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2021年1月16日(土)に開幕する「トップリーグ2021」の担当レフリーの魅力に迫るインタビュー企画。
今回はA級(トップリーグパネル)で唯一の20代、若手ホープの川原佑レフリー(かわはら・たすく/NTTコミュニケーションズ)が登場。
長崎県出身の川原レフリーは、1992年12月25日生まれの28歳。
5歳から楕円球を追いかけ、長崎南山高ではスタンドオフやフルバック。しかし高校2年に右膝を負傷して約1年半プレーできず。13年間プレーしたラグビーに今後も携わりたいと、進学先だった明治大学で本格的にレフリーの道へ。
大学卒業後はNTTコミュニケーションズへ入社し、’17年に最年少25歳で日本ラグビー協会公認レフリーに。20歳以下の世界大会、アジア・ラグビーチャンピオンシップなどで笛を吹き、’19年W杯ではアシスタントレフリー(AR)のバックアップ(ARリザーブ)として参加。W杯日本大会の試合運営に携わった。
川原レフリー
レフリー歴11年、これまで世界20か国を訪れたという川原レフリーに、ARリザーブとして参加した’19年W杯、そして新シーズンへ意気込みまで、多岐にわたり語ってもらった。
W杯日本大会にARリザーブとして参加。「すごく刺激に」
――’19年はアシスタントレフリー(AR)のバックアップメンバーとしてW杯日本大会に参加されました。
もともとワールドラグビー(国際統括団体)から「ケガがあった場合に繰り上がってアシスタントレフリーをする人が必要」と大会組織委員会に通達がありました。
ワールドラクビーの条件は「世界大会に派遣をされたことがあるレフリー」で、麻生彰久レフリーと私の2人が選ばれました。
――W杯日本大会では実際にどんな仕事をしていたのですか?
十数試合を担当しましたが、まずはアシスタントレフリーがケガをした時のためにジャージを着て、準備をしていました。試合に向けては移動をしながらのロードワークなどをして備えました。
試合では、選手の入れ替えなどを担当する「サブコントローラー」と呼ばれる人たちと共に行動して、入れ替えのサポートや、選手交代が起きた時の電光掲示板表示、ウォーターボーイなどをコントロールする仕事もしていました。
――試合運営に携わったW杯日本大会を振り返り、いま率直に思うことは?
プレイヤーをやっていたら、ワールドカップという舞台には一生関わることがなかったと思います(笑)。ピッチに入って温度感を味わったり、大勢の人が大会運営に携わっていることを間近で感じたりして、率直にワールドカップは「凄い」と思いましたね。
もうひとつは、ワールドカップに選ばれるレフリーは、レフリングのスキルが高いこと、パーソナリティが優れていることを近くで感じることができました。すごく刺激になりました。
トップリーグ・チームのNTTコミュニケーションズに所属
川原レフリー
――川原レフリーはトップリーグのマッチオフィシャル(審判団)の一人ですが、トップリーグに参戦するNTTコミュニケーションズに所属していますね。
今シーズン、トップリーグを担当するレフリーの中では‘21年シーズンはトップリーグ・チームの所属は私ひとりで、麻生彰久レフリーは今シーズンはトップ・チャレンジのコカ・コーラに所属しています。
――チームに所属するメリットは?
一番のメリットは、ラグビーにずっと関わっていられる、ラグビーを間近で見ることができる、ということですね。またコーチや選手から様々な情報をシェアしてもらい、コーチングを受けることもできます。
――素朴な疑問ですが、NTTコミュニケーションズの試合を担当することは?
おそらく一生ないですね(笑)。私は明治大学出身なので、明治大学の試合でレフリーをすることもできません。明治大学が大学選手権の決勝に進出するかぎり、私は決勝戦を吹くことができません。
川原レフリー
――海外では今年、ニュージーランドの試合をニュージーランドのレフリーが担当していました。
そうですね。これは今までなかったことで、新型コロナウイルスの影響です。
今年オーストラリアで開催されたトライ・ネーションズ(南半球3か国対抗戦/ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチンが参加)に関しては、ニュージーランドやオーストラリアのレフリーが担当していました。渡航制限などで第三国のレフリーがいなかったことが理由です。
念願の花園第1グラウンド。「レフリーをやっていなければ一生見ることのない景色」
――レフリー歴は11年目になりますが、思い出深い試合を挙げるとすると?
高校時代にケガをして花園(全国高校ラグビー大会)に立つことができず、悔しい思いがありました。その花園のピッチに立つことは目標にしていました。
大学4年生だった’14年、初めて花園の第3グラウンドでレフリーを担当して、それから4年連続で吹かせて頂きましたが、’16年度、初めて花園の第1グラウンド(東大阪市花園ラグビー場)に立ちました。
1月1日の報徳学園×石見智翠館(○24-19●)でした。観客席はほぼ満員で、それまで経験のない人数でした。あれはレフリーをやっていなければ一生見ることのなかった景色でした。すごく思い出深いです。
――いまレフリーを志している人、迷っている人にメッセージを送るとすると?
ラグビーのレフリーは選手たちと一緒に走り、一緒にゲームを一緒に作っていく役割を担っていると思っています。普段はできない経験、見ることができなかった景色を見ることもできます。
向上心をもってレフリーを続ければ、世界に出るチャンスもたくさんあると思います。僕自身もレフリーとして20か国以上に行かせてもらい、レフリーをやっていなければ行けなかった国、出会えなかった人がたくさんいます。ぜひチャレンジしてほしいですね。
レフリーも一致団結で挑むトップリーグ。「世界レベル」へのチャレンジ
――「トップリーグ2021」の開幕が目前に迫ってきました。
日本ラグビーのレベル、プレイヤーのクオリティは上がっています。海外のトッププレイヤーたちもたくさん日本にやってきました。トップリーグはいまや世界レベルといっても過言ではありません。
その中でレフリーとして良いパフォーマンスをするために、しっかりと準備をしなければいけません。また一方で、’23年のW杯フランス大会へ向けて、日本代表のセレクションも始まっているのかなと思います。
――世界標準になったトップリーグは、レフリーにとっても真剣勝負ですね。
実はここ数年間、レフリーもそれぞれがバラバラに活動するのではなく、今まで以上に一体感や一貫性をもってチームとして活動していこう、ということに取り組んでいます。
泊まりで研修会をしたり、オンラインで毎週ZOOMミーティングをしたり、それぞれが全国各地で仕事をしながらレフリーをするなかで、それぞれがお互いの試合をチェックして、毎日のようにフィードバックをしています。
レフリーだけでなくアシスタントレフリー、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル/ビデオ判定) という役割もありますが、一番良いアウト・カム(結果、成果)を出すためにチームとして同じ目線、熱量を持って取り組んでいます。私たちレフリーが良いパフォーマンスを出し、皆さんが興奮するようなゲームの成立に、少しでも力になれたらと思っています。
文:多羅正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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