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今シーズンの前半は、新型コロナウイルスの影響で全ての大学が活動自粛を余儀なくされた。各々段階的に練習を再開していた8月には、天理大学ラグビー部内でクラスターが発生。リーグ戦の開催自体が危ぶまれていた。
そんな中、変則的ではあるがなんとかこぎ着けた公式戦開幕戦。試合前関係者がスタンバイするエリアでは「なんとかここまで来られて良かった」という言葉が何度も聞こえてきた。
待ちに待った開幕戦は、鶴見緑地球技場で12:00にキックオフ。開場前から多くのファンが長蛇の列を作り、感染対策として間隔をあけての着席とはいえチケットは完売した。
相手は3週間前の練習試合で快勝している立命館大だが、昨シーズン終盤に手痛い敗戦を喫した因縁の相手でもある。伊藤監督も選手たちに「必ず練習試合通りにはならない。80分終わった時に1点勝っていればいい」と話していたそうだ。
序盤のスクラムでの攻防
前半3分、京産大は敵陣でマイボールのファーストスクラムを得る。相手と上手くかみ合わなかった影響もあり、そこから実質6分ほどスクラムを組み続けた。ペナルティを得ても強気の姿勢で組み直しを続けたが、最後は逆にペナルティを犯してしまう。
立命館大全体のスクラムへの執念は凄まじかった。一度組み直しになるたびにほぼ全員が大きな声で自らを鼓舞し、ペースを渡さない。一方、京産大はスクラムが崩れると円になって意見を出し合うなど、対照的な両チームの姿が印象に残った。
前半14分、京産大はSO(スタンドオフ)西仲隼(近大付属)が22mラインから相手のギャップを突き、抜け出してそのままトライ。ゴールも決まって7-0と先制する。直後の18分に7点を返され同点になるも、24分にラックからHO(フッカー)梅基天翔(高岡第一)が飛び込み再びリード。
ラグビー 関西大学リーグ2020
【ハイライト】京都産業大学 vs. 立命館大学
LO(ロック)アサエリ・ラウシ(日本航空石川)のパワフルな突破で会場が湧き、チームとしても前に出るディフェンスで相手を攻撃しながら下がらせるなど、試合は京産大ペースになると思われたが、30分と前半ロスタイムに連続失トライし、14-19で折り返す。
後半開始早々にもトライを許し、14-24と10点差になってしまう。京産大も後半7分に得意のラインアウトモールから、梅基天翔が今日2つ目のトライを奪うが、直後にペナルティゴールを決められ、なかなか差を縮めることができない。ブレイクダウンで立命館大のプレッシャーに耐え切れず、ボールを取られるシーンが目立った。
そんな流れを変えるプレーが生まれたのは後半24分。昨シーズンはSOでのスタメンが多かったが、今シーズンインサイドCTB(センター)に入っている家村健太(流経大柏)がショートパントを相手の背後に蹴り、自らキャッチし抜け出すと倒れ込みながらパス、それを受けたCTBニコラス・ホフア(札幌山の手)がトライを決めて1点差になった。
決めれば逆転のゴールは、ここまでパーフェクトの西仲隼だったが、外してしまう。残り10分で1点差。キャプテンFL(フランカー)田中利輝(東海大仰星)は「なかなかマイボールにならないので焦っているチームメイトもいたが、ロスタイム(4分)も含めて、まだ時間があると分かっていた」と振り返る。
辛抱強くディフェンスを続け後半42分、ついに敵陣でペナルティを獲得する。伊藤監督はスタンドから無線で「キックでPG(ペナルティゴール)を狙え!」と叫ぶが、選手たちはトライを狙う選択をするという、2015年ワールドカップを彷彿とさせるようなやり取りの後、京産大ボールのラインアウトモールが組まれる。
ラストプレーで逆転トライ
モールは途中で崩れるも、そこからFW(フォワード)が近場を攻め、じりじりと前に出て、最後は途中出場の1年生FL三木皓正(京都成章)がトライ。ラストプレーでのサヨナラトライに、選手たちは抱き合って喜び、スタンドは拍手に包まれた。ゴールも決まり、33-27となった所でノーサイド。京産大は苦しみながら初戦をものにした。
伊藤監督は「ザ・開幕戦。ヒヤヒヤしましたが、勝てて良かった」と笑顔。立命館大の中林監督は「最後の最後で京産大が上だった」と悔しがった。京産大キャプテンの田中利輝は「勝つために用意していたプレーは沢山あったが、相手のプレッシャーに押されてできなかった。次戦も気を抜かずに頑張ります」と振り返った。
決勝トライの三木皓正が記者会見で「ガムシャラにプレーした。あのトライは全員で取ったトライ。自分はラッキーボーイです」と話すと、すかさず伊藤監督が「自分で言うか」とツッコミを入れる。緊張の開幕戦は笑顔で幕を閉じた。
文:岩田悠吾/写真:朝倉力(京産大アスレチック)
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