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ラグビー コラム 2021年3月28日

『自分たちのラグビー』に立ち返ったNTTコムが6トライの快勝。東芝もラスト20分に光明。

ラグビーレポート by 直江 光信
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意外なスコア。多くの人がそう感じたのではないか。プレーオフトーナメントに向けどちらにとっても重要な意味を持つ一戦は、予想外の大差決着となった。

シェーン・ゲイツ

先に得点を挙げたのは東芝ブレイブルーパスだった。前半11分、左展開からFLマット・トッドがタッチライン際を抜け出し、コーナーに飛び込んで7点を刻む。しかしNTTコミュニケーションズシャイニングアークスもすかさずSHグレイグ・レイドローがPGを返すと、16分には相手のパスミスからSO前田土芽があざやかなフットワークで切り返し、CTBシェーン・ゲイツへとつないで逆転トライを奪う。

拮抗した流れが変わるアクシデントが起こったのは、その直後だった。今季初出場の東芝CTBトム・テイラーがキックレシーブから走り出した際にハムストリングを痛め、グラウンドに倒れ込む。BKラインの牽引役となるはずだった元ニュージーランド代表の名手が退いたことで、東芝は早い段階で想定外の布陣変更を余儀なくされた。

石井魁

するとNTTコムは19分、スクラム起点の右展開からFB石田大河が鋭いステップで代わって入ったばかりのCTBセタ・タマニバルをかわし、外をフォローしたWTB石井魁が走り切って追加点を奪う。24分にもWTB張容興のラインブレイクから石井が連続トライを挙げ、さらに36分にはNO8リアム・ギル→SHレイドロー→CTBシルヴィアン・マフーザとあざやかなオフロードの連続で一気にインゴールへ。31-7と大きく先行して前半を折り返した。

NTTコムの攻勢は後半に入っても続く。開始早々にスピーディーなつなぎからCTBゲイツが右中間にすべり込むと、10分にはターンオーバーからの切り返しでWTB石井がこの日3本目となるトライをマーク。45-7にまでリードを広げ、勝負を決めた。

絶対に勝利がほしかった三菱重工相模原ダイナボアーズ戦で手痛いドローを喫した前節から立て直し、開幕節以来となる今季2勝目をつかんだNTTコム。「この試合で勝点5を取れたことは満足という言葉では足りない。我々が今シーズンに成功を収める上で必要な5ポイントだった」とヒュー・リース・エドワードヘッドコーチが語ったように、東芝を相手にボーナスポイント付きの勝利を手にしたことは、大きな価値があるだろう。これで2勝1分2敗の勝点12となり、レッドカンファレンスのトップ4入りへ大きく前進した。

「1週間オフがあったことで、ノンメンバーも含めたチーム全員で『自分たちのラグビーはこういうものだ』というスタート地点に立ち帰り、同じ絵を見て、しっかり方向性を示してこの試合に向けた準備ができた」(LO中島進護共同主将)

【ハイライト】東芝 vs. NTTコミュニケーションズ|トップリーグ2021 第5節

一方の東芝。先制トライを挙げるなど立ち上がりは決して悪くなかったが、エラーの後のリアクションで後手に回り、テイラーの負傷退場というアクシデントも重なって落ち着きを取り戻すまでの間にスコアを広げられたことが、決定的な敗因となった。後半にはこの日再三ビッグタックルを見せていたCTBジョニー・ファアウリも頭部を負傷し交替。開幕節からここまで主軸のケガが続いており、まさに満身創痍の状況だ。

リーチマイケル

リーチマイケル

もっともこの試合に関しては、前節のサントリーサンゴリアス戦が荒天により前半12分で中止、一週後に延期となり、実質的にほぼ6週連続のゲームという状況、さらに金曜開催で通常より短い中5日での戦いというディスアドバンテージがあったのも事実だ。そしてそんな厳しいコンディションの中でも選手たちは最後まで懸命に戦い、敗れながらも随所に責任感をたたえた奮闘を見せた。後半17分にPR三上正貴が危険なプレーでレッドカードを受け14人となった後、気持ちを切らさずSOジャック・ストラトンとCTB桑山淳生がトライを返してプライドを示したことは、次戦に必ずつながるはずだ。

「最後にいいアタックでトライを取れたし、あれを14人でできるのだから、最初からできる力が絶対あると思う。しっかり修正して次の試合に臨みたい」(NO8徳永祥尭)

途中出場で吠えに吠えたPR藤野佑磨の満々の活力は、沈んだムードを一変させる勢いをチームにもたらした。同じく入替で出場しハツラツとしたプレーを見せたHO平田快笙やSH高橋昴平らの活躍も、未来を照らす貴重な光だ。リーグ戦は残り2節。ここからの巻き返しを期待したい。

文:直江 光信

直江 光信

スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。

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