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オールブラックスの「ハカ」をリードするPJ・ペレナラ
今年のトップリーグの注目選手の1人で、NTTドコモレッドハリケーンズに加入したのがニュージーランド代表69キャップを誇るSH(スクラムハーフ)TJ・ペレナラ。
「オールブラックス」の試合前の踊り「ハカ」をリードすることでもお馴染みの選手だ。攻撃的SHで、SO(スタンドオフ)としてもプレーできるのがウリで、ニュージーランドから離れて日本でプレーすることを決めた経緯や、先導するハカについて、そして新たにチャレンジするトップリーグでの抱負を聞いた。
スーパーラグビーの強豪ハリケーンズで共同キャプテンを務めていたペレナラは、以前から日本の文化に関心を持っていたという。
「僕は日本のラグビーのスタイルと文化に興味があって、マオリと日本の生活はとても似通ったものであるとわかったんだ。2019年ワールドカップも含め何度かの来日で、ずっと日本での経験が忘れられなくて、いつも妻に話していたし、彼女も日本に来たいと思うようになっていました」とペレナラ。
今年、トップリーグでプレーすることを決めた経緯については「コロナ禍でラグビーができない時間が長くて、これ以上のオフシーズンは必要ないと思った」。
「日本のラグビーは、今、世界のどのリーグよりも成長率が高い。そんな質の高いリーグでラグビーができることは大きな魅力だった。さらに、娘も生まれたばかりで、家族との時間も大切にできる。いろんな意味でタイミングが良かった」と話した。
オールブラックスが試合前に披露するマオリのパフォーマンスである「ハカ」。マオリの血を引くペレナラにとって、ハカはマオリの文化を伝える上で大切なものだと考えている。
「ハカはおそらく自分にとって最も大切なことです。敬意を表すパフォーマンスの象徴で、対戦相手だけでなく、家族とマオリやニュージーランドの人々といった、ハカとともに育ってきた人たちに、メッセージを伝えるものなんです」。
ペレナラがトップリーグでハカを見せる機会はないが、オールブラックスの試合を見る人にもマオリの文化や精神が伝わればと思っている。「意識的ではありませんが、ハカを見た人たちが僕たちマオリについて深い関心を寄せてほしい。ハカを披露することで、皆さんがマオリやオールブラックスについてもっと理解してもらえるようにと思っています」と話した。
トップリーグ2021世界のスター
TJ・ペレナラ選手インタビュー(NTTドコモ)
2016年のアルゼンチン代表戦で初めてハカをリードしたペレナラだが、オールブラックスにおいて、そのハカをリードする人はどうやって決めるのか。ペレナラによれば、必ずしもマオリの血を引いている選手である必要はなく、オールブラックス内での「マナ」(人間としての価値、徳)があるかどうかで決まるという。
「どのくらいチームに貢献しているか。どれだけ他の選手たちから信頼されているか。ハカをリードする能力があるか。それらをすべて満たしていることが必要です。かつてキャプテンを務めた、キアラン・リード(トヨタ自動車)、リッチー・マコウ、タナ・ウマンガもハカのリードを担っていました。それは彼らがとてもチームで尊敬されていた証です」。
そしてオールブラックスのハカといえば、「カマテ」と「カパオパンゴ」の2つがあることで良く知られている。試合前に「今日はどちらが見られるのだろうか」と楽しみにするファンも多いはずだ。だが、どちらのハカを披露するかは、1つの例外だけを除いて明確な決まりはないという。
「ウェリントンで行われる試合は、必ず『カマテ』になります。というのもこのハカはマオリの酋長テ・ラウパラハによって作られたもので、彼はウェリントンの地域の出身なのです。これだけが唯一のルールです。しかし、それ以外はキャプテンと、今だったらハカをリードする自分が試合の前日に話します」。
どちらのハカがいいのか決めるのには理由は必要ない。ペレナラは「私たちは、ただその週はどちらの気分かを伝えます。対戦相手とか試合の種類などはまったく関係ありません。ただ、単にどちらをやりたい気分かを告げる。(キャプテンと私の)2人が同じであればそれでいいですが、違う意見の場合は話します。その時も単にどう感じているかを話します」と説明した。
日本の文化と同時に、日本のラグビーにも惹かれたというペレナラだが、日本のSHをどのように見ているのか。
ペレナラは「(日本代表SH)田中史朗(キヤノン)がハイランダーズにいた時、非常にプレースタイルが好きでした。日本のSHはテクニックがおそらく世界でもベストだと思います。今、レッドハリケーンズで練習していてもそう感じています。だから日本のSHのテクニックを学べることが楽しみです」。
「また、どういう準備をするのか、どういうプレーをするのか、本当に楽しみです。スキルもそうなんですけど、それ以上に毎週試合に臨むまでの準備の過程がどういうものかを学びたい」。
「それから安定したスキルが素晴らしいですよね。チームメイトにもペペ(秦一平)というSHがいて非常に小柄な選手だけど、すごい質の高いプレーをしていて、フィールドで非常に興味深く学んでいます」と話した。
今シーズンのトップリーグでは、ペレナラの出身であるニュージーランドを始め、各国の代表レベルの選手が参戦し、話題を呼んでいる。
ペレナラは「自分としては世界のトップ選手とトップリーグで対戦するのは楽しみです。SO/FB(フルバック)ボーデン・バレット(サントリー)とは元はチームメイトでしたが、昨年は彼がブルーズに行ってライバルとして戦ったのは楽しかったです」。
「神戸製鋼にはLO(ロック)ブロディー・レタリックもいますし、(オーストラリア代表の)FL(フランカー)マイケル・フーパー(トヨタ自動車)もプレーします。このような世界のトッププレイヤーが同時に日本にいることは本当に素晴らしいことです。これから始まるトップリーグでのチャレンジが楽しみで仕方ないです」と開幕を見据えた。
最後にトップリーグで、レッドハリケーンズ、ラグビーファンにどんなプレーを見てほしいかを聞くと、ペレナラは「熱いものを見せたい。僕はラグビーをするのが好きで、オフェンスもディフェンスもすべてのプレーを見てほしいです」。
「ディフェンスが嫌いな9番もいますが、僕にとってディフェンスは、自分が試合で貢献できる1つの大きな役割だと思います。パスも得意ですし、ボールを持っている時でもディフェンスの時でもとにかく走ります。それから突破役としての役割も果たせると思います。すべての試合に全力でプレーするのをファンに見てほしい」と意気込んでいる。
高いレベルで攻撃的なプレーを持ち味とするペレナラが、レッドハリケーンズの攻撃をリードし、白星を重ねて快進撃に導くことができるか。NTTドコモがホワイトカンファレンスの台風の目になるためには、9番ペレナラの躍動が欠かせない。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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