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2020年12月27日に開幕した第100回全国高等学校ラグビーフットボール大会は、2021年1月5日、勝ち残った4チームがファイナリストを目指して準決勝に臨む。それにしても、凄まじい準々決勝4試合(1月3日)だった。
東海大大阪仰星vs. 東福岡(1/3第4試合)
特に第4試合の東海大大阪仰星対東福岡は、互いに認め合う者同士の死闘となった。ノーサイドの瞬間、時計は48分を過ぎていた。ペナルティーが連鎖したので終わらなかったのだが、実に18分のインジュリータイムである。21-21の引き分け。高校ラグビー史上に残る互角の好勝負だった。トライ数、ゴール数ともに同じだったため両キャプテンによる抽選の末、東福岡が準決勝の進出権を得た。この試合に敗者はいない。東福岡の永住健琉キャプテンは、封筒を開封し、出場権ありの文字を見たとき、こう思ったという。「嬉しい気持ちと、仰星のぶんも頑張って戦おうと思いました」。そして、仰星の近藤キャプテンに声をかけた。「仰星のぶんまで試合するから、応援してくれ」。どのチームもベスト8で花園を去ることになったチームや、家族やチームメイトとのことを思って戦うだろう。
2021年1月5日、第1試合は、京都成章対東福岡。京都成章は鉄壁のディフェンスで勝ち進んできた。1回戦から準々決勝までの4試合で失ったトライは1つのみ。「ピラニア・ディフェンス」とも呼ばれる防御網で、ボールキャリアーに対して、2人、3人の選手を群がり、攻撃を寸断する。攻撃面では、今大会屈指のSH宮尾昌典が卓越した戦術眼、周囲を活かすパスでディフェンスを翻弄する。193cmのLO本橋拓馬はチームの大黒柱だが、動きが悪いとすぐにメンバー変更。そんな選手層の分厚さもある。
対する東福岡は東海大大阪仰星との死闘の疲れがとれているかどうか、FB坂本公平ら負傷者が戻れるかどうかが気になるところ。体重117kgのPR本田啓がスピーディーに突進するなど個々の能力は高く、長い距離を繋ぎきってトライを奪う力もある。京都成章のディフェンスと東福岡のアタック。その攻防は見応えがありそうだ。
第2試合では、大阪朝鮮高と桐蔭学園が対戦する。このカードを聞いて第90回大会の準決勝、松島幸太朗(当時、桐蔭学園)の100m独走トライを思い出す人は多いだろう。大阪朝鮮は過去2度ベスト4に進出しているが、いずれも桐蔭学園に敗れている。いわば因縁の対決だが、今大会の大阪朝鮮は前評判は高くなかった。「一戦一戦、一日一日成長している」(権晶秀監督)という言葉通り、勝つたびに力をつけてきた。平均身長175cm、平均体重90kgと大きなチームではないが、準々決勝では、平均身長180cm、平均体重101kgの流経大柏を破った。献身的に体を張る選手が揃うのは強み。FB金昂平(キム・アンピョン)のスピードとステップワークは相手チームにとって脅威だ。
桐蔭学園vs. 御所実業(1/3第2試合)
連覇を狙う桐蔭学園も試合ごとに調子を上げている。準々決勝では試合巧者の御所実業から8トライを奪い、50-7で勝利した。NO8佐藤健次キャプテンの突破力は定評のあるところだが、それ以外の選手の能力も覚醒してきたように見える。藤原秀之監督はPKからの速攻でトライをあげたSH伊藤光希について、「開花しつつある。小西泰聖(現・早稲田大)よりも短距離は速いですよ」と話す。チーム全体についても「3週間でずいぶん変わりました。ここにきて、ゲームを覚えて来たし、大きく見えてきた。成長していると思います」と手ごたえを感じているようだ。佐藤キャプテンが、準々決勝でMVPにあげたPR田中諒汰は、186cm、130kgの体格でモールの軸になる。FW戦で圧力をかけたい。
総合力では桐蔭学園が優位だ。大阪朝鮮としては、守り切るのではなく、いかに攻め切るかが勝利の鍵だ。桐蔭学園が連覇に王手をかけるのか、大阪朝鮮が初の決勝進出を果たすのか。準々決勝からさらに成長を感じる好試合を期待したい。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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