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「オールブラックス」こと、ニュージーランド代表と「ワラビーズ」こと、オーストラリア代表のライバルが激突する「ブレディスローカップ」第2戦は、10月18日(日)ニュージーランド・オークランドのイーデンパークで行われた。
先週、ウェリントンで行われた初戦は、お互いのヘッドコーチ初戦ということも相まって、互いの意地とプライドが激突し16-16のドロー。そして今週の第2戦はワラビーズが、34年ぶりにオークランドの地で、オールブラックスを破るのか、それともオールブラックスが今年最後のホームでのテストマッチを白星で飾ることができるかに注目が集まった。
オールブラックスは、試合前に、リザーブに入っていたCTB(センター)リーコ・イオアネが太ももをケガしたため、急遽欠場。ピーター・ウマンガ ジェンセンがベンチ入りし、初キャップの機会を伺うこととなった。一方ワラビーズの20歳のNO8(ナンバーエイト)ハリー・ウィルソンは軽い胃腸炎で、前日練習を欠席したが、特に問題はなく出場した。
第1戦の引き分けを受け、オーストラリア代表のデイヴ・レニーHC(ヘッドコーチ)が、「オールブラックスの連勝を止めるのは私たちだ」と打倒オールブラックスに自信をのぞかせ、さらにブレイクダウンでプレッシャーをかけるために、来年から日本の栗田工業でのプレーが決まった、接点に強いFL(フランカー)ネド・ハニガンを先発で起用した。
イーデンパークの不敗神話は継続
気温は20度ほどと汗ばむような暑さの中、チケットは完売し、4万6049人の観衆で埋まった。オールブラックスが踊る試合前のハカ「カパ・オ・パンゴ」を、先週と同じくU字の隊形でワラビーズは迎えた。ボルテージも最高潮になった中、試合はキックオフされた。
序盤は、先週の試合から勢いを継続しているワラビーズがスクラムで優位に立ったこともあり、積極的に攻め込む。前半8分、PR(プロップ)タニエラ・トゥポウが、あと1mまで迫り、LO(ロック)ルーカン・サラカイアロトが拾い上げトライしようとしたが、昨年のニュージーランド最優秀選手だったNO8アーディー・サヴェアに阻まれてしまう。
その後も激しいブレイクダウンの攻防が続き、15分を過ぎまで試合は動かなかったが、18分、オールブラックスはFB(フルバック)ボーデン・バレットの鋭いカウンターアタックからPG(ペナルティゴール)を獲得し、SO(スタンドオフ)リッチー・モウンガが25mのキックを難なく決めて、3点を先制する。
さらにオールブラックスはFBバレットのキックで敵陣奥に攻め込み、24分、スクラムを起点にCTB(センター)ジャック・グッドヒューがゲイン、ラックサイドをSH(スクラムハーフ)アーロン・スミスが突いてトライ。ゴールも決まり10-0とリードを広げる。
31分、ワラビーズもFLハニガンが抜けだし、FL(フランカー)マイケル・フーパーにつないで、最後は左に数的優位を突き、WTB(ウィング)マリカ・コロインベテがトライ。SO(スタンドオフ)ジェームズ・オコナーがゴールを決めて7-10と3点差に迫る。
前半終了間際、ワラビーズのCTBマット・トゥムーアが負傷交代。替わりに入ったジョーダン・ペタイアがアウトサイドCTBに、ハンター・パイサミがインサイドCTBにシフトした。その後は、両者ともに追加点を奪うことができず10-7とオールブラックスリードで前半を折り返した。
後半開始早々、大観衆のホームのファンの前で負けられないオールブラックスが猛攻を仕掛ける。4分、ラインアウトを起点にFW(フォワード)、BK(バックス)一体となってボールを継続し、最後はCTBグッドヒューからWTBジョーディー・バレットにつないで15-7とリードを広げる。
さらにオールブラックスは8分、相手ボールを自陣でキャッチしたWTBケイリブ・クラークが相手のタックルをかわしつつ、倒れても再び立ち上がり50mほどゲイン。ラック形成後、左に展開し、NO8サヴェアがグラウンディングし、20-7とした。
その後、オーストラリアも負けじと相手インゴールに迫るが、WTBコロインベテはグラウンディングできず、モールを押した後、HOブレンダン・パエンガ アモサがトライしたかと思われたが、TMO(テレビマッチオフィシャル)の末、ダブルモーションの判定でトライにならなかった。
ラグビー ブレディスローカップ 第2戦
【ハイライト】ニュージーランド vs. オーストラリア
その後、オールブラックスラックスは再び攻勢に転じて、15分、ボールを展開する中でLOパトリック・トゥイプロトゥが抜けだし、キャプテンFLサム・ケインにオフロードでパスをつなぎ、そのままケインが走り込んでトライ、ゴールも決まって、27-7と大きくリードすることに成功する。
その後も攻め込むが、お互いの守備への意識が高く、両チームともゴールラインを割ることができずに、そのままノーサイド。ブレディスロー・カップ2戦目はオールブラックスが27-7と快勝した。
結局、オークランドでのオールブラックス不敗神話は敗れることなはなく、ニュージーランド人でワラビーズのレニーHCは「オールブラックスはどの場所でも、多くのテストマッチを落とすことはない。彼らは長い間、ここでかなりの成功を収めてきたのは明らかだが、私たちが今週話していたように、彼らはいつかここで負けるだろうし、私たちはそれが今週の日曜日であることを願っていた」。
「ハーフタイムまでは7-10だったので、私たちはこれでまだいけると思っていた。プレッシャーもよくかけていた。先週は最小限のミスにとどめた。ミスしないことは、オールブラックスに対して非常に大事なことだが、今日はミスが多く、タックルの精度も低かった。双方ともミスは多かったが、私たちの方が致命的だった」と肩を落とした。
キャプテンのFL(フランカー)マイケル・フーパーは、「今週はたくさんのことを準備してきた。私たちは、チームが変わる素晴らしい機会だと思ったが、そうはいかなかった」。
「試合の早い段階でニュージーランドにプレッシャーをかけることができたし、後半も2度ほどトライを防ぐことができた。だが、ターンオーバーを許してしまうと得点を与えてしまう。それでも、チームはとてもいい雰囲気でトレーニングできているし、次のオールブラックスとの2試合をホームで戦うので、まだこれから」と前を向いた。
就任して初白星となった、オールブラックスのイアン・フォスターHCは「今週、みんながまだ十分ではないということ、満足できないことを認識した上で準備に取り組んだことがよかった。今日は気分がいい」。
「まずは必要なレベルには達したし、ブレディスローカップ、ザ・チャンピオンシップと難しい試合が続くので、とにかくレベルを上げていかないといけない。ここ最近の中では特に素晴らしいワラビーズだったので、80分間戦わなければならなかった」と勝利に安堵しながらも、気を引き締めた。
キャプテンのFLケインは、「今日は明確なゲームプランを持って試合に入っていった。選手たちはみんなステップアップできていて、それをきちんと遂行できた。第1戦よりもFWがコンタクトできていた」と笑顔を見せた。
初先発ながら力強いボールキャリアで大活躍した21歳のWTBクラークは「自分の生まれ育った土地(オークランド)で、特別なジャージを着て試合をすることは、なんて素晴らしいことかと思ったから、とても神経質になり、昨晩は寝られなかった。チームメイトから、ボールを持ったら何も考えずに走れと言われ、今日はそれだけしか考えずに試合をした」と振り返った。
これでオールブラックスの1勝1分となった今年のブレディスローカップは、舞台を「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」に移して、オーストラリアで残り2戦が行われる。
次回は10月31日(土)、南アフリカが参加せず、アルゼンチンを含めて3カ国で戦うことになった「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」の開幕戦で、ニュージーランド代表とオーストラリア代表は再び激突する。
オールブラックスが連勝し、今年もブレディスロー・カップを保持するか。それともオーストラリア代表がホームでリベンジすることができるか。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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