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トップリーグ創立メンバーであり、一度も降格していない6チームの一員として、絶対に負けられない戦いだった。しかし、そんなNECグリーンロケッツも途中で打ち切られた昨年、今年と一勝もあげておらず、トップチャレンジリーグを全勝で駆け抜けた豊田自動織機シャトルズは危機感を覚える相手だった。トップリーグ2021プレーオフトーナメント1回戦、注目の戦いは4月17日(土)、雨の降りしきる東大阪市花園ラグビー場で行われた。
午後12時、NECのSOアレックス・グッドのキックオフで試合は始まった。雨の中、キック戦略が重要度を増す試合で両チームのSO(10番)に注目が集まった。グッドと豊田自動織機SOフレディー・バーンズは同時代にイングランド代表でプレーした。キャップ数はグッドが「21」で、バーンズの「5」を上回るが、2012年12月1日、イングランド代表がニュージーランド代表を破った歴史的な試合で、バーンズはSOオーウェン・ファレルの交代出場でテストマッチデビュー。その試合でFBを務めていたのがアレックス・グッドだった。
アレックス・グッド(NECグリーンロケッツ)
序盤はグッドの正確なキックがゲームを支配する。前半8分、NECのNO8ジャック・ラムがジャッカルで反則を誘い、グッドがPGを決めて先制。その後、グッドが不規則な回転のハイパントを蹴り上げ、豊田自動織機のキャッチミスを誘ってチャンスをつかむ。14分、ゴール前のスクラムからの攻撃でCTBマリティノ・ネマニがトライ。グッドのゴールも決まって10-0とリードした。
マリティノ・ネマニ(NECグリーンロケッツ)
その数分後、豊田自動織機のラインアウトでNECがジャンパーを支えるリフターの選手を倒したという反則を犯し、ここから流れは豊田自動織機へ傾いていく。前半25分、今度はバーンズが正確なハイパントをNEC陣深くに蹴り上げる。ここにFB大道勇喜が走り込んでキャッチし、連続攻撃からWTBリサラ シオシファがタックルをかいくぐってトライ。バーンズのゴールも決まって、10-7とする。
後半、先にトライしたのは豊田自動織機だった。3分、NECゴールライン手前5mのラインアウトからモールを押し込み、NO8タレニ・セウがトライ。バーンズが右隅の難しいゴールを決めて、10-14と逆転する。しかし、その直後のキックオフでNECのプレッシャーにボールをキープできず、今度はNECがラインアウトからモールを押し込み、HO佐藤耀がトライする。グッドのゴールは外れて、15-14。10分、豊田自動織機FL小原稜生がゴールラインに手を伸ばすも、ボールは20cmほど届かず。しかし、16分のチャンスは逃さなかった。NECゴールに迫ったスクラムでプレッシャーをかけ、2回連続でPKからスクラムを選択し、最後はリサラ、CTB松本仁志をダミーにして、バーンズから左端にいたFB大道にパスが渡り、左コーナーにトライ。この難しいゴールもバーンズが成功させ、15―21とリードする。その後、豊田自動織機LOトコキオ ソシセニが危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)になったが、NECの猛攻を粘り強くディフェンス。30分にはモールで約30m押し込んで反則を誘い、バーンズが約40m以上の距離があるPGを決めて、15-24とする。
【ハイライト】豊田自動織機 vs. NEC|トップリーグ 2021 プレーオフ1回戦
フレディー・バーンズ(豊田自動織機シャトルズ)
スクラム、モールで劣勢のNECに9点差は重いかと思われたが、選手たちの気持ちは折れなかった。「どれだけハードワークできるか、相手よりもどれだけ勝ちへの意欲で上回れるか」(中嶋大希・共同キャプテン)。強い意志で臨んだ戦いを捨てるわけにはいかない。33分、CTBベンハード・ヤンセヴァンレンスバーグがトライして、22-24とすると、相手陣で攻め続け、40分、豊田自動織機の反則を誘い、グッドがPGを決めて、25-24と逆転に成功した。「時間をかけろ、という声もあったが、自分のテンポで3点を入れることだけに集中した」(グッド)。PGの制限時間である1分を目一杯使えば、豊田自動織機の反撃の時間を削ることができたのだが、グッドはそうせず、NECは最後の猛反撃を受けて立った。
最後は、バーンズが約50mの長距離からドロップゴールを狙ったが、ここにNECの選手達が猛然とプレッシャーをかけ、キックチャージの手に当たったボールをグッドが確保してタッチラインの外まで走り、ノーサイドとなった。「トップリーグのチームとして絶対に勝たなくてはいけないゲームでした。豊田自動織機は本当に良いチームです。トップリーグのチームと同等の圧力を感じました。苦しい試合でしたが、選手と応援し続けてくれたサポーターの皆さんに感謝したいです」。浅野良太ヘッドコーチは、昨季就任以来トップリーグでの初勝利に感慨深げだった。
豊田自動織機の徳野洋一ヘッドコーチは、「80分でみれば、うまくゲームをコントロールできました。2年前にトップチャレンジに降格し、再昇格しようとトップリーグのスタンダードを示してやってきました。プロセスは間違っていなかったと思います」と語った。雨の中、タイトなゲームになったが、豊田自動織機はトップチャレンジ1位の実力を示し、NECもトップリーグの意地を見せた。両者の熱い気持ちが胸を打つ戦いだった。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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