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新型コロナウイルスの蔓延という事態に直面し、全チームが未曽有の困難に見舞われた今シーズンもついに最終局面を迎える。
全国大学選手権決勝、早稲田大学の対戦相手は関西王者・天理大学だ。早大はCTB(センター)平井亮佑(スポ4=福岡・修猷館)がけがから復帰、天理大は準決勝を欠場したFB(フルバック)江本洸志がスタメンに名を連ね、両者万全の布陣。11年ぶりに日本一に輝いた昨年度に続き、2大会連続優勝を果たせるか。決戦の時が迫る。
準決勝の天理大は圧倒的だった。関東大学対抗戦王者である明治大学を相手に試合のペースを掌握。相手のアタックを封じ込める好ディフェンスと、鋭く刺さるようなアタックで41-15と大勝を収めた。
特に警戒すべきはCTBシオサイア・フィフィタだろう。1年時から試合に出場し、発揮してきた強烈な突破力はそのままに、明大戦では視野の広さやパススキルの向上が見られ、さらなる脅威を感じさせた。
また、フィフィタ以外の選手も1人1人に勢いと重さがあり、SH(スクラムハーフ)藤原忍、SO(スタンドオフ)松永拓朗のハーフ団から繰り出されるアタックに注意が必要だ。
ディフェンスからリズムを作りたい
早大の勝機はディフェンスとラインアウトにあるか。シーズン当初から力を入れてきたディフェンスは早大の強みであり、前節の帝京大学戦でも粘り強くインゴールを守った。「前に出るディフェンス」(NO8/ナンバーエイト丸尾崇真主将、文構4=東京・早実)で、天理大の突破を封じられるかが鍵となるだろう。
CTB長田智希(スポ3=大阪・東海大仰星)やFL(フランカー)相良昌彦(社2=東京・早実)、村田陣悟(スポ1=京都成章)らの確実なタックルが期待される。
また、ラインアウトは早明戦での不調から大幅に改善。大学選手権準々決勝以降安定感が増し、帝京大戦ではモールから2トライを挙げたほか、ラインアウトを起点とした展開ラグビーで得点を重ねた。
ラインアウトがカギを握る
一方の天理大は、大学選手権2試合の合計マイボールラインアウト獲得率が68%と苦戦している。「4年生を中心としたBチームが研究してくれた」(丸尾)という分析に基づいたラインアウトの制圧は決勝においても必須であるはず。
ラグビー 全国大学選手権 準決勝
【ハイライト】帝京大学 vs. 早稲田大学
だが、セットプレーのうち、明大の『重戦車』を圧倒した天理大のスクラムには苦しめられることが予想される。落ち着いてボールをキープしたいところだ。
準々決勝は慶應義塾大学、準決勝は帝京大と、ここまで対抗戦Aグループとの対戦のみだった早大にとって、天理大は初めての他リーグとの試合となる。さらに、広さゆえ距離感覚の異なる東京・国立競技場での、大学王者をかけた決勝戦。
そんな大舞台だからこそ、「積み上げてきたことを精度高くぶつける」(LO/ロック下川甲嗣、スポ4=福岡・修猷館)ことが重要になる。基本に立ち返り、セットプレーや規律の徹底、そして追求してきた『早稲田クオリティ』など、上井草で積み上げてきた全てをこの1試合に出し切れるか。
「優勝した結果が2連覇というだけ」(FB河瀬諒介、スポ3=大阪・東海大仰星)。選手たちは皆こう言う。昨年度の栄光は引きずらず、ただこの代の日本一だけを目指して未知の困難も乗り越えてきた。
今年は感染対策のため、優勝した場合もグラウンドでの『荒ぶる』の歌唱が叶わない。だが、聞こえずとも歓喜の『荒ぶる』が会場に響き渡ることを信じて、早大ラグビー蹴球部の最後の戦いが始まる。
記事:山口日奈子/写真:初見香菜子(早稲田スポーツ新聞会)
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