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昨季最後の試合となった第6節終了時点で9位のキヤノンイーグルスと、同15位NTTドコモレッドハリケーンズの激突。それでも、そうした数字から浮かぶイメージをはるかに超えた期待感を抱かせるのは、どちらも去年までとは別のチームのような活気に満ちているからだ。
チーム紹介
仕掛け人はそれぞれの新しい指揮官、沢木敬介監督とヨハン・アッカーマンヘッドコーチ(HC)である。
キヤノンスターティングメンバー
沢木監督は2015年のワールドカップでエディー・ジョーンズ監督(当時)率いる日本代表のコーチングコーディネーターを務め、南アフリカ代表から歴史的勝利を挙げる快挙を支えた。2016年にはサントリーサンゴリアスの監督に就任し、前年度9位のチームを鮮やかに蘇らせてトップリーグ優勝、さらには翌年の連覇へと導く。2020年シーズンはサンウルブズのコーチングスタッフに加わり、短い準備期間で焦点を絞り切って開幕戦初白星をつかんでみせた。豊富な知識と鋭い観察眼、トップレベルのコーチングスキルに加え、向上心あふれる集団を作り上げる優れたモチベーターとしての手腕にも定評がある。
LOとして南アフリカ代表13キャップを誇るヨハン・アッカーマンHCもまた、確固たるチームカルチャーを築くことによって国際ラグビーの舞台で輝かしい実績を残してきたトップコーチだ。2013年にヨハネスブルグを本拠とするライオンズのHCに就任し、成績不振によりスーパーラグビーから降格したチームを2014年から2季連続で国内最高峰リーグのカリーカップ決勝に牽引(2015年は優勝)。スーパーラグビーにも1年で復帰し、2016、2017シーズンと2年連続でファイナル進出を果たした。2017年後半からはイングランド・プレミアシップのグロスターのHCに就任し、2018-2019シーズンに8季ぶりのトップ4入りを達成。ただ結果を残すだけでなく、ダイナミックにボールを動かす魅力的なラグビーを志向することでも、名声を博してきた。
名将就任によるチームの変化は、さっそく結果に表れている。キヤノンはプレシーズンマッチの初戦となった昨年10月17日のクボタスピアーズ戦こそ敗れたものの、翌週の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦に47-7で快勝。11月28日にはサントリーに43-35と勝利して自信を深め、12月12日のNECグリーンロケッツ戦は59-15と大勝を収めた。NTTドコモも11月28日にパナソニック ワイルドナイツから47-7で白星を手にし、12月5日のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスとの「NTTダービー」も17-5と制して昨季の上位勢に連勝。順調な仕上がりをアピールしている。
キヤノンは1月に入り選手・スタッフに新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出たため、チーム活動を2週間休止。トップリーグ全体も開幕直前に延期が決まり、新フォーマットで開催されることとなったが、大胆なスタイルチェンジの途上にある両チームにとっては、準備期間が増えたことによるプラスの側面も大きかっただろう。この1か月でどのように戦い方を研ぎ澄ませ、いかなるパフォーマンスを披露してくれるのか。期待は膨らむ。
NTTドコモスターティングメンバー
戦力面での注目は、何といってもNTTドコモに新たに加入したTJ・ペレナラとマカゾレ・マピンピのビッグネーム2人だ。184cm、90kgの大型SHであるペレナラは、よく伸びるパスと正確なキック、鋭いランに加えリーダーシップにも優れ、NZ代表69キャップを誇る世界屈指の名手。南アフリカ代表の切り札として2019年のワールドカップ日本大会で鮮烈なインパクトを残したWTBマピンピは、驚異的な決定力でトライを量産してチームを勢いづけることが期待される。
一方キヤノンの看板となりそうなのは、沢木監督から新主将に指名されたSO田村優が率いるBK陣だ。アウトサイドCTBのジェシー・クリエルは南アフリカ代表の中でもトップクラスと評される身体能力を有し、攻守に絶大な存在感を発揮するアスリート。コンビを組むマイケル・ボンドも強靭なフィジカルが持ち味の弾丸系CTBで、アウトサイドにはサンウルブズで圧巻のトライ奪取力を世界に見せつけたWTBホセア・サウマキというフィニッシャーが控える。「トップリーグでもベストになれる可能性がある」と田村主将が自信をにじませるように、どのエリアからでも崩し、仕留め切る力を備えたBKラインは、相手にとって脅威となるだろう。
試合2日前の2月19日に発表された登録メンバーを見ると、キヤノンでは日本代表でもコンビを組んだSH田中史朗、SO田村優がスターターに名を連ねた。サウマキ、ボンド、クリエル、さらには切れ味抜群のWTB山田聖也、7人制日本代表で長く活躍したFB橋野皓介と好ランナーが並ぶBKをどう走らせるか、HB団の手綱さばきが注目される。NTTドコモは残念ながらマピンピが外れたものの、ペレナラは9番で先発。クボタから移籍してきたSO川向瑛やFBトム・マーシャル、HOフランコ・マレー、NO8タイラー・ポールら今季加入した選手を要所に据えるフレッシュな布陣をいかにコントロールするかが、勝負の鍵となりそうだ。
過去の成績を振り返ると、キヤノンは2015年度の6位、NTTドコモは2014年度の11位が最高だが、今季は両チームともそれを上回りそうな勢いを感じさせる。飛躍を遂げる上で、この開幕節はお互いに何としても勝利してスタートを切りたいところ。激戦必至だ。
文:直江 光信
直江 光信
スポーツライター。1975年熊本市生まれ。熊本高校→早稲田大学卒。熊本高校でラグビーを始め、3年時には花園に出場した。著書に「早稲田ラグビー 進化への闘争」(講談社)。現在、ラグビーマガジンを中心にフリーランスの記者として活動している。
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