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急傾斜のスタンドにたなびく大漁旗、充満するホーム贔屓の熱気。
ヤマハ発動機の本拠地・ヤマハスタジアム(静岡・磐田市)は、ビジター側に重圧を与えるフットボール専用スタジアムだ。
2020年3月には新たな最寄り駅が誕生。袋井駅と磐田駅の間、スタジアムから約1.5キロ(徒歩20分)の距離に御厨(みくりや)駅が開業し、アクセスがしやすくなった。
ヤマハ発動機にとって、2勝1敗で迎える「トップリーグ2021」第4節は、そんなヤマハスタジアムで開催されるリーグ戦で唯一のゲーム。
3月14日(日)のキヤノン戦(14時キックオフ)は一層の力がこもる重要な一戦だろう。
チーム紹介
第2節リコー戦では1点差で惜敗(22-23)したヤマハ発動機だが、「チームをどう立て直すかにフォーカスをして」(FB五郎丸歩)、第3節NEC戦は59-31で勝利。敗戦はしたものの31得点を挙げたNECの分析力、実行力も光った。
ヤマハ発動機は現在ホワイトカンファレンスで4位につけている。
上位3チームは開幕3連勝のパナソニック、神戸製鋼、NTTドコモであり、トップチームの一角として第4節を勝利で折り返し、来週の休養週を迎えたいところだ。
ビジターとして敵地戦に臨むのは、開幕3連敗で同カンファレンス6位のキヤノン。
先週の第3節はセカンドホームの大分で、パナソニックに完敗(0-47)を喫したが、前半のスコアは0-11と接戦模様だった。
キヤノンスターティングメンバー
20年のサンウルブズでコーチング・コーディネーターを務め、今季よりキヤノンで新任の沢木敬介監督は試合後、前向きなコメントを残した。
「前半はファイトする姿勢が見えた。前回のゲーム(10-73/神戸製鋼戦)の悔しさをしっかり出せていたのは収穫です」
SO田村優キャプテンも「しっかりとしたマインドセットで試合に臨めている」との実感を語っており、苦しみながらも着実に前進を続けている。
そんなキヤノンの課題は得点力だろう。
第3節までのトライ数は4(ヤマハ発動機は20)で、ディフェンス突破数も39(ヤマハ発動機は132)に留まり、アタックのスタッツ(統計数値)で苦しんでいる。
キヤノンは監督、主将が様変わりした新体制だ。1年目で結果を出すことは容易でない。沢木監督は「この(キヤノンの)ラグビーにはスキルが大事」と語っており、今後はスキル、連携等を強化して決定力に結びつけたい。
両軍の出場メンバーが発表されており、キヤノンでは“ミスター・サンウルブズ”の一人が今季初先発を飾る。
サンウルブズに創設初年度(16年)から4季在籍し、チーム史上2位の39キャップを重ねた“カーキー”ことFLエドワード・カークだ。
圧倒的なワークレート、タックル精度で貢献した元共同主将で、その激しさとは好対照のファン対応などで支持を集めた。
キヤノンでは同じく16年から4季プレーしたSO田村優主将が2戦連続で先発を飾る。スクラムハーフは佐賀工-帝京大出身で、今季初先発のSH荒井康植だ。
先週ジャッカルでも貢献したエスピー・マレーはウイングに回り、小倉順平は今季初めて15番をつけての先発となる。
ヤマハスターティングメンバー
迎え撃つヤマハ発動機には、こちらもサンウルブズ初期メンバーであるPR山本幸輝、SH矢富勇毅(ともに16、17年在籍)など、かつての狼軍団の戦士が先発メンバーに名を連ねた。
伏見工-立命館大のHO江口晃平は、開幕戦で怪我をした日野剛志に代わり2番をつけて存在感を放っており、先週のNEC戦では2トライを挙げた。
決定力抜群のWTBマロ・ツイタマはトライ数ランキングで単独2位の7トライ。
9トライで首位のナエアタルイ(神戸製鋼)が4試合の出場停止処分になったため(第3節日野戦の後半32分の危険なタックルによる)、今後首位に躍り出る可能性がある。
ボールキャリーに邁進するCTBヴィリアミ・タヒトゥアは第4節も健在。今季限りでの現役引退を公表しているFB五郎丸は2戦連続での先発となった。
両軍のコーチングスタッフには元サントリーの選手が多く、ヤマハ発動機の堀川隆延GM兼監督のもとでヘッドコーチ(HC)を務める大久保直弥氏と、キヤノンの沢木監督も元チームメイトだ。
もちろん2人は狼軍団の元コーチ。大久保氏はスーパーラグビー初の日本人HCとして20年のサンウルブズを率い、コーチング・コーディネーターの沢木氏と共に戦った。
多くの元サンウルブズ戦士、コーチが左右に分かれて激突するこの一戦は、サンウルブズファンにとっても要注目だろう。
ヤマハ発動機といえばセットピース(ラインアウト、スクラム)を軸とした「ヤマハスタイル」だ。
ラインアウト成功率は94.9%(39回中37回成功)と驚異的である一方、スクラム成功率は78.9%(19回中15回成功)。フロントファイブ(FW前5人)を中心に先発FWを毎試合変えている影響も考えられるが、こちらもスクラムにこだわりがあるキヤノンとの勝負はどうなるだろうか。
楽しみが尽きないホワイトカンファレンス第4節「ヤマハ発動機ジュビロ×キヤノンイーグルス」は3月14日(日)午後1:50からJ SPORTS 1で生放送、J SPORTSオンデマンドでLIVE配信される。
勝利に飢えているのはどちらも同じ。フルタイムで歓喜するのはどちらか。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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