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ラ・ロシェル(フランス) vs. セール・シャークス(イングランド)
マンチェスター郊外に拠点を置くイングランド国内1部「プレミアシップ」のセール・シャークスは、国際色豊かだ。
今季よりディレクター・オブ・ラグビーに就任したチームOBのアレックス・サンダーソンは、就任当初、多様性のあるチーム編成を目の当たりにして「少し苦労するかもしれない」と感じたという。
「このチームに特定のアイデア、概念を採り入れることは少し苦労するかもしれないと思いました。文化や思考プロセスの共通性、ゲームにおける精神的側面に関してです」
欧州最強クラブの称号を争う「ハイネケン・チャンピオンズカップ」で、セール・シャークスのプレーオフ1回戦スカーレッツ戦(ウェールズ)の先発15人中、イングランドの選手はわずか6人だった。
半数以上が国外出身であり、残りは南アフリカ(6人)、スコットランド(1人)、ウェールズ(1人)、アメリカ(1人)だった。
しかし、そんな多様性はプラスの力に転化されているようだ。
チームを統率する立場のサンダーソンは、「チームの多様性をより良い方向に成長させようとする彼らのオープンマインドは驚き」と語っており、その言葉を証明するように、ウェールズ選手が先発半数以上を占めるスカーレッツ戦は、57-14で大勝した。
57得点は今大会の最多。ここまで開幕2連敗で、コロナ禍によるフォーマット再編でプレーオフにようやく滑り込んだ格好のセール・シャークスだったが、快勝は何よりの自信になったろう。
大きな特長のひとつは、南アフリカの一流プレイヤーが多数所属している点だ。
スカーレッツ戦で先制トライを奪ったHOアッカー・ファンデルメルヴァは、フッカーとしては異次元のスピードが武器。ライオンズ時代は圧倒的なマルコム・マークス(現クボタ)の後塵を拝していたが、セール・シャークスでその実力を存分に発揮している。
そして南アフリカ最強の双子FWであるデュプレッシー兄弟。スカーレッツ戦にもFLジャン・ルック、NO8ダニエルがそろって先発した。
また19年W杯南アフリカ代表のスターであるSHファフ・デクラークは、強烈なディフェンダーであり、多様なテンポを生み出せるゲームコントローラーだ。
そのデクラークとライオンズ(南アフリカ)でチームメイトだったCTBローアン・ヤンセ・ファンレンズバーグも強烈なフィジカルを持つ、一流の南アフリカ代表キャップ保持者だ。
こうした南アフリカ代表のスター選手が脇を固め、爽やかなルックスもあり人気が高いFLトム・カリー、昨年9月のアキレス腱損傷で離脱中のCTBマヌ・トゥイランギら、イングランドの選手たちが並んでいる。
一方、大西洋に面するフランス西部のラ・ロシェル。
4月10日(土)、本拠地スタッド・マルセル・デフランドレで迎え撃ち、負ければ敗退のトーナメントを戦う。
セール・シャークスとの大会対戦成績は2勝1敗で、開幕2連勝でプレーオフ通過順位も4位と高い。プレーオフ1回戦まで2連敗だったセール・シャークスとは好対照だ。
そんなラ・ロシェルも相手同様に多国籍だ。
セール・シャークスは先発15人が5か国の選手で構成されていたが、プレーオフ1回戦のラ・ロシェルは、さらに多い6か国だった。
フランスが6人、ニュージーランドが3人、南アフリカが3人、そしてオーストラリア、アルゼンチン、フィジーが各1人ずつ。
フランス出身者を中心としながら、フィジーを含めた南半球の強豪5か国の出身者で先発を固めている。
27-16でしぶとく勝利したプレーオフ1回戦のグロスター戦(イングランド)では、南半球らしいスピーディーな速攻も見られた。
ハイネケンカップの楽しみのひとつは、南半球最高峰リーグ「スーパーラグビー」から北半球に移った選手のいまを目撃できることだろう。
ラ・ロシェルのハーフ団は、チーフス(NZ)から渡仏した大型SHタウェラ・カーバーロと、ブルーズやハリケーンズ(共にNZ)でプレーしたSOイハイア・ウエストだ。
グロスター戦で8番を背負ったのは、ハリケーンズで100キャップを達成しているヴィクター・ヴィト。ロックは17年までワラターズ(豪州)でプレーした203cmのウィル・スケルトン。スーパーラグビーに馴染みのあるファンにとっては楽しみなメンバーだろう。
セール・シャークスは攻撃力が高い。計376キャリーは今大会2位。ブレイクダウンを連取し、SHデクラークのパスワークなどから自慢の攻撃力を発揮したいところだ。
一方のラ・ロシェルは守備力が高く、SHカーバーロ、CTBレヴァニ・ボティアなどジャッカルの得意な選手がバックスにも揃う。
大会第1節は本拠地でバース(イングランド)を28-0で完封した。ブレイクダウンの攻防はキーになりそうだ。
注目の「ラ・ロシェル×セール・シャークス」は4月10日(土)午後10:55からJ SPORTS 1で生放送、J SPORTSオンデマンドでLIVE配信される。
多様性を武器にする2チームが激突する、ベスト8の好カード。4強へ名乗りを上げるのはどちらか。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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