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日本代表22キャップを誇る179センチの大型スクラムハーフ、パナソニックの内田啓介。コロナ禍で起きた変化を前向きに捉え、自身の成長に繋げている。2月20日開幕のトップリーグ2021へ向けては「日本一を獲りにいく」と闘志満点だ。
京都・陶化中-伏見工-筑波大と進んだ甘いマスクの28歳(2月22日生)。大学在学中の2012年に日本代表デビューを果たし、2019年はタスマンでマイター10カップ(NZ国内最高峰大会)優勝も経験した。
7年目のパナソニックでも主軸を担う。日本を代表するスクラムハーフに今シーズンの意気込み、様々な変化があったという私生活など、多岐にわたり語ってもらった。
教員の夢へ向かって再スタート。「ラグビー+勉強」の日々
内田啓介選手
――コロナ禍をきっかけに始めたことはありますか?
昔からラグビーが終わったら高校教員になることが目標でした。筑波大学では教育課程で学んでいたんですが、代表に選んでもらったこともあり教育実習に行けず、教員免許を取得できていませんでした。
新型コロナウイルスの影響で何もできない時期に行動に移そうと思い、免許取得に足りない部分も補うため、2020年4月から通信制の大学に通い始めました。オンラインで授業を受けて、レポートを書いて…大学生やってるなあ、という感じで新鮮ですね(笑)。今シーズンが終わったら教育実習にも行く予定です。
――教員を目指そうと思ったキッカケは?
陶化中学で出会った稲田(雅己)先生がすごい方で、稲田先生のような人に良い影響を与えられるような指導者になりたい、と思ったことがキッカケですね。
小学生の頃、陶化中の練習に参加したとき、監督だった稲田先生から「君はスクラムハーフに転向したほうがいい。その方が絶対に伸びる」と言われたんですね。当時は別のポジションで、スクラムハーフをやるつもりもなかったんですが、1日で見抜かれました。ラグビーの指導はもちろん、稲田先生には様々なことで感銘を受けました。
インタビュー動画
内田啓介選手インタビュー ラグビー トップリーグ2021 パナソニックワイルドナイツ
第1子誕生で変化。周囲は「表情が柔らかくなった」
――ラグビー以外で熱中できることはありますか?
それが本当にないんですよね…。ただコロナ下の5月に初めての子供が生まれて、それが救いでした。熱中とは違いますが、ラグビーしていない時に子供と一緒にいることができて幸せでした。
――父親になり変化はありましたか?
自分では分からないんですが、妻から「性格が変わった」と言われました。後輩からも「表情が柔らかくなった」「めっちゃ優しくなりましたね」と言われます。
あとは子供にプレーを見せたいと思うようになりましたね。いつまでプレーするか決めていませんが、脳裏のどこかには焼き付けておいてほしい、と思います。
――チームのプロフィール欄では趣味が「ファッション」「車」です。
服はビンテージ物が好きですね。コロナ禍の前は、ビンテージのデニムを東京に探しに行ったりしていました。
――車もビンテージが好きなのですか?
そうですね。今まで乗ってきたのが車は全部アメ車(アメリカ車)なんですが、1台だけ旧車に乗りました。でも心配性なので「遠出した時につぶれたらどうしよう」と思ったら外に出れなくなっちゃって…。旧車はすぐ乗り換えました。性に合わなかったですね。
今季のパナソニックは「日本一が大前提」
――パナソニックの坂手淳史主将が「今年は準備期間が長かったので連携が良い」と話していました。
これまでは(主力選手が代表活動などから)合流して一か月で開幕、という感覚がありましたが、今季は半年くらい一緒に練習ができています。コミュニケーションが取れていて、全員で良い練習ができていますね。スクラムハーフとしてプレーしていても「不安な部分がない」という感覚があります。
――チームが特に意識していることは?
“日本一”は今まで以上に意識しています。練習中からあえて日本一とは口にしませんが、日本一が大前提にある、という感じです。
――あらためてご自身のプレーの強みは?また新たな武器は?
早くて長いパスは自信を持っています。あとはコミュニケーションの部分はタスマン(NZ州代表選手権チーム)を経験してから上達していると思います。ニュージーランドでは全部英語で喋らなければいけませんでしたし、コミュニケーションの大切さをあらためて学びました。いまコミュニケーションは少しずつですが、強みのひとつになりつつあると実感しています。
伝統のNZ州代表選手権「Mitre10カップ」で優勝経験。「人生で一番楽しかった」
内田啓介選手
――2019年、マイター10カップ(NZ国内最高峰の州代表選手権)に参戦するタスマン・マコに加入し、チームの初優勝を経験しました。
ニュージーランドに行ったらもう試合が始まっていた状況でしたね(笑)。
これまでもラグビーを楽しんでいると思っていましたが、あの2、3か月は人生で一番ラグビーが楽しかったですね。毎日が刺激的で、ラグビーも英語の勉強もできるし…ただ楽しかったです。その上で優勝もできて、この上ない幸せを味わいました。
――タスマンでの経験を通じてコミュニケーションの重要性を再認識したのですね。
試合でも、毎日の練習でも感じました。英語の発音ひとつで通じない時もありました。コミュニケーションが難しいので、日本にいる時を思いだして「コミュニケーション簡単やん」と思っていました(笑)。
「僕よりもパナソニックを見てほしい」。日本一に懸ける熱い思い
――内田選手から見たトップリーグ2021の見どころは?
トッププレイヤーが続々と日本に来ていますよね。今年は例年以上に素晴らしい選手が日本に来ています。レベルの高い試合ができますし、ファンの方も楽しめるのではないかなと思います。
――2015年度に4度目の優勝を果たしているパナソニックですが、チームにとってトップリーグ2021の意味は?
日本一だけです。考えているのはそこだけ。確実に日本一を獲りにいかなければいけないシーズンです。
――開幕が1か月延期され、当初予定されていた「セカンドステージ」が廃止されるなど、大会フォーマットに変更がありました。
日程が変わりましたが、大きく変わることはないですね。準備期間が延びたということだけです。この一か月で、自分達のやりたいことをブラッシュアップできました。
――内田選手にとってトップリーグ2021とは?
チームが日本一になれれば、自分はなんでもいいです。何としても、もう一回日本一になりたい。僕よりもパナソニックを見てほしいと思います。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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