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スター軍団・パナソニックを率いる主将は、2019年W杯日本代表のHO(フッカー)坂手淳史だ。
京都成章高時代から猛烈なタックラーとして知られ、帝京大学では在学中に4度の大学日本一を経験。4年時は絶対的なキャプテンとして大学7連覇に導いた。
FW第3列から転向したフッカーとして大成し、日本代表で重ねたキャップ数は「21」。スーパーラグビーのサンウルブズ(日本)では2017年から3季プレーした。
坂手主将のほかに堀江翔太、稲垣啓太、福岡堅樹らを擁するパナソニックは、コロナ禍でリーグ中止になるまで2020年シーズンで全勝街道(6勝0敗)を突き進んでいた。
それだけに開幕延期を経て、2月20日(土)に開幕するトップリーグ2021は期するものがあるだろう。新シーズンへ向けた決意、プライベートでは相撲好きという一面まで、スター軍団を率いるリーダーに迫った。
トップリーグ2021は日本代表入りへのサバイバル。「一つひとつの試合が大事になる」
坂手淳史選手
――トップリーグ2021がコロナ禍で約1か月の開幕延期となり、あらためて2月20日に火蓋が切って落とされます。
この1か月は一番大事な部分として「新型コロナウイルスの予防をしっかりしよう」と話して、安心・安全を第一にして活動してきました。
試合へ向けたトレーニングはしなければいけないので、この1か月は安心・安全の中で可能な練習を行い、これまで準備してきたものを思い出しながらもう一度を構築する、という作業をしてきました。
――今シーズンのパナソニックが目指しているラグビーは?
ファンの方は長い間ラグビーを観ることができていないので、「ファンの方が楽しめるラグビー」が一番大事だと思っています。
その上で、パナソニックの伝統である「ディフェンスからアタックに切り替わるスピード」といった部分を重点的に取り組んできました。伝統を守りながら戦いたいと思います。
――今シーズンは2023年W杯へ向けた代表選考、という観点からも重要ですね。
トップリーグで良い試合をしなければ日本代表には呼ばれないと思っています。
2019年はワールドカップに参加することができましたが、トップリーグでのパフォーマンスによって2023年の結果が変わると思います。一つひとつの試合が大事になります。
インタビュー動画
坂手淳史選手インタビュー|ラグビー トップリーグ2021 パナソニックワイルドナイツ
――ちなみに2023年W杯で、日本はイングランド、アルゼンチンと同組になりましたね。
どこの国が来ても厳しい戦いになるのは分かっていました。イングランドとアルゼンチンは本当に強いチームですが、勝ち切らなければベスト8、それ以上は見えてきません。まずはアピールを頑張っていきたいと思います。
例年にない準備期間が奏功。才能集団の連携は十分。
――チーム8年目の元オーストラリア代表監督、ロビー・ディーンズHC(ヘッドコーチ)がチームを継続強化していますが、昨シーズンから上積みした部分は?
一つひとつのプレー精度を上げたことです。
ディフェンスにも戦術はありますが、まず個人がタックルを決めなければ結果は出ません。アタックにしてもどれだけ良いシェイプがあっても、バラバラに動いてしまうと結果は出ません。
ディーンズHCは全員が同じ絵を見てひとつのものを作ることを重視する監督で、そうした精度の部分は浸透していると思います。
――今年はコロナ禍で準備期間が例年以上に長くなりましたが、チームの状態は?
モチベーションの維持が難しい時期もありましたが、現在はトップリーグに向かってもう一度チームを作っていく過程にあり、すごく良い状態です。
これまでのパナソニックは(日本代表クラスの合流後の)準備が長くても1か月前からでした。今シーズンはすごく長い時間を一緒に過ごしているので、コミュニケーションが取れています。開幕から実力を出せる自信があります。
――学生時代とリーダーシップの取り方は変化しましたか?
全然違いますね。パナソニックには経験のある選手がたくさん揃っているので、みんなの経験を合わせることが大事だと思っています。パナソニックはみんなが意見を出し合えることが強みです。
堀江さん、谷田部(洸太郎)さん、笹倉(康誉)さん、稲垣さんなど、多くのベテラン選手がいつも良いことを言ってくれますし、サポートしてくれます。
コロナ禍で生まれた趣味。相撲ファンの一面も。
――2020年シーズンはコロナ禍で中止になりましたが、その後のステイホームで新たに始めたことは?
家にいることが多くなり、コーヒーをいれたり、料理をしたりするようになりましたね。料理は食べたくなった時にお好み焼き、野菜炒めを作ったりしました。
コーヒーはもともと好きで、2019年のワールドカップ期間中も稲垣さん達とよくお茶に行って、コーヒーを飲んでいました。
稲垣さんはコーヒーをいれるのがとても上手で、趣味の範疇を超えています(笑)。家にお邪魔した時にいれてもらいましたが、とても美味しかったですね。ミルクの泡立ても上手で、ラテアートをしてくれました。
――相撲も好きだそうですね。
大相撲はいつも観ています。稲垣さんは相撲も好きなので、いつも相撲の話をしています(笑)。横綱の白鵬関は会ってみたいです。
――相撲の立合(たちあ)いなどはラグビーに活かせますか?
頭同士が当たっても前に出続けますし、ただただ「すごいな」と思って観ているだけですね。
今場所は大栄翔(1月の初場所で初優勝)の立合いがすごかったですね。大栄翔は組み合っている時のいなし方、足のかけ方など、大きい身体であれほど動けるのは本当にすごいと思います。
名将と歩んできた楕円球人生。将来のコーチ業にも興味。
坂手淳史選手
――ラグビー人生の土台を築いてくれた監督は、京都成章の湯浅泰監督だそうですね。
ラグビーの考え方の基礎が固まったのは高校でした。パナソニックのロビーさん、帝京大学の岩出(雅之)監督にも影響を受けましたが、スタートは湯浅監督だったと思います。
湯浅監督は「こうしろ、ああしろ」と投げてくるタイプではなく、選手に考えさせようという監督です。そこでラグビーについて考える力が身につきました。
言われたことだけをやっていたら「ラグビーを考える」部分まで辿り着かなかったと思うので、湯浅監督に出会えて良かった、と率直に思います。
――多くの名将のもとでプレーしてきましたが、ご自身はコーチに興味は?
すごく興味がありますね。僕の人生で誇れることは、人生のいろんな選択の場面で間違った方向に行かなかったこと。高校(京都成章)、大学(帝京大学)、社会人(パナソニック)で選んだチームは間違っていなかったとあらためて思います。
トップリーグ2021で見せたいプレー、見せたいラグビー。
――対戦が楽しみな選手は?
日本代表で一緒に戦った選手と試合をするのはすごく楽しみですね。また世界の強豪チームでプレーしていた選手もトップリーグに来ているので、彼らとの対戦も楽しみです。
――トップリーグで観てほしい自身のプレーは?
タックルやボールキャリーもそうですが、フィールドでたくさん動くことをターゲットにしています。たくさんボールに絡んで良い影響をチームに与えていきたいなと思うので、そこを観てもらえたら嬉しいです。
――あらためて今シーズンのパナソニックの注目ポイントを教えてください。
ディフェンスで前に出ながら相手のボールを奪う、そのボールをトライに繋げる――パナソニックの伝統であるそうしたラグビーを今シーズンも見せてきたいと思います。
見ていてワクワクするような楽しいラグビーをしたいですし、できると思っています。ぜひ応援よろしくお願いします。
文:多羅 正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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