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ラグビー コラム 2021年4月1日

ラグビー欧州最強クラブ決定戦、ハイネケン・チャンピオンズカップが3か月半ぶりにノックアウト戦で再開。グロスター×ラ・ロシェル戦プレビュー。

ラグビーレポート by 直江 光信
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グロスター(イングランド)vs. ラ・ロシェル(フランス)

フランスのTOP14、イングランドのプレミアシップ、そしてアイルランド、スコットランド、ウエールズ、イタリアの4か国によるPRO14という欧州ラグビー強豪国のリーグ戦の上位チームが集結し、ヨーロッパ最強クラブの座を争う『ハイネケン・チャンピオンズカップ』。今季は24チームがプールA、プールBの2組に分かれて各チーム4試合ずつを戦い、その後プレーオフトーナメントで王者を決定する予定だったが、新型コロナウイルスの影響で1月の第3、4節が中止となり、第2節を終えた時点での各プールの上位8チームずつがノックアウトステージに進むこととなった。

ノックアウトステージの組み合わせ抽選は3月9日に行われ、準々決勝までのカードが決まった。なお、4月2日~4日に開催される1回戦(ラウンド・オブ・16)は同一リーグのチーム同士の対戦を避ける形で実施され、準々決勝は当初のホーム&アウェイ方式から一発勝負のフォーマットへと変更して、4月9日~11日に行われる。ここでは、4月2日(金)20時(日本時間3日午前4時)キックオフのグロスター(イングランド)対ラ・ロシェル(フランス)の一戦を展望してみたい。

グロスターはラウンド1でリヨン(フランス)に10-55と完敗したものの、翌週のラウンド2でアルスター(アイルランド)に38-34で競り勝ち、プールB8位でノックアウトステージに滑り込んだ。所属するイングランドのプレミアシップでは現在4勝11敗で12チーム中11位と苦しんでいるが、シックスネーションズで目を見張る活躍を見せたジョニー・メイ(イングランド代表、今季より加入)、ルイス・リースザミット(ウエールズ代表)の両WTBが復帰した3月26日のラウンド15では、昨季のハイネケン・チャンピオンズカップ王者のエクセター・チーフスに34-18で勝利し、復調の兆しを見せている。

プレミアシップの中位以降が定位置だったグロスターにとって大きな転換点となったのは、2017年の後半にヨハン・アッカーマンがヘッドコーチ(HC)に就任したことだ。今季トップリーグのNTTドコモレッドハリケーンズでも卓越した手腕を発揮している名将は、キックとFW戦主体の保守的な戦い方から脱却できず低迷していたチームにアタッキングラグビーのエッセンスを浸透させ、2年目の2018-2019シーズンにプレミアシップで8季ぶりにトップ4入りを果たすなど躍進に導いた。かつてレスター・タイガースやロンドンアイリッシュでLOとして活躍したジョージ・スキヴィントンが任を引き継いだ今季はここまで思うように白星を重ねられていないものの、イングランド代表として2019年ラグビーワールドカップにも出場したSHウィリー・ヘインズや、マーク・アトキンソンとビリー・トゥエルブトゥリーズのCTB陣など、アッカーマンHC時代を知る中軸選手は健在。さらにメイ、リースザミットの両WTBにアルゼンチン代表のFBサンティアゴ・カレーラスらを加えたBK陣は強力な布陣だ。

対するラ・ロシェルは、アウェーでのエディンバラ(スコットランド)との初戦を13-8で制し、バース(イングランド)との2戦目が中止(バースの前節の対戦相手に新型コロナウイルス感染者が確認され、選手が濃厚接触者と認定されたため、0-28でバースの不戦敗扱い)となったことで、2勝0敗のプールA4位でノックアウトステージに進んだ。フランス・トップ14では現在14勝6敗の2位につけており、3月27日の第20節はアウェーでボルドーに26-11と勝利。3か月半ぶりとなるハイネケン・チャンピオンズカップにも、自信を持って臨んでくるだろう。

チームを率いるのは、アイルランド代表のSOとして128キャップを獲得したローナン・オガーラHC。2013年に現役を引退後、ラシン92(フランス)やクルセイダーズ(ニュージーランド)でコーチを務め、2019年よりラ・ロシェルを率いている。司令塔として幾多の激闘を経験してきた名手らしく、優れた戦術眼ときめ細やかなコーチングに定評があり、元ニュージーランド代表のNO8ヴィクター・ヴィトやSHタウェラ・カーバーロー、フランス代表のNO8グレゴリー・アルドリットゥにFBブライス・デュラン、フィジー代表の魅惑のCTB、レヴァニ・ボティアら世界的プレーヤーが並ぶ豪華メンバーのポテンシャルを存分に引き出している。

ゲームのひとつの見どころは、好ランナーがそろうグロスターのBK陣が、現在TOP14で最小失点のラ・ロシェルの堅守をいかに崩せるか、という点だ。CTBアトキンソンは「近場を攻めるのではなく、ボールを動かして大外のワールドクラスのランナーを走らせたい」と意気込みを語っており、ダイナミックな攻防が展開されることを期待したい。

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両チームがチャンピオンズカップで激突するのは今回が初めてだが、過去に下部大会のヨーロッパ・チャレンジカップで9回戦っており、通算成績はグロスターが7勝、ラ・ロシェルが2勝。ただし最後の対戦は2017年4月で、今季のそれぞれの所属リーグでの成績を見ると、過去の結果とはむしろ逆の状況だ。ラ・ロシェルはTOP14での好調の勢いに乗って、グロスターはプレミアシップの低迷を抜け出す転機として、この試合に臨んでくるだろう。

戦いの舞台となるのはグロスターのホーム、キングスホルム。2015年のラグビーワールドカップイングランド大会でジャパンがスコットランド、アメリカと戦った日本のラグビーファンにも馴染みのあるスタジアムだ。1891年創立の歴史を感じさせるたたずまいに当時の記憶を思い起こしながら試合展開を追いかけるのも、楽しみ方が広がる観戦方法かもしれない。

文:直江 光信

直江 光信

スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

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