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左から小松監督、松岡主将、フィフィタ副将
1月18日(月)、ラグビー全国大学選手権で初優勝を飾った天理大学ラグビー部。優勝を記念し、関西ラグビー協会公式Youtubeチャンネルで、祝勝対談が行われた。
天理大学ラグビー部からは小松節夫監督、主将FL(フランカー)松岡大和、副将CTB(センター)シオサイア・フィフィタ(ともに4年)の3人、関西ラグビー協会からは萩本光威会長、中尾晃大学リーグ委員長が登壇した。
まず、小松監督がいつも通りの落ち着いた様子で、「このたびは応援していただき、ありがとうございます。36年ぶりに関西のチームが優勝することができて嬉しい」。
「これを機に、また関西全体が盛り上がって、後に続くチームが出てくれればと思いますし、互いに切磋琢磨して、関西大学リーグが盛り上がっていければと思います」と挨拶した。
続いて松岡主将は、「この1年、コロナの影響でたくさんの方々に迷惑をかけましたが、応援メッセージや動画をいただいたおかげで、前を見続けることができ、それが原動力となって乗り越えられ、素晴らしい環境でラグビーできたことを感謝しています」。
「本当にみなさんのサポートのおかげで日本一を成し遂げられて、日本一という恩返しができ、部員一同、嬉しく思います。後輩たちが2連覇という目標を目指していきますので、これからも応援のほど、よろしくお願いします」と話した。
36年ぶりに関西にもたらされた優勝カップ
優勝した当日、天理に帰るまで優勝カップを持ち続けていたというフィフィタ副将は、「2年前の決勝では、僕のノックオンで負けてしまった。全員、その悔しさが今まで残っていたので、今年は絶対勝つという思いが強かった。みんなのサポートのおかげで優勝できました。心から感謝しています」と謝辞を述べた。
小松監督は優勝した要因を聞かれて、「(今年度のチームは)強かったが、1年生の頃からずっと悔しい思いして、経験を積んできた4年生が多かったことが本当に大きかった」。
「東京に1回行って、パッと勝つことは難しい。アウェイの雰囲気とか、分析力の高さとか、1つ1つ体感して、それに負けないにはどうすればいいのか、という繰り返しでした。3回修正して、4回目の今年、挑戦できた」と分析した。
前列左から小松監督、松岡主将、フィフィタ副将、後列左から中尾関西リーグ委員長、関西協会・萩本会長、藪木事務局長
天理大学で3年間のコーチを経て、25年間監督を続けている指揮官は、それまでを振り返って、「(まずCリーグから)Bに上がって、Aに上がって復活するまで10年くらいかかりました」。
「Aに上がって、また関西で優勝するのに10年、そして2011年に大学選手権で準優勝して、この10年間、優勝を目指していた。トータルで28年ですが、目標は常に目の前にあったので、同じことを10年前も、20年前もやっていたという感じでした」と振り返った。
また、本気で日本一を目指すようになったのは、立川直道主将(現・清水建設)の代で、35年ぶりに関西王者に輝いたことが大きかったという。
「(立川)直道がキャプテンのときにいろいろ改革してくれました。食事、練習を全部、学生中心に率先してやってくれた。そして(翌シーズン)弟の(立川)理道(クボタ)がキャプテンの代に大学選手権で準優勝した。その頃から目標が日本一になりました」。
今季、関西大学リーグから徐々に調子を上げて初優勝したことに関し、松岡主将は、「1年生から出ている選手がたくさんいて、『今年はいいチームだな、負けたらもったいないな』と思っていました。優勝できる確信はなかったが、1試合1試合、フォーカスして、1試合1試合勝ちに行くマインドの方が強かった」と語った。
また、フィフィタ副将は、「みんなが助けあって、決勝までチームが1つになれた。スローガンは『一手一つ』なので、1つにならないと優勝できないと思っていたので、決勝が終わって、1つになったなと思いました」としみじみと話した。
続いて、小松監督は主将、副将についての印象を語った。松岡主将に関しては、「試合後のインタビュー、そのままの人間です。彼がいないとスクラム練習の元気なくなるくらいで、いつも声を出して、みんなを鼓舞する。自分自身が先頭立って、決勝戦は満身創痍だったが、まさに松岡だなと思いました。みんなを引っ張ってくれた」と称えた。
ラグビー 全国大学選手権 決勝
【ハイライト】天理大学 vs. 早稲田大学
フィフィタ副将について指揮官は「攻守の中心で、大黒柱という感じで活躍してくれた。サンウルブズに行って、世界を知って、プレーも人間の幅も広がった。練習態度も特に真面目になりました。身体を絞って体脂肪が減って、身体にキレが出てきた。周りの選手にもいい影響があった。模範となってチームを引っ張ってくれた」。
「いつも彼がトライをして喜んでいた姿をご覧になっていたと思いますが、決勝はトライがゼロだった。それはチームの1つの象徴で、彼が起点となってパスをつないでという形が決勝に出た。私自身、この2人に感謝しています」と話した。
フィフィタ副将は、サンウルブズでスーパーラグビーを経験し、自分で行く時とパスをする時とプレーの幅が広がったことに関して「勝つために1番、必要だなと思っていました。試合前日のジャージー渡しのとき、僕が1番泣いていた。『明日は絶対、優勝カップを持ち帰る』とスピーチでも言った」。
「大学生活の最後の試合で周りを上手く使うのを意識していた。(決勝で)トライを取れなかったことはショックでしたが、周りを上手く使えたなと思いました」と納得した表情を見せた。
来シーズン、天理大学は関西はもちろんのこと、関東の強豪大学にも追われる立場となった。
小松監督は「怖いですね。やっぱり。あの明治、早稲田大学が関西の天理大学を意識して(やることになる)。昨年、一昨年は明治、早稲田大学に負けた悔しさがベースにあった。今後は向こうが、『打倒・天理』と思うのか、どうかかはわからないですが、目標にしてくる」。
「今の時点で、(天理大学は)いったん悔しさがなくなってしまったわけで、今後、どういうアプローチをして、次、チャレンジャーとしてどう挑戦するか、頑張らないと。勝ったのでハードル上がってしまったと思います」と冷静に先を見据えた。
大学卒業後、松岡主将、フィフィタ副将をはじめ、SH(スクラムハーフ)藤原忍、SO(スタンドオフ)松永拓朗(ともに4年)らは、トップリーグや新リーグでプレーすることになる。
国立で初優勝を果たした天理大学 (C)JRFU
松岡主将は「目標だった日本一を達成できた。次のステージにでも、ひたむきにハードワークして頑張って、まずは試合に出て、日本代表になって、桜のジャージー背負って。それに向けて頑張っていきたい」。
フィフィタ副将も「僕も今年の目標である日本一を達成できたので、次は上のステージでやるのを楽しみにしています。次の目標は桜のジャージー。(松岡)大和、(藤原)忍、(松永)拓朗とまた一緒に、桜のジャージーを背負って一緒に戦いたい」と意気込んだ。
小松監督は、改めて指導者として意識していることを聞かれて、「実績がないような子が多いが、天理大学で頑張れば強いチームに勝てると願って期待して入って来る子が多い。その子たちの期待に応えられるチームでないといけない。170人いますから、レギュラーになれるかなれないかは別として、4年間、天理大学に来て良かったと思えるクラブでありたい」と語気を強めた。
また、フィフィタ副将は連覇がかかる後輩たちに「1~3回生は結構、『弱い』と言われていますがが、僕の中ではやれば優勝できる。しんどいことやって、みんながまとまって戦う。それが揃ったら絶対優勝できると思っているので頑張ってほしい」とエールを送った。
最後に松岡主将が「この1年、イレギュラーなシーズンで、たくさんのことがあって、みなさんのサポートがあってここまで来られました。みなさんに日本一という恩返しができて僕らも嬉しいです。自分たちが優勝したことで、関西のラグビーも盛り上がると思いますので、関西への熱い応援のほどよろしくお願いします!」という挨拶で優勝座談会を締めた。
天理大学ラグビー部はコロナ禍や、寮でのクラスター発生という難しい状況を乗り越えて、見事に初優勝、そして関西に36年ぶりに大学選手権優勝のカップを持ち帰った。来季は追われる立場となるが、大学選手権優勝という大きな自信を糧に、名将・小松監督の下、3回生以下の選手たちが連覇に挑む。
文:斉藤健仁 写真提供:関西ラグビーフットボール協会
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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