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連覇を喜ぶ桐蔭学園
12月27日に開幕し、1月9日に閉幕した「花園」こと、全国高校ラグビー大会。100回目の記念大会ということで例年よりも12校多い、史上最多の63校が出場し、こちらも最多の62試合が行われた。
決勝で京都成章(京都)を下した桐蔭学園(神奈川)が、今大会の6試合平均で41.3得点、7.3失点という「東の横綱」の異名通りの強さを発揮し、史上9校目となる連覇を達成した。
ただ、コロナ禍の影響で、感染症予防の観点から全試合無観客での開催となり、各チームも監督やコーチも含めて40人と限定された。選手、関係者、メディアに関わらず、試合当日も含めて2週間の検温を記録した健康観察シートの提出が義務づけられ、会場では検温、マスクの着用、手指消毒が徹底されていた。
入口には消毒液と体温計
また、選手達は試合終了後、35分ほどで会場を離れなければならず、取材は1~2回戦は監督、キャプテンともう1人のみが対応して5分ほどで、ベスト8以降も多くても10分ほどに限定されていた。
こうして、1チームも辞退することなく62試合が行われたことは、大会関係者、各高校の努力、尽力によるものであり、桐蔭学園の藤原秀之監督も「選手たちからコロナが出ていないという話を聞いているので、本当に感染に気をつけてやっていたんだなと思います。大会ができることがすごいことだと思います。本当に、関係者の方々に感謝します」と謝辞を述べた。
異例ずくめの大会となったが、12月27日、28日に行われた1回戦から試合を振り返ってみたい。まずシード校は過去9大会の成績で決められたが、シード校の中で抽選により東海大大阪仰星(大阪第1)以外のシード校7校も1回戦からの出場となった。
1回戦31試合の中では、さすがシードバック(ノーシード校がシード校を倒すこと)は起きなかったが、ブロック予選を勝ち抜いてきたチームの奮闘ぶりが目立った。
ゴールを決める四日市工業SO宮崎
今大会は都道府県予選で2位となったチームが、各ブロックでトーナメントを戦い、優勝した9チームも出場していた。中でも四日市工業(東海ブロック)は初出場ながら岡谷工業(長野)を下して初勝利。東海大相模(関東ブロック)も光泉カトリック(滋賀)を倒して2回戦に進出した。
初出場の川越東、初勝利ならず
また、1回戦注目のカードとなったシード校の桐蔭学園vs.茗渓学園(茨城)、シード校の御所実業(奈良)vs.報徳学園(近畿ブロック)の対戦は、それぞれシード校が実力を発揮して勝利した。都道府県予選を勝ち抜き、初出場を飾った川越東(埼玉第1)は1回戦で明和県央(群馬)と対戦し、1トライを挙げたものの、7-24で敗れた。
12月30日に行われた2回戦は16試合が行われた。大分東明(大分)がシード校の目黒学院(東京第1)を、流通経済大柏(千葉)がシード校の関西学院(兵庫)を下し、シードバックを達成し3回戦に進出した。
また、シード校の東福岡(福岡第1)と筑紫(福岡第2)と福岡県勢同士が、花園で初めて対決した。東福岡が48-5と貫禄勝ちしたが、筑紫も奮闘した。唯一、2回戦が初戦となった東海大大阪仰星も含めたシード6校、関東ブロックを勝ち上がった東海大相模などが3回戦に進出した。なお、大分東明は初のベスト16入りで花園で年越しとなった。
元日には3回戦の8試合が実施された。東福岡が石見智翠館(島根)に苦戦したものの28-26で辛勝したほか、シード6校は勝利、準々決勝に駒を進めた。勢いに乗る流通経済大柏は地元の常翔学園(大阪第3)にも21-17で勝利した。10回目の出場だった中部大春日丘(愛知第1)が、大分東明を下して嬉しい初のベスト8進出を決めた。
1月3日には準々決勝4試合が行われた。抽選によってカードが決まったため、この10年間あまり、高校ラグビー界をリードしてきた東海大大阪仰星と東福岡の優勝候補が激突した。後半のロスタイムが18分を超える歴史的な試合となったが21-21で引き分け。キャプテン同士による抽選によって東福岡が準決勝に駒を進めた。
東海大大阪仰星と東福岡の激戦
東海大大阪仰星の近藤翔耶主将の「敵と味方ではなく、30人で試合しているというか、一体感というか、プレー中にノーサイドが先に来ていた気がします」というコメントは、花園の歴史の中で受け継がれていくだろう名言となった。
流経大柏ディアンズ・ワーナーの突破を止める大阪朝鮮高
他の3試合を見ると、シード校の大阪朝鮮高(大阪第2)が勢いに乗る流通経済大柏の攻撃を激しい守備でしのいで14-10で辛勝。10大会ぶりのベスト4進出を決めた。
また、桐蔭学園vs.御所実業(奈良)と前年度の大会の決勝カードが実現したが、桐蔭学園が50-7で快勝した。もう1試合は京都成章が中部大春日丘に勝利し、ベスト4に進出する4校が出揃った。
1月5日の準決勝。1試合目で京都成章が持ち味である守備で粘りを見せて、24-21と東福岡との接戦を制して、花園で初の決勝進出を決めた。また、もう1試合は桐蔭学園が前半は大阪朝鮮高の守備に苦戦したものの、終わってみれば40-10の快勝で3大会連続となる決勝進出となった。
そして、1月9日に行われた決勝では、前半終了間際に京都成章が追いつき10-10で折り返したが、桐蔭学園が後半、先に3トライを挙げて32-15で快勝した。桐蔭学園は2大会連続3回目、神奈川県勢としては6度目の優勝を飾った。
なお、桐蔭学園の連覇は、第89回~91回に3連覇を達成した東福岡(福岡)以来となる9校目、東日本勢としては第73回、74回で優勝した相模台工業(現・神奈川総合産業)以来の快挙となった。
桐蔭学園FB矢崎由高
大会のトライ王は4人。決勝でトライを挙げた桐蔭学園LO(ロック)青木恵斗(3年)が、チームメイトの1年生FB(フルバック)矢崎由高、京都成章WTB(ウィング)中川湧眞(3年)、常翔学園のWTB中村楓馬(3年)の7トライに並んだ。また、桐蔭学園のプレースキッカーWTB今野椋平(2年)が63得点で得点ランキングのトップに立った。
桐蔭学園の優勝で幕を閉じた100回目の記念大会。指導者、選手から多くの笑顔が見られたのは、今季初の全国大会で、「聖地」でラグビーをできる喜びを爆発させていたから他ならない。
また、多くの困難を乗り越えて全力で楕円球を追っている姿にが、多くのラグビーファン、スポーツファンの胸を打ったに違いない。来季の101回目の大会こそ有観客で行われることを切に願いたい。
全国高校ラグビー第100回記念大会
エンディングVTR〜その熱さが心に響く100年先も、熱い冬〜
決勝終了後、日本ラグビー協会は、2020年度の高校日本代表の海外遠征中止とともに、今大会における優秀選手30名を発表した。優秀選手の選出基準は「国際舞台での活躍が期待される選手」であり、つまり将来性に重きが置かれた選出となった。
第100回全国高校ラグビー大会 優秀選手30名
◆PR
・田中諒汰(桐蔭学園3年)
・本田啓(東福岡3年)
・宮内慶大(東福岡3年)
・森山飛翔(京都成章1年)
◆HO
・中山大暉(桐蔭学園3年)、
・平生翔大(関西学院3年)
◆LO
・青木恵斗(桐蔭学園3年)
・田島貫太郎(東福岡3年)
・ディアンズ・ワーナー(流通経済大柏3年)
・本橋拓馬(京都成章3年)
◆FL/NO8
・薄田周希(東海大大阪仰星2年)
・金勇哲(大阪朝鮮高3年)
・倉橋歓太(東海大大阪仰星3年)
・佐藤健次(桐蔭学園3年)
・福田大晟(中部大春日丘3年)
・セコナイヤ・ブル(大分東明3年)
◆SH
・細矢聖樹(國學院栃木3年)
・宮尾昌典(京都成章3年)
◆SO
・楢本幹志朗(東福岡2年)
・安田昂平(御所実業3年)
◆CTB
・秋濱悠太(桐蔭学園3年)
・近藤翔耶(東海大大阪仰星3年)
・寺下功起(東福岡3年)
・松澤駿平(京都成章3年)
・横山伊織(流通経済大柏3年)
◆WTB/FB
・大畑亮太(東海大大阪仰星3年)
・ジョアペ・ナコ(大分東明3年)
・金昂平(大阪朝鮮高3年)
・辻野隼大(京都成章3年)
・矢崎由高(桐蔭学園1年)
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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