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ラグビー コラム 2021年4月12日

【ハイライト動画あり】最終節を飾るにふさわしい激闘は、ラストプレーの劇的な逆転トライで神戸製鋼がNTTドコモに勝利。

ラグビーレポート by 直江 光信
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土壇場で試合をひっくり返した神戸製鋼コベルコスティーラーズの集中力と底力は見事だった。そしてその上で、この試合でより鮮烈なインパクトを残したのはNTTドコモレッドハリケーンズだった。気迫みなぎるその攻守は、80分間を通して際立っていた。

アタックもディフェンスも常にアグレッシブ。攻め込まれても最後まで戻って懸命に食らいつき、体を当てる局面では貪欲に一歩でも前に出る。NTTドコモはキックオフ直後から自分たちのすべきことを緩みなく遂行した。

開始1分、NTTドコモが激しいタックルで相手の反則を誘い、SO川向瑛のPGで先制。神戸製鋼も9分に敵陣ゴール前でのペナルティからSOヘイデン・パーカーのキックパスに反応したWTBアンダーソンフレイザーがトライを挙げるが、13分、NTTドコモはSHのTJ・ペレナラがスクラムサイドを突破して右中間に飛び込み、逆転に成功する。

ベン・スミス(神戸製鋼)

圧巻だったのは20分以降のディフェンスの場面だ。21分と24分にCTBベン・スミス、28分にはLOブロディ・レタリックと神戸製鋼が3度インゴールにボールを持ち込むも、NTTドコモは驚異的な粘りでグラウンディングを許さずトライを阻止。30分にスクラムのコラプシングで神戸製鋼がようやくペナルティトライを奪取したものの、戦う姿勢を前面に押し出して簡単には得点を与えなかったNTTドコモの奮闘が、試合の流れを決定づけた。

さらに勢いに乗るNTTドコモは34分、テンポよくボールを動かして神戸ディフェンスを揺さぶり、SO川向の防御裏への絶妙なキックをWTBマピンピが鮮やかな加速でインゴールに押さえる。これで13-14。まさに一進一退の展開でハーフタイムを迎えた。

後半に入っても緊迫した攻防は続く。わずかでも集中力を切らせばたたみかけられるような緊張感の中、スコアが動いたのは19分だった。交代出場のNTTドコモSOマーティ・バンクスが50メートル近いロングPGを決め、16-14と逆転。そしてここから、ゲームはクライマックスに向け目まぐるしく展開していく。

【ハイライト】NTTドコモ vs. 神戸製鋼|トップリーグ 2021 第7節

アーロン・クルーデン(神戸製鋼)

直後のキックオフでNTTドコモにエラーが出るや神戸製鋼は一気に攻め立て、この日NO8に入ったグラント・ハッティングが長い手を伸ばしてトライを挙げ逆転。一方NTTドコモも23分に巧みなラインアタックからFBトム・マーシャルがゴールラインを超え、ふたたび先行する。28分にはSOバンクスがまたも長いPGを通し、26-19に。しかし神戸製鋼は30分、辛抱強く攻撃を継続してプレッシャーをかけ続け、交代出場のSOアーロン・クルーデンのゴロパントからFB山中亮平がトライ。ゴールも決まって同点に追いつく。

それでもNTTドコモの闘志は衰えない。力を振り絞ったアタックでペナルティを獲得し、34分にSOバンクスがPGを成功。29-26とすると、残り2分を切ったところで神戸製鋼のエラーからボールを確保し、敵陣でキープに入る。

これで決まりか。違った。79分19秒、ラックでオーバーに入った選手が倒れ込みを取られ、神戸製鋼が敵陣でマイボールラインアウトのチャンスをつかむ。

ホーンが鳴った後の、文字通り伸るか反るかの最終局面。神戸製鋼はBKまで加わったモールでペナルティを得ると、ふたたびタッチに蹴り出してFW勝負を挑む。そして82分45秒、モール脇を判断よく突いたHO松岡賢太がインゴールにダイブ。劇的な幕切れで、神戸製鋼が逆転勝利を収めた。

リーグ戦の最終節を飾るにふさわしい熱闘となった、2018シーズンの王者・神戸製鋼と今季旋風を巻き起こしたNTTドコモの激突。思い通りの展開に持ち込めない中で最後の最後に意地を見せた神戸製鋼はさすがだった。そして持てる力をすべて出し尽くし、白星に肉薄したNTTドコモの奮闘もまた、立派だった。

昨年の同カードは97-0で神戸製鋼が勝利。1年後、スコアはわずか2点にまで縮まった。NTTドコモのヨハン・アッカーマンヘッドコーチ、ゲームキャプテンを務めたSHペレナラはいずれも「選手たちをとても誇りに思う」と語り、昨年のゲームにも出場していたSOバンクスは、「勝てると思ったし、負けたのは悔しいけれど、試合が終わった瞬間、こんなにもチームが変わったことを実感して、涙が出そうだった」と感無量の表情を浮かべた。

文:直江 光信

直江 光信

スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

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