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決勝に駒を進めた早稲田
1月2日(土)、東京・秩父宮ラグビー場で、第57回ラグビー全国大学選手権の準決勝2試合が行われた。第1試合は連覇を目指す早稲田大学(関東大学対抗戦2位)と、3年ぶりの王座奪還を狙う帝京大学(関東大学対抗戦4位)が激突した。
今シーズン、対抗戦での両者の対戦は早稲田大学が45-29で快勝している。しかし、帝京大学も大学選手権の準々決勝で、関東大学リーグ戦王者の東海大学に14-8で勝利して勢いに乗っており、接戦が予想された。
早稲田大学は準々決勝の慶應義塾大学戦から、先発のメンバーはFW(フォワード)1人のみの変更に留めた。LO(ロック)大崎哲徳(4年)を先発に復帰させ、桑田陽介(3年)がリザーブに回った。
早稲田大学としては対抗戦での対戦と同様、接点で上回り、決定力のあるBK(バックス)でトライを取り切りたいところだった。
帝京大学は、東海大学戦から先発はLOアレクサンダー・マクロビー(2年)に替わって山川一瑳(2年)、WTBをスピードスターの木村朋也(4年)から、突破力のあるミティエリ・ツイナカウヴァドラ(2年)、そして平坂海人(4年)から大藪洸太(2年)とFW1人、BK2人と3人を変更した。
帝京大学としては前の試合から、中心選手であるPR(プロップ)細木康太郎(3年)、CTBニコラス・マクカランが復帰しており、接点とセットプレーでプレッシャーをかけたいところだった。
試合は約8200人の観客が見守る中、試合は早稲田大学ボールでキックオフされた。先手をとったのは「紅い旋風」こと、帝京大学だった。前半4分、早稲田大学のコラプシングでペナルティを得た帝京大学は、FB(フルバック)奥村翔(4年)がPG(ペナルティゴール)を決め、3点を先制する。
だが、早稲田大学もすぐに取り返す。相手の反則から6分、ゴール前のラインアウトからモールのチャンスを得て、BKの選手も入って押し込み、最後はHO(フッカー)宮武海人(3年)がトライ。SO(スタンドオフ)吉村紘(2年)のゴールも決まり、7-3と逆転する。
前半、早稲田大がモールで2トライを挙げた
帝京大学も20分、相手の反則から再びFB奥村のPGで6-7とし、点差を詰める。しかし、24分、早稲田大学はまたしてもラインアウトからモールでゴールラインに迫り、最後は再びHO宮武がトライ。SO吉村のゴールも成功し14-6と再び突き放す。
さらに33分、早稲田大学は相手陣深くのラインアウトを起点にボールを継続し、FB河瀬諒介(3年)が相手のギャップを突いてトライ。ゴールも決まり21-6とリードを広げる。
個人技で2トライを挙げた早稲田大FB河瀬
これ以上離されたくない帝京大学は、前半終了間際の43分、スクラムを押し込んで早稲田大学のコラプシングの反則を誘い、ペナルティトライで7点を返し、13-21と8点差として折り返した。
後半、互いに先に得点をしたかったが、最初にトライを決めたのは早稲田大学だった。後半7分、自陣10mラインのラインアウトから早稲田大学は大きく左に展開し、CTB伊藤大祐(1年)が突破。FB河瀬につないで、最後はWTB(ウィング)古賀由教(4年)がサイドライン際を走り切ってトライ。ゴールも成功し28-13と再び点差を15点差とした。
トライを挙げた帝京大CTBマクカラン
帝京大学もすぐに反撃。13分、ボールを継続して前進し、CTB(センター)ニコラス・マクカラン(4年)がディフェンスをかわして中央右にトライ。FB奥村のコンバージョンも決まって20-28と追い上げる。
その後は早稲田大学がボールを継続してアタックを続ける。そして22分、相手のドロップアウトからラックを形成した後、ハーフウェイライン付近から左に展開。CTB長田智希(3年)が流れたところを、FB河瀬が縦に入ってきて、そのまま50mを走り切ってトライ。早稲田大学が33-20と再び引き離した。
逆転を狙いたい帝京大学は、残り10分ほど相手陣奥で攻撃を続けるが、早稲田大学も粘り強いディフェンスを見せて、なかなか得点を許さない。試合終了間際、帝京大学はスクラムからCTB尾崎泰雅(4年)がトライを返したが、そのままノーサイドを迎えた。結果、連覇を狙う早稲田大学が33-27で今シーズンも決勝の舞台へと駒を進めた。
王座奪還がならなかった帝京
敗戦した帝京大学の岩出雅之監督は「学生たちはしっかりゲームを運んでくれたと思います。(モールでやられたところは)精度不足だった。最後の最後まで、サヨナラ逆転ゲームを描いていましたが、そこに至らず残念です。しかし、学生たちのここまでの頑張りを讃えたいと思いますし、早稲田大学の決勝での活躍を応援したいと思います」と悔しそうに話した。
ゲームキャプテンを務めたFB奥村は「コネクションのミスでトライを取られる場面や、1対1のタックルで外されてしまった。(それでも)ブレイクダウンでは自分たちが練習してきたことを出し切ったので悔いはない」。
また、CTB尾崎は「優勝を経験している4年生がいる中で優勝できなかったことは後輩たちに謝りたい。(卒業するまで)自分たちができることを後輩たちにしっかり伝えていけたら」と話した。
勝利した早稲田大学の相良南海夫監督は「(対抗戦の)早明戦からもう一度自分たちがやってきこと、基本に戻って積み上げてきました。(今日の試合は)最後まで拮抗する試合だから、我慢強く、自分たちを信じて戦え、とハーフタイムに送り出しましたが。選手たちはやり切ってくれた。いいディフェンスしてくれた。身体を張ってくれた」と選手たちを称えた。
キャプテンNO8(ナンバーエイト)丸尾崇真(4年)は「激しい、厳しい試合になることは想定していた。その中でも戦い続けることができたのがよかった。1日1日を大事にして、決勝まで積み上げて、もう一度『荒ぶる』を歌いたい」と話した。
また、2トライを挙げたFB河瀬は「スペースを見てアタックができていた。1年間を通してディフェンスを積み上げてきた。最後1試合なのでいい準備できたら」と決戦を見据えた。
フィジカルバトルで互角に戦いつつ、チャンスをしっかりものにした早稲田大学が接戦を制して決勝に駒を進めた。1月11日(月・祝)、昨シーズンに続いて新しい国立競技場で行われる決勝戦の相手は、明治大学を破った関西大学王者の天理大学となった。
早稲田大学が準決勝と同じように接点、セットプレーのフィジカルファイトに勝利し、チャンスでしっかり取り切って2007年度、2008年度以来となる大学選手権の連覇を達成できるか。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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