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反則を誘い声を上げる天理FL松岡主将
1月2日(土)、東京・秩父宮ラグビー場で第57回ラグビー全国大学選手権の準決勝2試合が行われた。第2試合は王座奪還を目指す明治大学(関東大学対抗戦1位)と、初優勝を狙う天理大学(関西大学リーグ1位)が激突した。
両者は2シーズン前の大学選手権の決勝で対戦し、明治大学が22-17で勝利し、22年ぶり13度目の優勝を果たした。明治大学としては、関西リーグ5連覇中の天理大学を下して優勝に向けて弾みをつけたい。天理大学としては2シーズン前のリベンジを果たし、悲願の初優勝に一歩近づきたいところだった。
明治大学は準々決勝の日本大学戦の先発から、右PR(プロップ)の村上慎(3年)を大賀宗志(2年)に替えたのみで、23人のメンバーは同じだった。キャプテンのNO8(ナンバーエイト)箸本龍雅(4年)、LO(ロック)片倉康瑛(4年)と高橋広大(4年)、FL(フランカー)繁松哲大(4年)といった4年生を中心としたFW(フォワード)。
BK(バックス)陣は、SO(スタンドオフ)森勇登(4年)、CTB(センター)廣瀬雄也(1年)、7人制ラグビー日本代表候補のWTB(ウィング)石田吉平(2年)ロングキッカーのFB(フルバック)雲山弘貴(3年)らといったメンバーで臨んだ。
一方の天理大学は、体調不良のFB(フルバック)江本洸志(3年)から急遽、江本の小・中学校の先輩の國本茂孝(4年)に変更となったが、それ以外の先発14人はキャプテンFL松岡大和(4年)、CTBシオサイア・フィフィタ(4年)ら準々決勝の流通経済大学戦と同じメンバーで臨んだ。
得意のセットプレーでプレッシャーをかけたい明治大学と、しっかりとディフェンスからリズムを作りたい天理大学。決勝進出をかけた互いに負けられない一戦は、9000人のファンが見守る中、14:45にキックオフされた。
トライを挙げる天理WTB土橋
キックオフからマイボールをキープして相手陣に攻め込んだ天理大学は、前半2分、CTBフィフィタの突破からさらに前進し、SO松永拓朗(4年)のロングパスを受けたWTB土橋源之助(4年)が右隅にトライを挙げて、5点を先制する。
トライを挙げる明治WTB石川
明治大学も敵陣で攻撃を仕掛けるが、相手のディフェンスに阻まれて得点できない。やっと24分、連続攻撃からLO高橋のランで前進し、オフロードパスを受けたWTB石川貴大(4年)が右隅に押さえて、5-5の同点とする。
しかし、その後は天理大学がSH(スクラムハーフ)藤原忍(4年)を中心にテンポよくアタックすると、なかなか明治大学は止めることができない。29分、連続攻撃から最後はHO(フッカー)佐藤康(3年)が押さえてトライ。SO松永のゴールも決まり、12-5と再びリードする。
さらに、36分、天理大学がスクラムでペナルティを獲得すると、SH藤原が相手の隙を見てタップし、LOアシペリ・モアラ(3年)がそのままインゴールに飛び込んで19-5。前半は天理大学が14点差をつけて折り返した。
後半、先にトライを挙げた天理SO松永
後半、すぐに差を縮めたかった明治大学だったが、後半3分、逆に天理大学がターンオーバーから攻め込み、SO松永が蹴ったグラバーキックが相手にあたり、再び確保。そのまま走りきってトライを挙げて24-5とする。
さらに10分にはモールを押し込み、最後はラックサイドをHO佐藤が突いて再びトライを挙げ、天理大学が31-5と大きくリードする。しかしこの後、残り時間が30分ほどあったため、明治大学も積極的にボールを継続して攻撃を仕掛けていく。
13分、FB雲山のトライで5点を返すと、16分にはWTB石川がディフェンスを跳ねのけて2本目のトライ。いずれもCTB廣瀬のゴールが決まらなかったが、15-31と追い上げを見せる。
しかし、天理大学は冷静に25分にSO松永がPG(ペナルティゴール)を決めると、33分にはCTBフィフィタの突破から、右外にいたWTB土橋にパスし、土橋がそのまま押さえ、41-15として試合を決めた。
明治大学も意地を見せようと、ロスタイムに相手ボールのスクラムでペナルティを誘い、スクラムを選択してトライを狙う姿勢を見せたが、そのまま41-15でノーサイド。天理大学が2シーズン前の決勝のリベンジを果たし、3度目の決勝に駒を進めた。
敗れた明治大学の田中澄憲監督は「一言で言うと完敗です。天理大学がすべてにおいて強かった。明治も最後に自分たちがやってきたスクラム、モールとチャレンジしてくれたことに誇りに思います。今季はいろんな大変な状況の中で学生たちがよく頑張ってくれた」と選手たちをねぎらった。
ゲインする明治NO8箸本主将
NO8箸本主将は「こっちが準備していたアタックをさせてもらえず、(相手の)速いテンポで、こっちのペナルティを誘われて、終始、厳しい状況でラグビーをさせられました。良かったとは言えないですが、最後まで戦う姿勢をやりきれたので出し切ったという感じです」と前を向いた。
BKリーダーのSO森も「悔しいという気持ちが一番強い。最後まで自分のプレーはしっかり出し切れたと思うので、そこには悔いはない」と気丈に話した。
勝利した天理大学の小松節夫監督「強い明治大学に対して、どれだけチャレンジできるか、ディフェンスでどれだけプレッシャーかけるか、セットプレーでどれだけ対抗できるかを考えてながら、しっかり準備して試合に臨んだ」。
「ディフェンスでプレッシャーをかけられたことが勝因だと思います。スクラムもFWが頑張って、ラインアウトは前半苦労したが、それ以外はうちの圧力が通用した」と振り返った。
FL松岡主将は「めちゃくちゃ嬉しい。23人のメンバーだけでなく、メンバー外も含め、天理のメンバー全員が明治大学戦に向けていい準備できたことが結果に現れたと思います。決勝に向けて、今年1年辛い思いしてきたメンバーや、支えてくれた方たちの分も背負って優勝したい」と破顔した。
突破する天理CTBフィフィタ
副将のCTBフィフィタも「最初からマークされているのがわかっていたので、周りをうまく使うことを意識して練習してきましたが、それができたのでよかった。最後の大学の試合、自分のすべてを出し切りたい」と意気込んだ。
2年前の決勝で敗戦した明治大学に真っ向勝負で臨み快勝した天理大学、1月11日(月・祝)、新しい国立競技場で対戦するのは、連覇がかかった早稲田大学(関東大学対抗戦2位)となった。天理大学にとっては2011年度、2018年度に続いての決勝となる。3度目の正直で天理大学が悲願の初優勝を飾ることができるか。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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