ウィング)には今村雄太と、FB(フルバック)屋宜ベンジャミンレイと経験豊富なベテランが入った。
リザーブには、2015年ワールドカップ日本代表で活躍したCTB/WTBカーン・ヘスケスらが控えた。
近鉄は、FWは豊田自動織機戦から2名を替え、LOはキャプテンのマイケル・ストーバーク、FLにはツポウ テビタらが務めた。
トップリーグデビューとなった近鉄CTBフィフィタ
BKのメンバーは変わらず、SHウィル・ゲニアとSOクウェイド・クーパーの元ワラビーズの強力ハーフ団、CTB(センター)には昨季の大学選手権王者の天理大学を卒業したばかりの日本代表候補シオサイア・フィフィタ、ベテランFB竹田宜純が務める。ベンチにはサンウルブズで活躍したWTB/FBセミシ・マシレワらがメンバー入りした。
宗像サニックスがトップリーグのプライドを見せ、パス&ランニングラグビーで近鉄を圧倒するか。世界レベルのハーフ団や大型ルーキーを擁する近鉄が勝利するか。注目の一戦は風がやや強い快晴の東京・秩父宮ラグビー場で、4285人の観客が見守る中、12:00にキックオフされた。
試合は開始早々、近鉄が攻め込みチャンスを得たが、得点を奪うことができなかった。すると11分、宗像サニックスが敵陣に入り、ラインアウトからチャンスを得て、LOジェームス・ムーアがラックから抜けだし、HO(フッカー)王鏡聞が中央にトライ。SOエメリーがゴールを決めて7点を先制する。
近鉄も再び敵陣に攻め込み、17分、スクラムを起点にボールを継続。最後は右に展開し、FB竹田のオフロードパスがFLツポウに通り、そのままトライを挙げて5-7。
突破を試みる近鉄SOクーパー
さらに21分、モールを起点に攻め込み、最後はSOクーパーがパスダミーから中央にトライを挙げて逆転。28分にはモールを押し込んで、NO8ロロ・ファカオレシアが押さえて近鉄が17-7とリードする。
36分、宗像サニックスが敵陣で攻撃を継続し、最後は近場を突いたPR(プロップ)佐々木駿が押さえてトライ。SOエメリーのゴールも決まって、14-17と3点差に追い上げてハーフタイムを迎えた。
後半4分、試合が動く。近鉄のNO8ファカオレシアがラックで相手を抱えて頭から落としてしまう危険なプレーで、レッドカードで一発退場してしまう。近鉄は残り35分、数的不利な状況で戦わざるを得ない状況となってしまう。
それでも「チームでハードワークして、もう1人の仕事を14人でカバーしようと戦った」と試合後、キャプテンLOストーバーグが話したように、近鉄は数的不利を感じさせないプレーぶりを見せる。
12分にはラインアウトを起点にSHゲニア、LOストーバーグとつないでキャプテン自らがトライを挙げて24-14とリードを広げた。
後半、サニックスはFL鶴岡の1トライのみ
近鉄に疲れが見えてきた後半30分、宗像サニックスはゴール前のスクラムから途中出場のFL鶴岡怜志トライが力強いトライを挙げて、21-24と3点差に追い上げる。しかし、ゲームを決めたのは近鉄SHゲニアだった。
トップリーグ プレーオフ1回戦
【ハイライト】宗像サニックス vs. 近鉄
左サイド奥にキックを蹴り、そのボールがバウンド。キックチェイスをしていたWTB片岡涼亮が拾い上げ、そのままトライを決めて、再び31-21と10点差にリードを広げた。
SHゲニアは「キックが乱れてもキックチェイスが良ければ、いいキックになる。片岡選手がそうしてくれたので、トライになったいいキックになった」と味方を称えた。
キックでゲームコントロールした近鉄SHゲニア
その後は、14人の近鉄が宗像サニックスに得点を与えず、そのまま31-21で勝利し、ノーサイドを迎えた。
トップリーグチームとして唯一、1回戦での敗戦となってしまった宗像サニックスのコーリー・ブラウンHC(ヘッドコーチ)は、「チームとしては難しい1週間でしたが、準備はしっかりとできていました」。
「試合の中でもクイックパスなどを使い、いいラグビーができていました。スピードあるアタックと、相手にしっかりプレッシャーをかけることはできましたが、自分たちのミスから失点を許してしまった」と肩を落とした。
それでも、「今日出場した23人でも、ケガにより通常ではないポジションをカバーしなければならない状況だった。そんな中でも23人はいい仕事してくれたし、試合に向けいい準備もしてくれた。本当によくやってくれた」と選手たちを労った。
サニックスはトップリーグの意地を見せられなかった
LO福坪キャプテンも「相手のキックがよかった。修正としてはポジショニングでしたが、そこまでの準備が足りなかった」と振り返った。そしてこの1年を振り返りつつ「昨年の5月からプレシーズンをはじめて、約1年間、ラグビー漬けの生活を送ることができました」。
「最後はスタッフの皆さんに感謝を伝えました。これからも宗像サニックスは変わらず、夢があるチームであり続けると思いますので、来シーズン以降も応援よろしくお願いします」と話した。
トップチャレンジチームとして、唯一のベスト16入りを果たした近鉄の有水剛志HCは、「今日のゲームに勝って、(目標の)トップ8にチャレンジする結果を残すことができて嬉しく思う」と喜んだ。
そして、「(次は)ホームの花園でチャンピオンチームのパナソニックと戦う。我々のスタイルがどこまで通用するか、いい準備をしてパナソニックさんに臨みたい」と気を引き締めていた。
モールを押し込む近鉄FW陣
キャプテンのLOストーバーグは、「14人でプレーする時間もありましたし、そのチャレンジを乗り越えて、トップ8へのチャレンジに向かうことができた。来週の試合が楽しみです。強いパナソニックを倒して目標を達成したい」と意気込んだ。
近鉄は来週4月25日(日)の2回戦で、地元の大阪・東花園の花園ラグビー場で、ホワイトカンファレンスにおいて無敗で1位だったパナソニック ワイルドナイツに挑む。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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