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接点では激しい戦いとなった
最後まで勝負のわからない熱戦となった。
10月31日(土)に開幕した、南半球3か国対抗戦「トライネーションズ2020」。11月21日(土)は第4戦、「ロス・プーマス」こと、アルゼンチン代表と「ワラビーズ」こと、オーストラリア代表がオーストラリアのニューキャッスルで対戦した。
先週の試合が今大会、そして今年初のテストマッチとなったアルゼンチン代表は、「オールブラックス」こと、ニュージーランド代表に、30回目の挑戦で25-15と歴史的な勝利を挙げた。
その勢いのまま、今週のオーストラリア代表戦には、キャプテンのFL(フランカー)パブロ・マテーラをはじめ、オールブラックス戦で全25得点を挙げ、MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝いた、SO(スタンドオフ)ニコラス・サンチェス、WTB(ウィング)フアン・イモフ、バウティスタ・デルグイなど、先週と全く同じ15人で臨む予定だった。
だが、SH(スクラムハーフ)トマス・クベリが右膝のケガのため、ゴンサロ・ベルトラノウが9番をつけ、フェリペ・エスクラがベンチに入った。そしてリザーブには先週ケガをしたWTBエミリアーノ・ボフェリの他に、LO(ロック)ファクンド・イサ、HO(フッカー)サンティアゴ・ソシーノと経験値の高い選手が入った。
一方のオーストラリア代表は2戦連続でオールブラックスと対戦し、初戦は5-43と大敗したが、11月7日(土)に行われた2戦目は意地を見せて、24-22と競り勝った。
先週は試合がなく休養十分のオーストラリアは、アルゼンチンのFW(フォワード)対策として、PR(プロップ)は経験豊富なスコット・シオと、前回決勝のトライを挙げたタニエラ・トゥポウと重量のある選手を起用。
FLはネド・ハニガンが先発に復帰し、キャプテンのマイケル・フーパーとコンビを組んだ。さらに5人のFWをリザーブに置き、113kgのFLロブ・ヴァレティニ、101kgのリアム・ライトと、23歳のバックロー2人をベンチに入れた。
ともに難敵オールブラックスを撃破し、勢いに乗って連勝し、優勝に大きく近づきたい両者の対戦は、初夏のニューキャッスル、マクドナルド・ジョーンズ・スタジアムでキックオフされた。
試合序盤から、ホームの声援を受けたオーストラリア代表はSHニック・ホワイトを中心にテンポの良いアタックを仕掛ける。前半4分、相手の反則からSOリース・ホッジがPG(ペナルティゴール)を決めて、3-0と先制する。
だが、アルゼンチン代表もすぐに反撃。HOフリアン・モントーヤがジャッカルを決めると、SOサンチェスが落ち着いてPGを沈めて、3-3の同点に追いつく。
この後はワラビーズの敵陣でのプレーが続く。16分、CTB(センター)ハンター・パイサミのグラバーキックを、CTBジョーダン・ペタイアがインゴールで押さえたかに見えたが、TMO(テレビマッチオフィシャル)の末、ラインを踏んでいたという判定になりノートライとなる。
すると32分、アルゼンチン代表は再びSOサンチェスがPGを決めて、6-3と逆転に成功するも、36分、すぐにオーストラリア代表もSOホッジが、PGを返して6-6の同点に追いつく。
その後、ワラビーズはモールを軸に攻撃を何度も仕掛けるも、アルゼンチン代表の気迫のディフェンスの前に、なかなかインゴールを割ることができない。
ロスタイムにもFB(フルバック)トム・バンクスのラストパスがスローフォワードの判定となり、再びノートライ。それでも前半終了間際にSOホッジが中央からのPGを決めて、オーストラリア代表が、9-6と逆転してハーフタイムを迎えた。
後半5分、前半から接点でやり合っていた両チームだったが、アルゼンチン代表HOモントーヤが、反則の繰り返しによりシンビン(10分間の一時的退室)となる。そのペナルティからオーストラリア代表SOホッジがPGを入れて、12-6とリードを広げる。
数的有利のワラビーズは17分、再びSOホッジのPGで15-6と9点差とした。しかし、アルゼンチン代表のディフェンスを崩せず、24分は逆にSOサンチェスに50mのPGを決められて、15-9とされてしまった。
トライネーションズ2020
【ハイライト】アルゼンチン vs. オーストラリア
さらに試合終盤になっても接点でファイトし続けたアルゼンチン代表は28分、31分とSOサンチェスがPGを決めて、ついに15-15の同点に追いつく。
その後は、一進一退の攻防が続く。38分、オーストラリア代表は左中間、45mほどのPGのチャンスを得たが、そこまで5本すべて決めていたSOホッジが外してしまい、勝ち越すことができない。
ロスタイムにアルゼンチン代表はキャプテンFLマテーラが裏にキックするが、トライに結びつけることができず、そのまま15-15でノーサイドを迎えた。
引き分けに持ち込んだアルゼンチン代表キャプテンFLマテーラは「今日は勝てなかったが、私たちは自分たちがやっていること、そして自分たちが準備してきたことを信頼している。すべて自分たちが自分たちの思う通りだったわけではないが、ディフェンスや仲間を信頼している」。
「オーストラリアの戦い方は予想通りだった。フィールドでたくさんボールを動かしてきた。こんなにペナルティをするとは考えていなかったが、それでも諦めることはなかった。大事なのは最後までチームでプレーをすることで、私たちはチャンスがあればそれを見逃さないということだ」と胸を張った。
この試合も5本のPG決めたSOサンチェスは「妙な気分だ。引き分けだったが、私たちの良いところはあまりなく、オーストラリアはしつこかった。もっと良いパフォーマンスができると考えていたので、次に向けてもっと改善しないといけない。この試合から学んで立て直す必要がある」と冷静に話した。
そしてマリオ・レデスマHC(ヘッドコーチ)は「まず初めに、選手、スタッフ、全ての人たちをとても誇りに思う。あのようなエモーショナルな先週の試合の後、準備は簡単なものではなかった。今日は当日移動と言うこともあったし、それでもこの間と同じ努力をしてもらわなければならなかった」。
「オーストラリア代表はそれが分かっているので、そこにつけ込んで我々に対応できないようにした。だが、私たちにとって起こることは相手にも起こること。いささかフェアではないかもしれないが、今日の試合は勝ちに等しい。選手たちの精神的な頑張りを褒めたい」。
さらに「後半は3つのペナルティから始まり、イエローカードももらってしまったが、選手たちは自分たちを信じ続けた。スコアでプレッシャーをかけようとして、後半最初のPGで3点をとった。全員がハードワークして、よくディフェンスした。だから私はとてもハッピーだ」と選手たちを称えた。
一方で、チャンスをたくさん作りながらも勝利できなかったオーストラリア代表キャプテンFLフーパーは「悔しい。ポゼッションもテリトリーも僕らが優位だった。ただ正確さが足りなかった。試合のいくつかの面ではとても満足しているが、後半のペナルティが非常に残念だ」。
「ゲームプランにこだわることは難しかった。やろうとしていることをもっとしっかりと遂行したかった。だが、雨が降ることは想定していなかったし、前半があんなにウェットになるとも思っていなかった。これだとFWで押すことは難しい、とにかく粘り強くすることのみだった」と悔しそうに話した。
就任2勝目を挙げることができなかったオーストラリア代表デイブ・レニーHCは、「アルゼンチンがトライできるような感じは一切なかった。非常にストレスが溜まってとても残念な試合だ。15-6になった時、私たちはゲームをコントロールしていた。ここで試合を決めることができた。だが結局、相手をゲームに戻してしまった。これは自分たちの責任だ」。
また、「ディフェンスはよかった。しかし、前半すぐに得点できていたら試合に勝つことができたはずだ。だが、アルゼンチンに多くのタックルを喰らってしまった。来週のニュージーランドとアルゼンチン戦を見て、最終戦に向けて準備したい」と先を見据えた。
アルゼンチン代表は1勝1分で、ニュージーランド代表、オーストラリア代表と勝ち点6で並んだが、得失点差で2位につけた。来週11月28日(土)に、今日と同じニューキャッスルで、ニュージーランド代表と対戦する。
オーストラリアは1勝1分1敗となり勝ち点6となったが、得失点差で現在3位となった。1週休みを挟んで、12月6日(土)にアルゼンチン代表とシドニーで最終戦を戦う。大差で勝利すれば優勝する可能性も出てきた。
いずれにせよ、「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」も残り2試合、優勝争いは最後までわからなくなってきた。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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