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クボタスピアーズ
戦前の期待に違わぬ、熱いダービーマッチが展開された。
ともに成長著しく、ともに千葉県内に本拠地に多くライバルチームによる直接対決。
お互いを好敵手と認め合う、2勝(勝点10)のクボタスピアーズと、1勝1敗(勝点5)のNTTコミュニケーションズの一戦が3月6日(土)、トップリーグ2021第3節で実現した。
会場となった東京・江戸川区陸上競技場は、クボタのホームスタジアム。
観客席にはクボタのチームカラーであるオレンジのシャツを着た人びとが多く見受けられた。
クボタは来場者にチーム特製ベースボールシャツを無料配布するなどのファンサービス「『#オレンジでいこう』作戦」を展開しており、この日も応援チームに関係なく配布された。
会場ではスタジアムDJの明るい声が響き、両軍のチャンスになると手拍子を促した。観戦マナーを守りつつコロナ禍ならではの沈黙を埋め、巧みに会場を盛り上げた。
心配されていた降雨もなく、ファンは日本最高峰のラグビーを存分に楽しんだのではないだろうか。
クボタは開幕2連勝を飾った先週から先発4人を入れ替え(LO青木祐樹、NO8バツベイシオネ、SO岸岡智樹、CTBライアン・クロッティ)、スタートダッシュを切った。
キックオフボールを受け取ったWTBゲラード・ファンデンヒーファーが、味方のブロックを利用して巧みに突破。最後は朝鮮大卒の注目ルーキー、FB金秀隆が相手2人を引きつけて先制トライをお膳立て。
開幕から3戦連続で先発しているFB金について、クボタのフラン・ルディケHC(ヘッドコーチ)は「彼は毎試合良くなっており、判断も成長している」と高評価を与えていた。
NTTコミュニケーションズシャイニングアークス 金正奎
前半1分のノーホイッスル・トライで5点を先制するという(ゴールキックは失敗)スタートを決めたクボタは、特に前半は素早いディフェンスで、相手の攻撃の芽を摘んだ。
「NTT(コム)がボールをキープすることは分かっていたので、ラインスピードでプレッシャーをかけることは練習していました」(クボタ・CTBクロッティ)
【ハイライト】クボタ vs NTTコミュニケーションズ|トップリーグ 2021 第3節
さらにクボタは「プライドを持っている」(クボタ・FLラブスカフニ)というスクラム、ラインアウトを武器として得点を重ねた。
2点差(5-3)で迎えた前半18分、徹底的にラインアウトにこだわると、強力モールから19年W杯南アフリカ代表であるHOマルコム・マークスがグラウンディング成功。
スコアを12-3として、さらに同35分にはスクラムでの相手反則からPG(ペナルティゴール)加点。リードを12点(15-3)に拡げた。
一方のNTTコムは試合後に指揮官ヒュー・リース エドワードHCが「ここ数年で一番調子が悪かった」と振り返る出来。
アタックでは、クボタのLOルアン・ボタら大型FWに圧力をうけて攻撃回数が伸びず、得意のワイド展開も相手のプレッシャー、ミスなどで繋がらず。
しかし不調にも関わらず、随所で好守を見せるなどして地力は見せつけた。
チームとして観客を楽しませることも重要視しているNTTコムは、前半36分、SHグレイグ・レイドローが防御裏へショートパント。
これが全速力で追いかけてきた怪我明けのCTBシェーン・ゲイツの懐にすっぽりと収まり、奇襲によるトライを鮮やかに決め、観客の目を楽しませた。
前半終了前にはこの日がデビュー戦であり、左右のキックでも魅せたSO前田土芽の好ディフェンスもあり、5点ビハインド(10-15)を死守。逆転可能な点差で後半へ向かった。
しかしこの日のNTTコムは前半に続き、後半の立ち上がりでも苦しんだ。
キックが相手のチャージに遭うなどして自陣脱出に失敗し、ドロップキックによるリスタート後のディフェンスもふたたび破られ、クボタに後半2、5分と連続トライを許す。
リードを19点(29-10)に拡げたクボタは、後半もLO青木らが相手をねじ上げる好守備を見せるなど、フォワードのフィジカル勝負で優位に立つ。
ただNTTコムは強力スクラムも看板。後半15分には敵陣ゴール前の自軍スクラムで見せ場をつくった。
途中出場で2年目の山口達也をフッカーに据えたスクラムで、ヒットから優勢となってスクラムトライ。FLリアム・ギルが押さえて歓喜を味わい、ゴール成功でビハインドを12点(17-29)に縮めた。
しかしクボタは失トライの3分後、悪いムードを断ち切った。
ふたたび相手の自陣脱出を防いだクボタは、敵陣右のラインアウトから、この日MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝いたHOマークスがサインプレーから突破。
SH井上大介の絶妙なテンポ・コントロールにより相手のオフサイドを引き出すと、この日が先発デビューとなった早大卒のSO岸岡が、思い切って約30mのロングパスを選択。
これが花園大卒のWTBタウモハパイホネティに繋がり、左隅にハットトリックを決めて5点追加(ゴールキック失敗)。
ラストパスを放り、80分間出場を果たしたSO岸岡について、19年W杯NZ代表のCTBクロッティは試合後にお墨付きを与えていた。
「スキルセットも高く、大卒一年目でこれだけできる。才能があるのでもっと高いレベルを目指せる」(クボタ・CTBクロッティ)
後半31分、そのWTBタウモハパイがレイトタックルで退場となり、終盤に1トライを返されるが、14人で約10分間を守り切ってクボタが開幕3連勝。勝ち点4を積み上げた。
1勝2敗となったNTTコムの指揮官、元南アフリカ代表フルバックであるリースエドワードHCは「結果に対して残念というより、自分達の内容について納得がいかない部分がある」語った。
「ここ数年で一番調子が悪かったと思います。それにも関わらず10点差に抑えることができたことはポジティブ。小さなミスからボールの保持権を失っており、そこを大事にすることで自分達のラグビーができるようになると思います」
NTTコムは次戦の三菱重工相模原戦で今季2勝目を狙う。
開幕3連勝となったクボタ。16年度よりHCを務めているルディケ氏は「勝てたことはハッピー。前後半、80分間コントロールできました。スマートにプレーし、ポゼッションと判断が良かったので勝つことができました」と勝因を語った。
クボタは次戦、開幕4連勝をかけてHondaと対決する。好調クボタの戦いぶりもトップリーグ2021の見どころになりそうだ。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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