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大学日本一が決まる。第57回大学選手権がいよいよ決勝戦を迎える。
両校は選手権決勝では初対戦。準決勝では昨季対戦しており、早大が52-14で快勝している。
早大のプレー精度は極めて高い。
1/2 準決勝 帝京大学 vs. 早稲田大学
準決勝の帝京大学戦では特にラインアウト、モールの精度が光った。HO宮武海人の正確なスローイングから高速でモールを組み立て、しっかりと身体を密着させて前進する。
早大副将のLO下川甲嗣は準決勝後、関東対抗戦の早明戦でラインアウトが乱れた経験から「自分達のスキルにフォーカスすることに立ち返った」(LO下川副将)。伝統の早明戦を経て、ラインアウト等の精度が高まったと明かした。
分析力に優れるコーチ、スタッフ、相手のラインアウトを模倣するBチームの貢献も早大の推進力になっているだろう。
早大の別の大きな武器は、決定力あるバックスリーだ。切れ味鋭いWTB古賀由教、強靱なフィジカルも備えるWTB槇瑛人、独特の駆け引きから突破を量産するFB河瀬諒介。
大学屈指のトライゲッター達は「ボールを持ったらトライを取りにいく」(FB河瀬)というマインドで、フィニッシュの瞬間に狙いを定める。もちろん元陸上部のSH小西泰聖はボールをさばきながら、同時にショートサイドの隙間を探しているだろう。
天理大はどのエリアにも目を光らせなければならない。キッカーでもあるSO吉村紘も抜群の安定感。チームに落ち着きを与えている。
そして主将のNO8丸尾崇真はまさに大黒柱。
帝京大戦では再三のジャッカルでチームを救い、アタックでは弾性に富んだ足腰から力強い突進を繰り返した。
NO8丸尾主将が決勝戦でも躍動すれば、早大は大学日本一になった時に歌う部歌『荒ぶる』熱唱に近づく。
大学選手権での早大は、ここまで準々決勝で慶大に29-14、準決勝で帝京大に33-27。大勝が多い天理大と比べ、接戦の経験値では上回っているだろう。
一方の天理大は、拠点の奈良・天理市から上京しての大一番となる。
天理大は8月に新型コロナの集団感染が発生。苦難のシーズンを過ごしたが、関西Aリーグで5連覇を達成し、準々決勝で流通経済大学に78-17と大勝。
1/2 準決勝 明治大学 vs.天理
そして2年前の決勝戦で優勝をさらわれた明治大学に、準決勝で41-15でリベンジした。
明大に17-22で敗れた2年前の舞台は東京・秩父宮ラグビー場。
天理大の強力スクラムを築き上げた岡田明久FWコーチは、2年前のあの日、ロッカールームで引き上げてきた選手に声を掛けたが「目が血走って(声が)届いていなかった」と振り返った。
秩父宮に響き渡る“明治コール”に呑み込まれた苦い記憶。
しかし当時2年生だった主力選手が、いまや頼もしい最上級生となった。
本校執筆時点で出場メンバーは発表されていないが、もちろん全身で闘志を表現するハードタックラー、FL松岡大和キャプテンはピッチに立つだろう。
そして大学屈指のスクラムの猛者であるPR谷口祐一郎、PR小鍛治悠太。決定力に優れるHO佐藤康(3年)は、勝負所のラインアウトでも技術を見せたい。
そしてハーフ団はテンポをコントロールするSH藤原忍、落ち着いたプレーが光るキッカーのSO松永拓朗。
そしてCTBシオサイア・フィフィタは突進力はもちろんパス、キック、判断力にも優れるプレーメイカー。
トンガ出身だが日本語は堪能だ。地道に築いたコミュニケーション能力がプレーの幅を広げたのに違いない。
天理大のSO松永は準決勝後、2年前との違いをこう語った。
「2年前は未熟でした。今日(明大戦)はラインアウトの劣勢を見て、ボールの継続に(作戦を)変えることができました」
明大戦ではPKからのクイックスタートが効果的だったが、これも試合中の判断。戦況を見極め、状況にあった一手を共有し、体現する。
まさに2年前の敗戦を糧にして、天理大はスケールアップしている。
今こそ2年前、1年前の苦い経験を活かし、本拠地・白川グラウンドで積み重ねた努力を存分に見せる時だ。
CTBフィフィタは「練習から試合を意識してきました」とこれまでの日々を振り返った。その思い描いてきた試合が、目の前に迫っている。集大成だ。
早大はフィジカルバトルで差し込まれると厳しいだろう。さらにブレイクダウンを連取されると、天理大のSH藤原&SO松永の名コンビが、自在にテンポを生み出す。
また帝京大戦ではスクラム戦で認定トライを奪われており、スクラム戦は見どころのひとつになるだろう。ここで早大が奮闘すれば、天理大の強みをひとつ消すことになる。
展開の注目点は序盤戦。おたがいに「先に仕掛ける」マインドを持っており、どちらが先に主導権を握れるか。
早大は伝統的に“小よく大を制す”創意工夫を懲らして、どんな時も日本一を追い求めてきた。連覇への本物の執着心が生み出す“勝負手”が、決勝戦の舞台で初披露されるかもしれない。王者が最高の準備をしていることは間違いない。
一瞬たりとも見逃せない決戦「天理大学×早稲田大学」は、2021年1月11日(月)、午後 4時30分からJ SPORTS 1で放送、J SPORTSオンデマンドで配信される。
それぞれの熱い想いが、最高の舞台で激突する。
2021年1月11日は、日本ラグビー史に色濃く刻まれる歴史的な日になる。
文:多羅正崇
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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