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尾ザキ(山に竒)達洋(清水建設)
仕事も100%。ラグビーも100%。
そんなチーム風土を持つ清水建設が、トップリーグチーム相手に一時15点のリードを奪った。
「トップリーグ(TL)2021」プレーオフ1回戦。4月18日(日)は、たけびしスタジアム京都で、トップチャレンジリーグ4位通過の清水建設が、1勝5敗でホワイトカンファレンス7位の日野にチャレンジした。
1976年発足の清水建設は創部10周年から有望な大卒新人が加入し始め、01年のクラブチーム制度導入を経て、17年には近鉄から高忠伸らトップリーグ経験者も加入。
着実に成長し、今季はトップチャレンジリーグ(TCL)で4強入りを果たすなど躍進。そして18日、日本最高峰TLのプレーオフに、参加20チームで唯一TL経験がないクラブとして参戦した。
清水建設の平日練習は基本的に週3日で、社員選手は勤務後に神奈川県横浜市の荏田グラウンドに集まる。練習開始は夜7時30分からで、就寝は当然夜更けになる。翌朝早くから現場に向かう社員選手もいるという。
怪我のケアなども難しい環境だが、クラブチーム制度を利用して返り咲きに懸ける男達など、チームには純度の高いラグビー熱がある。
日野戦に先発した元クボタ主将のHO立川直道は、現在もクボタの社員。フルタイムで働きながら、この日の先発を掴んでいる。同じく先発のPR 佐藤勇人は元NTTコミュニケーションズ、WTB森谷直貴は元キヤノンだ。
そんな生粋のラガーマンに、日野戦に先発した元サンウルブズのSOガース・エイプリル、FBコンラッド・バンワイクといった海外出身の好選手が加わる。さらにこの日は、大卒新人のFL高橋広大が先発を掴んだ。
FL高橋は桐蔭学園-明大で世代トップレベルを歩んできた。チーム合流からわずか数週間で初先発を掴んだ猛タックラーだ。
またリザーブには20年度に加入した京都大学出身の25歳、小川拓朗がメンバー入り。後半36分から途中出場してスクラムのサイドにつき、学生時代を過ごした京都で記念すべきトップリーグデビューを果たした。
【ハイライト】清水建設 vs. 日野|トップリーグ 2021 プレーオフ1回戦
一方の日野は、FL堀江恭佑共同キャプテンを筆頭に、21年度日本代表候補のリアキ・モリ、そしてディネスバラン・クリシュナンという大型ロックコンビ、39歳にして迫力満点のNO8ニリ・ラトゥなど、強力なFWを先発に並べた。
ハーフ団はニュージーランド代表キャップを保持するSHオーガスティン・プル共同主将、そして元サンウルブズのSOクリップスヘイデン。
両ウイングは、明和県央高(群馬)時代はフランカーだった日大出身の竹澤正祥、そして関東学院大出身のルーキー、184cmの大型WTB福士萌起といった布陣となった。
「前半はバックスでトライを獲る、という僕らがやりたいラグビーができました」(清水建設・WTB尾ザキ(山に竒)キャプテン)
前半は、ディシプリン(規律)やキックの精度が明暗を分けた。
日野はファーストプレーで、より厳格になった印象のキックチェイスのオフサイドを取られてしまい、まずは清水建設のFBバンワイクがPG成功で3点を先取。
日野は敵陣に入るがノックオン、ダイレクトタッチなどミスが続いて陣取り合戦で劣勢に。一方の清水建設が少ないチャンスをものにする。
清水建設は前半18分、敵陣左のスクラムからSOエイプリルが右奥へクロスフィールドキック。WTB尾ザキ(山に竒)が捕球して鮮やかに先制トライを決め、ゴール成功で10-0とした。
さらに前半23分にはキヤノンでプレーしたWTB森谷のロングキックで敵陣に入ると、相手反則からの左展開で、そのWTB森谷がチーム2トライ目。怪我の影響もありキヤノンを退団した森谷が新天地で輝き、リードはついに15点となった。
しかし日野もすぐに反転攻勢。
キックオフ・ボールを再獲得すると、この日はフルバックを託された近大卒の川井太貴が数的優位を作り、ワンハンドでWTB竹澤へオフロードパス。初得点を奪った。
日野はボールを保持すれば得点できる確信を得たのではないか。前半33分には敵陣での移動攻撃から、WTB竹澤がチーム2トライ目を挙げた。
1点差(14-15)に詰めた日野だが、清水建設は前半38分、キックチェイス時の反対エリアを再三攻略。FBバンワイクの突破からサポートしたSOエイプリルが後半38分、左隅にフィニッシュし、清水建設が6点リード(20-14)で後半へ。番狂わせのムードが高まった。
竹澤正祥(日野)
ただ後半は日野のワンサイドゲーム。TLチームの地力を見せて6連続トライを奪った。
「後半は細かい部分の精度を上げようと話をしました」とは、前半負傷しながら約70分間プレーしたSHプル共同主将だ。
「ボールキャリー、ブレイクダウンのクリーンもハードにしよう、と。また前半はキックの正確性がなかったので、そこも改善しようと話しました」
日野は後半2分のSOクリップスのトライで1点差(19-20)に詰めると、同7、12分にWTB竹澤が連続トライ。
その後もFWのラインアウトモールなどを起点に2連続トライを奪い、最後はLOモリがNO8ラトゥのサポートを受けて後半6トライ目。
FW勝負で確実にゲインしながら後半に6連続トライを奪い、最終的には28点差(48-20)で快勝した。
前半をリードしながら後半失速した清水建設。
大隈隆明監督は「前半は良いラグビーができましたが、後半は日野さんの激しいプレッシャーでミスが増えてしまい得点ができず、悔しい結果になりました」。しかし一方で、近鉄でもプレーした指揮官は「チームにとって良い経験になりました」と手応えも口にした。
またこの日、十八番のタックルで会場を湧かせていた清水建設のFL高橋は「清水建設に入って初めての試合。ミスもあり足りない部分があったので、成長して来シーズンを迎えたい」と今後の抱負を語った。
そして勝利した日野の箕内拓郎HC(ヘッドコーチ)は「後半のパフォーマンスには満足していますが、前半は不十分でした。ここは修正したいところ」と語り、次戦のトヨタ自動車戦までの改善を期していた。
ノックアウト制の1回戦に勝利した日野の次戦は4月25日(日)。東京・秩父宮ラグビー場で、レッドカンファレンス2位だったトヨタ自動車と対戦する。
いよいよトップリーグの上位陣も登場するプレーオフ2回戦。どんな激闘が繰り広げられるのか、期待と緊張は増すばかりだ。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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