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選抜初出場の開志国際高校
3月25日(木)から埼玉・熊谷スポーツ文化公園ラグビー場などで22回目を迎える「選抜大会」こと、全国高校選抜ラグビー大会が始まる。
出場32チーム中、4チームが初出場校で、佐沼(宮城)、明和県央(群馬)、読谷(沖縄)の3校は実行委員会推薦枠での出場だが、開志国際(新潟)のみが県予選、そして北信越大会を勝ち上がって出場権を獲得したチームである。
新潟の高校ラグビー界の歴史が動いたのは1月31日、北越高校のグラウンドだった。
FWが奮闘して新潟工業に勝利
昨年の「花園」こと、全国高校ラグビー大会に北信越ブロックの代表で初出場した開志国際が、新人戦の県予選決勝で花園に17年連続出場中の「絶対王者」新潟工業を29-5で下した。2015年創部の若いチームは、昨年10月の花園予選決勝では、14-22と惜しくも敗れていたが、そのリベンジを達成した。
「歴史は浅いですが、強いチームに競ったり、勝利したりするのが格好いい」と神奈川県から開志国際に進学したキャプテンCTB(センター)阿部太祐(2年)は、「新潟工業のFW(フォワード)に対して、開志のFWがしっかり前に出てゲインさせなかったことが大きかった」。
「PR(プロップ)渡邉(裕太/2年)、運動量豊富なFL(フランカー)前田(莉空/1年)が頑張った。王者の立場にいた相手を圧倒して勝てたことが嬉しかった!」と破顔した。
3年目の高橋昌徳監督
日本体育大学、三菱重工相模原ダイナボアーズで、FWとしてのプレー経験があり、開志国際を率いて3年目の高橋昌徳監督(41歳)は、「3年で花園に出場する」という目標を立て、昨年度の花園でその目標を達成していたが、新潟工業に競り負けて北信越ブロックの代表での出場だった。
そのため指揮官は「新潟工業に勝つのはマイルストーンの1つとして置いていました。選抜大会に出るための通過点ですが、勝ったことには意味があるのかなと思います」と感慨深げに振り返った。
花園での大分東明戦(写真:斉藤健仁)
昨年度の花園では1回戦で、大分東明に5-57で大敗してしまった。それでも高橋監督は「2年生の代の選手たちの多くが花園で試合に出場し、いい経験になった」。
「新チームになっても、そのままやってきたことが出せた」と話した通り、新潟工業に勝利した後、続く北信越大会信越ブロック大会では北越(新潟)に17-12と競り勝ち、岡谷工業(長野)にはキャプテンCTB阿部の活躍もあり、41-21で勝利。初の選抜大会の出場を決めた。
3年生9人が卒業したため、部員は2年生9人、1年生11人の20人(他に女子部員も7人いる)の少数精鋭だ。開志国際のある新潟県北部の胎内市から新潟市の中心部までは1時間ほどかかるため、18人が寮生活をしているという。
一番近くのコンビニエンスストアまで、約3kmとラグビーに集中できる環境にあると言えよう。ただ、花園から戻ってきた後の1~2月、雪国ならではの苦労もあった。
新潟県は例年よりも降雪量が非常に多かった影響で、グラウンドでの練習はほとんどできなかった。ウェイト場でのトレーニングと、体育館での基礎スキルの練習やポジショニングの確認などをしつつ、保護者の協力もあり、人工芝のグラウンドの1/8を除雪してもらって、コンタクト練習をしていたという。
「あまり外で練習できず、(パスなどの)距離感は苦労したようですが、体育館の狭い中で、イメージしながら身体を動かすことができていたことは、北信越大会につながったと思います」(高橋監督)。3月になってやっと雪の降る日も減り、半面を除雪することができ、グラウンドでの練習ができるようになったという。
北信越新人戦・岡谷戦での阿部キャプテン
また「花園で体格の差やフィジカルの差を痛感した」(CTB阿部)ため、週3回、トレーニング期間は多いときで週5回ウェイトトレーニングして体を作ったことも功を奏した。
「チーム全体としてフィジカルが成長したと実感しています。自分たちでしっかり予選を勝ち抜いて出場権を得ることができたのは大きい。新潟工業だけでなく、岡谷工業にも勝利することができて自信になりました!」と阿部キャプテンは振り返った。
50m走6.2秒のエースWTB星野
開志国際が目指しているのはボールを展開し、スペースにボールを運ぶラグビーである。阿部キャプテンがBK(バックス)のキーマンとして、長短のパスでゲームをコントロールするSO(スタンドオフ)伊藤大晟(2年)、身長182cmのFB(フルバック)渡邉陽平(2年)、50m走6.2秒の快足WTB(ウィング)星野雅空(1年)の名を挙げた。
監督が期待するNZからの留学生NO8ジェイキブ
一方、高橋監督が期待するのはニュージーランドからの留学生で、身長195cm、体重110kgの体躯を誇るNO8(ナンバーエイト)ジェームズリーフ・ジェイキブ(2年)。「去年はあまり出場機会がなかったが、身長もあるしよく走れる。プレーはまだまだ伸びていくと思いますが、今後のことを考えて、いいパフォーマンスをしてほしい」
初の選抜大会、3月25日(木)の1回戦では、優勝候補の1つ東海大大阪仰星(大阪)と対戦する。高橋監督は「まだまだ経験値が足らないので、自分たちのやれることにフォーカスしたい」。
「どれだけ通用するか楽しみ」と阿部キャプテン
そして、「全国のトップレベルを経験して、秋を見据えて、次に向けていい課題が出ればいい」と言えば、タックルを武器とし、キッカーも務める阿部キャプテンは「楽しみ半分、不安も大きい。数段、格上の相手なので、どれだけ自分たちの力が通用するか楽しみ」と意気込んでいる。
今年のスローガンは常にチームを思って、チームのために行動しようと「For The TEAM」に決めた。その先頭に立つのがコーチ陣や選手からの信頼厚い阿部キャプテンで、「自分から周りの選手に声かけをしたり、率先して後片付けをしたり、プレーで身体を張ったりしています」と話す。
「Red Tigers」(レッドタイガース)こと、開志国際は、開幕前日、高橋監督が運転するマイクロバスで熊谷入りするという。初出場だからといって臆さず、花園での経験と新チームとなって得た自信を胸に強豪相手にチャレンジする。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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