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天理大学の攻撃を止めきれなかった
「天理大学が本当に素晴らしいラグビーをした」。相良南海夫監督(平4政経卒=東京・早大学院)は何度もそう言った。それほど圧倒的な天理大の勝利だった。
ブレイクダウンを制圧され、強力かつ緻密な連続攻撃を断ち切れずに失点を重ねる。連覇をかけて臨んだ早稲田大学と初優勝を狙う天理大の最終対決は、28-55と大学選手権決勝の史上最多得点を記録して完敗。『荒ぶる』への道はあと一歩のところで閉ざされ、準優勝でシーズンを終えた。
「最初からフルスロットルで行きたい」(相良監督)という狙い通りにはいかなかった。前半3分、流れるように先制点を献上すると、10分にも追加点を許し試合の主導権を握られる。奇しくも、早大の連続得点で好スタートを切った昨年度の準決勝・天理大戦と逆の展開になった。
20分、CTB(センター)長田智希(スポ3=大阪・東海大仰星)のゲインからPR(プロップ)小林賢太(スポ3=東福岡)が力技でインゴールへボールを持ち込むが、その後は好機でミスを犯して攻めきれず、前半の得点はこの1トライのみ。
早稲田、前半は1トライのみ
勢いを増す天理大のアタックに押されて劣勢が続き、ここから1PG(ペナルティゴール)と、2トライ1ゴールを献上して、7-29でハーフタイムを迎えた。
後半も先制点を奪われるが、早大が粘り強さを見せた。12分、ラインアウトから展開すると、最後はFB(フルバック)河瀬諒介(スポ3=大阪・東海大仰星)が細かいステップワークで相手をかわしトライを挙げる。
その後、天理大の素早い攻撃を受け、連続でインゴールを明け渡し、迎えた27分。小林がダミーを織り交ぜながら軽やかなステップで大きくゲインを切ると、パスを受けたSH(スクラムハーフ)河村謙尚(社3=大阪・常翔学園)がサイドライン際を駆け抜け、会場を沸かせる鮮やかなトライを演出した。
しかし、得点するとすぐさま反撃にあう。33分に失点し、21-55。すでに、逆転は絶望的なほど点差が開いていた。
ラグビー 全国大学選手権 20/21 決勝
【ハイライト】天理大学 vs. 早稲田大学
試合終了間近の40分、ディフェンスラインのギャップを突いてCTB伊藤大祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園)がインゴールに飛び込んだ。1年生にして大学選手権決勝という大舞台で得点を挙げたにもかかわらず、伊藤に笑顔はない。
ホーンが鳴り、ラストワンプレー。プレッシャーをかけられた河瀬がターンオーバーされ、天理大が蹴り出してノーサイド。ボールを追うように駆け出し、そのまま崩れるように地面に膝をついた河瀬は、しばらく立ち上がることができなかった。
「ブレイクダウンやセットの部分で、少しずつ想定を上回られた」とNO8(ナンバーエイト)丸尾崇真主将(文構4=東京・早実)は振り返る。あらゆる部分における少しずつの想定外が、自分たちのラグビーを崩し、大きな点差へとつながった。
日本一だけを目指してきた4年間。やりきれなさはもちろんあるが、「いつかこの経験があったからこそ、前に進めたんだと言えるような人生を歩みたい」と丸尾は語った。
「優勝と2位というのはこんなにも違うのかということを見せつけられた」(SO/スタンドオフ吉村紘、スポ2=東福岡)。「自分のやるせなさ、力のなさに今日で気づけました」(伊藤)。「悔しいという言葉で収めていいのかというくらい、悔しいしか出てこない」(河瀬)。
早大フィフティーンのうち、4年生は4人。若いチームだったからこそ、悔しさをバネにした成長の幅は限りない。この舞台を経験した下級生たちが、再び日本一に向けて歩み始める。
記事:山口日奈子/写真:細井万里男(早稲田スポーツ新聞会)
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