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ラグビー コラム 2021年1月7日

トップリーグ唯一のプロレフリー「久保修平さん」ラグビートップリーグ担当レフリー特集

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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2021年1月16日(土)に開幕する「トップリーグ2021」の担当レフリーに迫るインタビュー企画。

今回お話を伺ったのは、日本ラグビー界を代表する現役プロレフリー、久保修平さん。

福岡県出身の久保レフリーは、1981年6月9日生まれの39歳。

第100回全国高校ラグビー大会(花園)にも出場した福岡・筑紫高でラグビーに出会い、川崎医療福祉大2年時にレフリーの道へ。’13年度まで支援学校の教員を務め、’14年度からはプロレフリーに。

トップリーグはもちろん’16年には日本人で初めて「スーパーラグビー」のレフリーを担当(第7節キングズ×ブルズ)し、欧州6か国対抗戦「シックスネーションズ」などでも経験を積み、’19年W杯では日本人史上4人目の審判団入り。アシスタントレフリー(AR)としてピッチに立った。

久保レフリー

そんな世界を舞台に活躍する久保レフリーが、開幕目前の「トップリーグ2021」の見どころ、そして身の危険を感じた海外試合など“レフリー裏話”もふんだんに明かしてくれた。

トップリーグは「またひとつレベルが上がった」「緊張感のある試合が増えるのでは」

――久保レフリーもマッチ・オフィシャル(審判団)として参加するトップリーグ2021がいよいよ開幕します。

参加チームの力が拮抗してきているので、観ている人がハラハラ、ドキドキするような緊張感のある接戦が増えてくるのではないでしょうか。

どのチームも積極的に補強をしていますし、マイケル・フーパー(トヨタ自動車/フランカー)など世界的なプレイヤーもたくさんやってきました。またひとつリーグ全体のレベルが上がった印象です。

“プチW杯”ではないですが、’19年W杯のアンコール的な大会になることを期待しています。

――トップリーグでは久保さんが唯一のプロレフリーですが、そもそもプロ転向のきっかけは?

仕事とラグビーのバランスが難しくなってきたことが大きな理由です。日本ラグビー協会がプロレフリーの育成に取り組むタイミングにも恵まれ、’14年からプロレフリーとして活動を始めました。

――ぜひ“プロレフリーの一週間”を教えてください。

現在はゲーム期に入ってきていますので(取材時は12月中旬)、土曜日にゲームがあった場合、日曜日は2、3時間をかけて映像を見ながら振り返りをして、ジムなどでリカバリーもします。

月曜日は私が個人的に契約しているS&Cコーチと共に、フィールドでランニング中心のトレーニングをします。また前の週にあった国際試合などを見て、プレイヤーの動き、レフリングなどを確認します。

火曜日はジムで下半身中心のウエイトトレーニング。その日も映像でラグビーのトレンドなどのチェックをします。

水曜日は整骨院などに行って身体のメンテナンスをしますが、同時進行で週末の試合へ向けた準備として、両チームがどんなプレーをしたいのかを確認します。
木曜日も45分ほど身体に刺激を入れ、金曜日にはジムで上半身中心のウエイトトレーニングをして、土曜日のゲームに備えます。これが公式戦シーズンに入ると、一週間の始めにトップレフリー全体の情報共有、といった作業も入ってきます。

久保レフリー

――トレーニングは週3、4日しっかりと行うのですね。

現代のレフリーはフィジカルと体力が求められてきています。年齢を重なることによるフィットネスの低下などを防ぐことを目的に身体のメンテナンスを行っています。

転機はユース世界大会の「ニュージーランド×アルゼンチン」

――国際経験が豊富な久保レフリーですが、日本人が国際舞台でレフリーをするために必要な資格があるのでしょうか?

海外でレフリーをするための特別な資格があるわけではありません。ただ15人制ではトップリーグで吹いていない人がいきなり海外に行くことは現実的に難しいです。ステップを踏みながら次に行く、という感じですね。

――ご自身はどのようにステップアップしたのでしょうか?

日本ラグビー協会として、特にニュージーランドと連携をしながら海外経験を積み、それから20歳以下のワールドカップへ行き、そこで認められればスーパーラグビーに行く、という流れが’19年までのステップでした。

私の場合は’15年の20歳以下のワールドカップでレフリングを見てもらう機会があり、そこでのパフォーマンスが認められ「スーパーラグビーで吹いてみませんか」と声が掛かりました。

ジャパンラグビー トップリーグ2021

大会概要 ~トップリーグ2021開幕スペシャル~

久保レフリー

――認められたレフリングはどのようなパフォーマンスだったのですか?

20歳以下のニュージーランド×アルゼンチンの試合でしたが、ニュージーランドの選手にイエローカードを出したことで試合が締まりました。

カードを出したことで、反則をしっかり見てくれているというアルゼンチンの信頼感に繋がりましたし、ニュージーランドの規律意識も高まりました。

日本人レフリーは特にゲーム・マネジメントが課題と云われるのですが、双方のキャプテンとコミュニケーションを取りながら、しっかりマネジメントできたということは自信に繋がりました。

試合中のポイントを抑えることができ、僕自身も良いパフォーマンスを出せたことでゲームを良い方向に持っていけた時は、レフリーとしてのやりがいを感じますね。

トライに匹敵する「レフリーにとってのビッグプレー」は?

――ちなみにですが、トライに匹敵するようなレフリーにとっての「ビッグプレー」はあるのでしょうか?

あまり僕らが目立つことはあってはいけないことです。

ただレフリーとしては、アドバンテージがトライに繋がると、インカムで「ナイス・アドバンテージだったね」と声を掛け合ったりすることあります。

反則が起きても展開を読んでプレーを止めず、結果的にトライが生まれた時は、レフリー冥利に尽きる瞬間ではあります。

――素朴な疑問ですが、中立の立場であるレフリーとして、着用する服の色がチームカラーとかぶらないようにしたりしますか?

ジャージの色はもちろんダメです。パンツの色は通常は黒ですが、気にはなりますね。

今週は天理大学と流通経済大学大学の試合のレフリーをしますが、両校のチームカラーが黒(天理大)と白(流経大)です。パンツは間をとって紺色にしておこうかな、などと考えてはいます(笑)。

スリランカで感じた身の危険。’15年W杯南アフリカ戦の秘話も。

――判定が勝敗を分けることもあるラグビーのレフリーですが、身の危険を感じたことは?

身の危険ですか(笑)。海外ですが、スリランカで行われた「スリランカ×フィリピン」の試合でしょうか。

僕自身の判定も少しクエスチョンが付いてしまうところがあったと思いますが、試合後に観客がグラウンドに入ってきました。とりあえずレフリールームに入ったのですが、(判定が不服だった観客が)ドアや部屋の壁を蹴ったりして、1時間くらい外に出られなかったことがありましたね。

――外国人レフリーとの交友関係も深いと思いますが、彼らから聞いた印象的なエピソードは?

これは’19年W杯の決勝戦を吹いたジェローム・ガルセスから聞いた話です。’15年W杯の日本×南アフリカの試合も彼が担当していました。

彼と「あの時の試合(日本が34-32で南アフリカに勝利)は凄かったね」と話をしていたんですが、彼は「凄かったのはゲームだけじゃないよ」と。

彼が試合後にレフリールームにいたら、ドアをノックする音がして、南アフリカのキャプテン(先発CTBジャン・デビリアス)が入ってきたそうです。試合に負けて何か言いにきたのかと驚いていたら、(デビリアスに)ビールを渡され「日本は勝利にふさわしかったし、君たちも素晴らしい仕事だった」「今日はありがとう」と言われ、皆でビールを飲んだそうです。

素晴らしいキャプテンは、フィールドの中だけでなく、フィールドの外でもそうした振る舞いができるのだなと感心したエピソードでした。

テストマッチは「名誉」。喜びと責任感を胸に。

――国同士の真剣勝負であるテストマッチも数多く経験されています。どのような心構えでピッチに立っていますか?

僕たちにとってはテストマッチが一番名誉なことです。僕の最初のテストマッチは中国×インドでしたが、国のプライドを懸けて戦うので、そうしたゲームを任されることはすごく喜びですし、強い責任感を覚えます。

だからこそ、任された以上はゲームをしっかりコントロールする。ラグビーには荒れる要素がたくさんあるので、ラグビーを正しくできるようにどうマネジメントしていくのか、という点は特に考えますね。

――久保レフリーのように海外で活躍する日本人レフリー、そして将来レフリーを目指す若者が増えてほしいですね。

私はプロとして活動していますが、他の皆さんがどうして仕事をしながらレフリーをしているかというと、間違いなく人生が楽しくなっているからです。

私もラグビーを通していろんな人に出会うことができました。それが一番ですね。また、いろんな国に行って、いろんな考え方に触れ、いろんなものを食べて――トータルですごく良い経験をさせてもらっています。レフリーになったことで間違いなく人生が豊かになりました。

今後はレフリーの面白さを現場以外のところでも伝えていけたらと思います。レフリーの面白さを知ってもらい、これからレフリーを志す人がひとりでも増えてくれたらと思います。

文:多羅正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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