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【ハイライト動画あり】雨の中で輝き放ったCTBマイケル・リトル。三菱重工相模原がラスト5分の逆転トライでコカ・コーラを破る。
ラグビーレポート by 直江 光信三菱重工相模原 vs. コカ・コーラ
降り続く雨。たっぷりと水を含んだ芝。レッドカンファレンス7位の三菱重工相模原ダイナボアーズがこれで4週目の連戦になるのに対し、トップチャレンジリーグ3位のコカ・コーラレッドスパークスは中2週と、入念な準備を経てこの一戦に臨んでいる。
もとより2季前の2018-2019シーズンはコカ・コーラがトップリーグ所属で三菱重工相模原はトップチャレンジリーグ所属と、今とは逆の立場だった。挑む側のコカ・コーラが、スリッピーなコンディションを生かして狙い通りの戦いに持ち込めば、もつれる可能性は十分ある――。試合はまさにそんな見立ての通りに進んだ。
先に主導権を握ったのは三菱重工相模原だった。6分、相手の反則に乗じてゴール前でマイボールラインアウトを得ると、あっさりモールを押し切ってHO安江祥光がトライ。12分にも敵陣22メートルライン付近からモールでぐいぐいと前進し、密集脇を突いたFLジャクソン・ヘモポがゴールラインを超える。
ここまでは完全な三菱ペース。FW戦、特にモールでの力関係を見ると、そのまま一気に突き放す展開すら想像されるほどだった。しかし三菱の不用意な反則からコカ・コーラが攻撃機会をつかみ、19分にジョセフ・トゥペがラックサイドをねじ込んでトライを返すと、様相は一変する。
滑るボールにイージーエラーを重ね、みずからストレスを溜めていく三菱。対するコカ・コーラはチャレンジャーらしく準備したゲームプランをひたむきに遂行し、時間が進むにつれて攻守に勢いを増していく。
41分にコカ・コーラのSOベン・ルーカスが右中間約45メートルのPGを決め、14-10で迎えた後半。開始直後からコカ・コーラが気迫を前面に押し出した連続攻撃でたたみかけ、6分にCTBトゥクフカトネが防御ラインを突き抜けて右中間に飛び込む。SOルーカスのコンバージョンも決まり、17-14とこの日初めてコカ・コーラがリードを奪うと、三菱重工相模原の焦りはより鮮明になった。
【ハイライト】三菱重工相模原 vs. コカ・コーラ|トップリーグ 2021 プレーオフ1回戦
何度も敵陣ゴールラインに迫りながら、仕留めきれない場面が続く三菱。テンポ良くボールを動かす本来のスタイルを雨に封じられ、プレーオプションがFW周辺のパワープレーや少ないパス数でのクラッシュに限られるため、守るコカ・コーラにすれば的を絞りやすい。渾身のタックルで三菱のエラーを誘発するたびに、赤いジャージーが活力を帯びていくようだった。
そして迎えたラスト10分の勝負どころ。わずか3点のビハインドながら決定的な突破口が見つからず、ジリジリと追い込まれていく三菱。そんなプレッシャーがかかる状況でチームを救ったのが、ダイナボアーズが誇る切り札、CTBマイケル・リトルだった。
73分、自陣22メートルライン付近のラックで球に絡んでターンオーバー。エリア獲得のキックから相手が蹴り返して転がるボールを片手ですくい上げると、襲いかかるタックラーを柔らかくいなして攻撃の起点を作る。このプレーで体を痛めしばらくピッチに倒れていたものの、一連の流れでチームが敵陣深くへ攻め込むや、気力をふりしぼり左タッチライン際に出現。SOルーカスとの1対1を強靭な粘り腰でかわしてコーナーに飛び込み、待望の逆転トライを挙げた。
残り時間は3分。スコアは19-17。コカ・コーラにも再逆転の可能性は残っていたものの、続くキックオフで痛恨のミスが出て、自陣22メートルライン内まで押し込まれてしまう。それでも懸命に攻めたコカ・コーラだったが、80分を告げるホーンが鳴らされた直後にハンドリングエラーでボールロスト。こぼれ球を拾った三菱CTBリトルがまたもやインゴールに飛び込み、勝負を決めた。
土壇場で底力を発揮し、2回戦への出場権を手にした三菱重工相模原。様々な面で難しい戦いとなる中、土俵際で踏みとどまって勝利をものにできたのは、過去2シーズンをトップリーグで戦ってきた経験があったからだろう。ゲームキャプテンを務めたNO8ヘイデン・ベッドウェルカーティスは試合後、「80分間あきらめず、ファイトし続けたチームを誇りに思う」と語り、獅子奮迅のパフォーマンスを見せたCTBリトルは、「チームのストラクチャーを信じてプレーした。チャンスは必ず来ると思っていたので、自分のやるべきこと、チームで決めていたことに徹するだけだった」と終盤のシーンを振り返った。
焦点を絞り込んだ戦いで相手の持ち味を封じ、勝利に肉薄したコカ・コーラの奮闘も見事だった。「トップリーグチームに勝つという目標を掲げていたので悔しい結果。ただ、課題だったディフェンスの粘りでは成長を感じた」とLO西村龍馬主将。2シーズン前に5年ぶりに現場復帰した向井昭吾監督のもと、地道に重ねてきた鍛錬の成果を随所に披露し、来季より発足する新リーグに期待を抱かせた。
直江 光信
1975年生まれ、熊本県出身。県立熊本高校を経て、早稲田大学商学部卒業。熊本高でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。早大時代はGWラグビークラブ所属。現役時代のポジションはCTB。著書に『早稲田ラグビー 進化への闘争』(講談社)。ラグビーを中心にフリーランスの記者として長く活動し、2024年2月からラグビーマガジンの編集長。
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